2016年05月21日

名門ヤンキース低迷の理由 -MLBの経済学-

米大リーグ(MLB)が始まって約1カ月半。
「朝から野球の日々」が続いている。
だが例年のようにMLBだけに熱中することはない。
理由は簡単である。
MLBだけでなく、錦織圭のテニス、松山英樹のゴルフ等の中継が
混じるからである。

錦織圭や、松山英樹はもはや世界的なスターと言って言い過ぎではない。
ごくごく普通に優勝戦線にからみ、
従来では考えられなかった「世界のベスト10の世界」にいるからである。
優勝賞金が億円単位の高額であり、
ある意味で「世界の最高額の“ハンターの世界“」にいるという
“実戦的&戦闘的&ハングリーな”雰囲気が見る者を熱中させるのである。

昨今のサッカーもそうだが、
団体競技となると、最近では3年から5年の年間契約が普通であり、
その契約締結に代理人を混じえることで、
スポーツを介在したビジネスの色合いが濃くなる。
それが“今日はだめでも明日があるさ”の安易な雰囲気を醸し出す。
それが時には真剣さに欠けたダルイ感覚になってしまう。
致し方ないことではあるが。

1995年の野茂英雄を原点に、MLBに活躍する日本人選手は多くなった。
イチローや松井は別格として、すべからく投手が中心なのはご存じの通りである。
押し並べて甲子園で活躍したこと、甲子園時の体格から20㌔以上の増量を
している点もまた似通っている。

そして特に夏の甲子園で肩を酷使し、日本の球界での酷使を経てMLB入りし、
MLBのボールに馴染めず、肘や肩をやられる点もまた似通っている。
松坂、ダルビッシュ、田中など、全てそのパターンである。
下半身強化ではなく、上半身強化中心のトレーニングで無理に増量し、
結果的に肘・肩が悲鳴を上げるというのが最近のパターンである。

ヤンキースは
ゴジラ松井がMVPを獲得してワールドシリーズを制覇したのが2009年。
しかしそれ以降、12年の地区優勝を最後に優勝から遠ざかっている。
今年はリーグ最下位に低迷している。

原因は何か。それは巨額の不良債権を抱えるからである。
ドジャースとMLBの金満球団1、2を争うヤンキースの年棒総額は2億2600万㌦。
しかしそのうちの1億9000万㌦が長期契約で固定化しており、
実際に補強に使える費用は2700万㌦。
不良債権の筆頭は年棒2500万㌦のサバシア(35)。
そして2250万㌦のタシェアラ(36)、2100万㌦のエルズベリー(32)、
2000万㌦のA.ロッド(40)、1500万㌦のベルトラン(39)などと続く。
田中将大(27)の年俸も2200万㌦(約24億円)。

サバシアなどは体重が130㌔もあり、まさに日本のお相撲さん。
田中にしても100㌔あり、もはや野球選手のそれではない。
田中は肘を手術して以降は体にキレがなく、いかにも重そうに見える。
今や急速130㌔台中心の変化球投手である。

今のヤンキースは高齢・高給取りの“やる気ない”集団と化している。
“な~に格段頑張らなくても(超高額の)給料は変わらない…”
かくしてNYヤンキースの低迷は続き、試合も面白くない。

低迷の理由はMLBも一般企業も同じのようである。


2016年05月14日

伊勢志摩サミット目前に蠢く各国の思惑

黄金週間が終わりました。
本ブログにアクセスを戴いている皆様には如何お過ごしでしたでしょうか。

当方は読書三昧の日々でありました。
随分と前から気になっていた、故池波正太郎著「真田太平記」を読破しようと
単行本にして12冊、500ページ×12冊=6000ページにおよぶ大作を購入しました。
750円×12冊=9000円の出費でありますが、アホな酒を飲むよりマシと思って
エイヤッツ!で一気に買ってしまいました。

この真田太平記は「週刊朝日」に、
昭和49年(1974年)1月から57年(1982年)12月まで連載されたもので
449回およぶ、原稿用紙9千枚の大長編小説。
ただ40年前に書かれたものとは思えない清新さがあり、まずは飽きさせない。
ただ登場人物も多く、そう簡単には読みこなせない。
目いっぱいやって1週間で1冊。読破するには2カ月はかかるだろなと思われます。
ま、気長に楽しんで読んでいこうと考えております。

というわけで、本ブログの更新を1週間だけスルーさせて戴きました。
今後ともアクセスのほど、よろしくお願い申し上げます。

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5月26日~27の両日、日本で8年振り6回目となる伊勢志摩サミットを控え、
各国の思惑が蠢いている。

ちなみにサミットの初会合は1975年11月。
日本、米国、英国、フランス、西独、イタリアの先進6カ国首脳が
フランス・パリ郊外のランブイエ城に集まった。
76年にカナダが加わり「G7(Group of Seven)」と呼ばれるようになる。
98年にロシアを加えて「G8」となったが、
2014年にクリミア半島の併合を強行したロシアを外し、
「G7」の枠組みに戻っている。

日本政府としては「アジアで8年振りに開くサミット」であり、
1年毎に首相が交代し「日本の首相は毎回サミット初参加」という時代も終わり、
また安倍晋三首相は今回でサミット参加が5回目となり、
議長国として「どのような(G7の)結束」を打ち出すかに期待がかかっている。

こうした一連の“お祭り騒ぎ”中で、
4月29日に米財務省が発表した「為替政策監視リスト」が世界を揺るがしている。
この為替政策監視リストは、
今年の2月に成立した「貿易円滑化・貿易執行法」に基ずいている。

① 米貿易黒字が年200億㌦超
② 経常黒字が国内総生産(GDP)の3%超
③ 為替介入による外貨買いがGDPの2%超
を条件に掲げ、部分的に抵触すれば監視リストに入れるとしている。
日本は①と②に該当しており、仮に巨額の円売り介入に動いた場合、
最悪の場合、制裁対象にされる。

今回の監視リストには、日本、中国、ドイツの他、
台湾、韓国の5か国・地域が指定されている。
日中独韓の4カ国は貿易収支や経常収支の対米黒字が巨大であり、
台湾は為替介入の規模が大きいと指摘している。

今更市場介入で巨大化した世界の市場を動かせると思えないが、
環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受け、
米国が貿易相手国の通貨政策監視して対応措置がとれるよう、
法制度を強化したものと見られている。

こうした米国側の措置について、
麻生太郎財務相は「必要に応じて対応」との姿勢を崩してはいないが、
市場では「G7」のメンバーとして、
米国側の意向を無視はできないだろうとの見方が広がっている。

2012年12月の第二次安倍政権発足以来、
「金融緩和」「積極財政」「成長戦略」の三本の矢を掲げたアベノミクス。
株価は高騰し、ドル円は120円超の動きが続き、
市場も日本経済も沸き立っているかに見えた。

だが(事実上)ここ4年の日本政府の無理矢理の手法が
やり玉に上がることになった。
安倍政権も末期的な症状を見せ始めている。
今回の伊勢志摩サミットは“安倍政権の最後の花火”に見えて仕方がない

2016年04月30日

「パナマ文書」が暴く“不都合な事実”

約20年振りに“タックスヘイブン(租税回避地)”という単語が
マスコミを賑わせている。
中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」で、
世界の首脳らによるタックスヘイブンの利用実体が暴露されたからである。

名指しされたのは英国のキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領、
中国の習近平・国家主席等々、錚々たるメンバーが名を連ねた。
強固な民主主義国家では政権そのものは揺るがないだろうが、
ロシアや中国といった独裁的国家におけるトップの“不祥事”は
後々影響を残しそうな気配となっている。

日本で“タックスヘイブン”がクローズアップされたのは、“原則自由”の時代、
日本の円が国際通貨として認知され始めた1980年~1990年代だった。
世界の金融市場はグローバルにつながる中、税制は国ごとに異なる。
ならば合法的に節税できるのにしないのは責任放棄である。
こうした(政府公認の)金融国際化のためとする“正当な”説明の下で、
猫も杓子も、取り残されてはならずと、イケイケムードとなった。

だがやがて、この“原則自由”の考え方が曲解され、
マネーロンダリング(資金洗浄)に使われるようになって、
話がややこしくなってくる。
複数のタックスヘイブンを組み合わせると、
捜査当局による犯罪の証拠集めや資産凍結が非常に難しくなるからである。

例えば、詐欺や麻薬売買で儲けた資金を日本の銀行口座にプールしたとすれば、
見つけるのは容易である。
だがタックスヘイブンに開設したペーパーカンパニーの口座に資金を移せば、
日本の司法当局は現地の警察に捜査依頼をしなければならない。

回答はすぐに来るはずもなく、大概が半年以上が必要である。
そして「そのペーパーカンパニーの持ち株会社は別のタックスヘイブンにある」
という回答があった場合、今度は別の警察に捜査依頼をする必要が出てくる。
かくしてあっという間に2年程度の時間がかかることになる。
そしてまた、犯罪者が捜査の動きに気付けば、
警察よりも常に一歩先の資金を動かせる。

国境を越えた司法の協力はハードルが高い。
各国での犯罪の定義や捜査の進め方が異なるからである。
そしてプライバシーの保護の観点からも情報の共有が難しくなっている。
最善策はオフショア企業の実質的なオーナーや利用者が分かる中央登録機関を
設置することだが、各国の国内法の整備の必要あり、実現は容易ではない。

かくして現在の日本では“原則自由”から“原則禁止”の時代に逆戻りしている。
モノの売買の裏付けのない海外への資金の移動は、ほぼ不可能になっている。
ロンダリングリスクがある以上、当たり前と言えば当たり前の措置ではある。

原理・原則論から言えば、
世界各国の税率がどこも同じなら租税回避の動きは起こらない。
税率の違いがあればこそ、国際的な資金の流れが歪むのである。

かくして、膨大な借金を抱え、国民の資産を当てにする日本政府が、
的確な方法がないまま、“(ガチガチの)守りに入る”のもまた致し方ない。
とは言え、真っ当な国民は右往左往するばかりである。

2016年04月23日

カリスマ経営者の退任に見る流通業界の転換期

自分の住まいする佃地区では、
大江戸線・有楽町線・月島駅から半径500メートル以内に
コンビニが6店舗、スーパー5店舗が乱立する。
そしてタクシーで5分、自転車で10分以内には、
イトーヨーカー堂、イオン、赤札堂の総合スーパーや、
ユニクロ、東急ハンズが店舗を構える豊洲ららぽーと、
そして東京ドーム1.5個分の面積を誇る日用品雑貨専門店もある。

コンビニに関してはどうしても“使い勝手”を中心に選択することに
なってしまうが、セブンイレブンは群を抜いていると思う。
店員の客扱いが丁寧で正確であり、公共料金の支払い等は
どうしてもセブンイレブンに行く結果になった。

だがセブンイレブン系列のイトーヨーカ堂はどうか。
この4月から始まったNHKの朝の連ドラ「とと姉ちゃん」の舞台に
なっている深川・木場の跡地を再開発した江東区・木場のイトーヨーカ堂は、
使い勝手はイマイチのような気がする。

種々のファストフードが勢揃いし、和洋中華イタリアンのレストランや
映画館まであり、まずは一大テーマパークである。
ならばそこで食事をし、食料品を買い、衣料や日常雑貨まで全て賄うか?
と問われれば、顧客の90%以上は「No!」と言うだろう。

衣料品から住居関連品まで揃えた総合スーパーはこの10年で
急速に競争力を失った。
ユニクロがその尖兵であり、
ネット通販の台頭もそうした動きに拍車をかけている。
総合スーパーのテーマ(品揃え)が曖昧で、専門店にはかなわないからである。

4月7日、セブン&アイ・HDの鈴木敏文会長が会長を退任、
経営から退く意向を表明し、19日の取締役会で承認された。
83歳。
コンビニエンスストアを日本に根付かせた「セブンイレブンの天皇」と称された
時代の寵児の退任劇だった。
1963年、現在のイトーヨーカー堂に入社した同氏は、
74年にセブンイレブン1号店ををオープンさせ、
コンビニトップを独走する一大チェーンと育て上げた。
92年にヨーカ堂社長に就任すると百貨店やスーパーなどの多くの業種を
まとめ上げ、2005年にはセブン&アイ・HDを設立し、会長に就任した。
ここ最近、退任を巡って内部の抗争があったことが大々的に報じられている。

セブン&アイ・HDは、コンビニを軸に激変する消費環境に対応してきた。
それが高度成長期の成功モデルであった「総合スーパー(GMS)」に拘って
敗れ去っていった、ダイエー、マイカル、長崎屋、ヤオハンジャパンなどとの
違いだった。

小売業界は創業者の強烈なリーダーシップのもとで、
全社一丸となって事業を推進することが多かった。
重大な意思決定は創業者が下すため、経営という観点を持つ後継者が育ち難い。
意思決定の積み重ねで人材が育っていく。結局、その環境が作れなかった。

流通のガリバー・セブンイレブンもこれまでか、の感がする展開である。
流通業も、強いリーダーシップと経営の透明性を両立させるモデルを探る時期が
到来したようである。


2016年04月17日

「世界で通用する」ことと「世界で勝つ」ことの違い

この2週間、世界中で行われたスポーツ観戦に熱中した。
水泳、ゴルフ、野球(MLB)と矢継ぎ早に、
ほぼ24時間絶え間なく続く熱戦に魅入られた。
とことん堪能したが、神経をすり減らすような激戦に、
自分がプレーしたように疲労困憊状態になった。

4月4日から始まった競泳の第92回日本選手権兼リオ五輪代表選手選考会。
若手選手の台頭が目立ち、新生ニッポンの活躍を期待させるに十分な展開と
なったが、
主役は日本競泳史上初の五輪5大会出場をかけた平泳ぎ・北島康介だった。

高校3年で五輪に初挑戦した2000年シドニー大会では100メートルで4位。
04年アテネ、08年の北京の2大会連続100&200メトール2冠の偉業は
「超気持ちいい」「なにも言えねぇ」の名言と共に人々の心に刻まれた。
12年ロンドン大会で個人のメダル獲得はならなかったが、
仲間たちが「康介さんをてぶらで帰すわけにはいかない」と奮起、
メドレーリレーの銀メダルを獲得した。

今回の選考会では100メトール準決勝で派遣標準記録を0秒01上回ったが、
同決勝では準決勝より0秒31落とし、そして200メートルでは5位。
「レベル高ェ~、マジで」のセリフを残し、散った。
リオ五輪出場はならなかった。

だが五輪の度に国民を驚かせ、喜ばせ、泣かせた、
記録にも記憶にも残るスイマーの引退記者会見はまことに爽やかだった。
競技している時の表情とは違い、底抜けの明るさがあった。
“西日暮里の肉屋のあんちゃん(長男)”といった、
あっけらかんとした下町的で清新な雰囲気がとても魅力的だった。

そして7日から始まったマスターズゴルフ。
日本からは松山英樹だけの単独出場だった。
世界ランク14位の松山は、優勝候補にも名前を連ね、
3日目までは出場全選手中ただひとりオーバパーを打たず、
最終日は首位と2打差3位発進だった。

結果的には7位タイで終わったが、
TV解説の中嶋常幸が番組中で何度も唸ったように
「ごくごく自然に優勝戦線にいる」
「グリーンジャケットを着れる位置にいる」雰囲気は、
マスターズゴルフ中継を見始めて40年ばかり、初めての経験で、新鮮だった。

2連覇を狙ったジョーダン・スピースの
後半の劇的な崩れ方(12番パー3の「7」)に、マスターズの怖さを見た。
伏兵の英ダニー・ウィレットの勝利となったが、それは無欲の勝利と思う。
オーガスタには“女神”が住んでいると真剣に思わせた。

「ジョーダン・スピース2連覇ならず」の報は、株式市場をも動かした。
契約先の米スポーツブランド大手アンダーアーマー株は
前週末比5%の下げとなり、S&P500種株価指数の採用銘柄で、
下落率の上位となったのである。

「世界に通用する」から「世界で勝利する」ことを目標とする時代になった。
敢然と世界と勝負した北島康介や松山英樹に、
今までと違う時代を見せてもらっている気がする。


2016年04月09日

賞味期限切れ!?アベノミクスの失速

4月。新会計年度に入って2週間。
諸般の専門誌に「アベノミクス相場失速」の文字が躍っている。
マイナス金利導入という“禁じ手”まで繰り出した挙句、
衆参同時選挙を控えて右往左往している。
アベノミクスの賞味期限切れの様相は否めない。

2012年12月の第二次安倍政権発足以来、
「金融緩和」「積極財政」「成長戦略」の三本の矢を掲げたアベノミクス。
株価は高騰し、ドル円は120円超の動きが続き、市場も日本経済も
沸き立っているかに見えた。

先鞭を切った施策は「黒田日銀総裁人事」だった。
13年3月に就任した黒田総裁は
「異次元緩和」と名付けた量的・質的緩和政策を打ち出す。
日銀がETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を大量に買い、
市場にカネを流通させる仕組みだった。
この「黒田バズーカー」と呼ばれる手法で株価は急騰、円安も進んだ。

さらに就任から1年半が過ぎた14年10月には
「黒田バズーカー2」と呼ばれる追加緩和策を発表する。
“弾薬”となったのは日本国債だった。
だが「黒田バズーカー2」は「消費税増税を的確にやってくれ」とする
黒田総裁からのメッセージーだった。

ところが安倍晋三首相は消費税増税の延期を発表する。
財政再建は二の次。増税を実行して成長を壊せば元の木阿弥との考えだった。
結果的に「財政赤字を日銀が(自動的に&半永久的に)埋める」パターンを
繰り返す格好になり始めた。

振り返ってみれば、アベノミクスの尖兵となったのは為替相場だった。
日銀の大胆な金融緩和を先取りする形で、円相場だけが下落する展開となった。
それから3年半、15年6月に1㌦=125.86円まで円安が進行する。
ところが2016年明け、世界経済の先行き不安が先行、110円台での動きとなり、
4月新会計年度に入って110円を割り込んでしまった。

考えてみれば、先進国の中において日本ほど「円安=景気回復」という
(間違った)考え方が定着している国はない。
日本の輸出は自動車や弱電という裾野の広い産業製品が中心だったからである。

ところが現在、「円安=輸出増加=景気回復」とはならない。
大きな要因は
まず、日本企業の海外生産比率の上昇である。
2番目の理由としては世界経済の成長鈍化による輸入需要の低迷。
3番目の理由としては、円安により(日本の)輸入価格の上昇で、
消費が抑えられるからである。
現在の日本は、
円安を日本経済回復の起爆剤にしたがるアベノミクスの思惑とは違い、
円安も困るということになる。

ならば「ドル円相場、株式相場の適正な着地点」はどこにあるのか。
1973年の変動相場制移行41年の歴史的事実(結果)から言えば、
ドル円相場は日米両国の企業物価・輸出物価から計算された『購買力平価』
の動きに沿っている点は再認識すべきであろう。

諸般の結論は「ドル円は1㌦=100円に回帰」。
そして株価は
「13,500円が抵抗ライン、20,000円の半値の10,000円の可能性あり」
ということになりそうである。


2016年04月02日

「スポーツ賭博」の線引き

春はセンバツから。
センバツ高校野球が始まり、プロ野球が開幕し、
そしてMLB(米大リーグ)が始まれば“三役揃い踏み”。

CMがやたら多いお笑い番組が乱打される“暗黒の時”から、
サクラの開花と同時に(朝から)野球漬けの“黄金の日々”が復活する。
全部をシッカリ見るわけではないが、
BGMとして流しておくだけで何気に気持ちが華やいでくる。

昨年から今年にかけ、
盟主・読売巨人軍の選手による野球賭博問題が大きく取り上げられた。
昨年11月、巨人軍の3選手が無期失格処分となり、“後出し”でもう一人、
巨人軍の若手投手が3月になって1年間の失格処分となるなど、
球界全体を揺るがす展開となっている。

挙句、「声出し」と呼ばれる発声役に対して1人5000円を払っていたという、
「仕事場に金銭が出回っていた」という感覚が批判を浴び、
臨時理事会が開催される事態にまで発展した。
そしてプロ野球界は「賭博の温床か?」との言い方をされるに至っている。

ごく身近の賭博と言うなら、
思いつくのは賭け麻雀、賭けゴルフ、パチンコあたり。
“オトコの真剣勝負(!?)”には多少の金銭が絡んだ方が真剣度が増し、
ゲーム自体に迫力が出る(と思い込んでいる)。
それが罪になるなら、自分もこれまで幾多の犯罪を犯してきたことにはなる。

もう時効だから明かしてしまうが、
東京外為市場が電話だけの“ボイス・トレーディング”の時代には、
幾多の“賭博”が恒常化していた。
いくつかを紹介してみたい。

まずは現場担当者間の友好ゴルフ大会での賭けゴルフと、
大会優勝者を当てる“くじ”。
ご丁寧にも大会出場者に馬名までつけて、参加者を募った。
(口数自由で)一口500円程度だったと思う。

次に“一気通貫”ゲーム。
市場が全く閑散で10銭レンジだった場合に行われたゲーム。
例えば113円10銭から20銭のレンジを右往左往していた場合、
113.10円から113.20円まで1銭刻みの取引を完成させるという
暇だからできる単純ゲーム。
最後の“穴埋め”を誰が完成するかで賭けていた。
たしか一口5000円。
邦銀・外銀が入り混じって参加していた。
勝利者は受け取った掛け金で、
毎月一回の定例会合後の飲み代を出すことになっていた。

最近の“夢みたいな”賭けについて少々。
アメリカンフットボールと大リーグの狭間にあたる3月。
米国民は全米各地を勝ち抜いた68大学が参加する
大学バスケットボール・決勝トーナメントに熱狂する。
言ってみれば、日本のセンバツ高校野球と同じノリ。

「トーナメント全試合の勝敗を的中させたら10億㌦(約1130億円)」。
スポンサーはかの有名な世界的投資家ウォーレン・バフェット。
最初は全米国民を対象にしていたが、問題ありとされ、今年から条件を改め、
自身が率いる複合企業バークシャ・ハザウェイとその傘下企業の従業員30万人が
対象となった。
ついでに「トーナメントの「16強」を正確に当てれば、
生涯にわたって毎年100万㌦(1億1300万円)を支給する」としている。

組織ぐるみの、そして八百長がらみの賭博は最初から問題外。
世界中のあるとあらゆる場所に存在する「賭博」or「賭博もどき」。
さてどこで線引きをするか。

杓子定規の決め決めの“清く、正しく、美しく”の世界はあり得えないと思うが...


2016年03月26日

「1日8時間・週休2日制度」見直しの是非

1970年代の自分の“丁稚時代”の一日。
毎朝5時起床。
5時半の始発で新所沢出発(西武新宿線)→高田馬場乗換(山手線)
→新宿乗換(中央線)→神田到着が7時過ぎ。徒歩5分で職場到着。

終業は5時となっているが有名無実。大体が午後9時前後に終業。
朝と同じルートで新所沢帰着。
乗り継ぎの待ち合わせ等で帰宅が11時頃。
時間的に考えれば、新幹線で東京・名古屋間を毎日往復していた勘定となる。

そして当時は土曜日は“半ドン”。つまりは午前中が恒常的に仕事だった。
コンピュータ時代前夜のオフラインシステムの時代。
何でもかでも機械への手入力が必要な時代だった。
電話は固定電話のみ。
(国際電話が高価なことから)海外からの情報入手や通信はテレックス。
とてつもなく時間がかかった。
それが東京外為市場が始まった当時の国際資金部のルーティンだった。

8時間労働どころか12時間労働は当たり前。
残業代を請求するのは「本人の事務処理能力が問われる」ことから、
上から言われなければ請求しなかった(できなかった)。
英会話や実務試験にも備え、準備も怠りないよう言われていた。
やなら止めてもらって結構、の冷ややかな口調。で、睡眠時間は3時間。
今から考えれば“無茶な”時代。
だが、「世界金融の先端を行く外国為替に関わっている」という自負心が、
そうした無茶な流れに耐えられた。
若かったし、何より熱く滾っていた。

8時間労働が定着したのは20世紀初頭。
大量生産による長時間勤務で健康を損なうと、
1919年に国際労働機関が「1日8時間・週48時間」を労働基準として定めた。

それから1世紀。
「週休3日」や「1日の労働時間6時間」が論議されている。
北欧を中心とした“画期的で近代的な”動きとの論調。
同時に「同一労働、同一賃金」の流れも起きている。
“(労働者の)人間らしい生活”の追及は認めるにして、
そうした一連のシステムで、果たして企業が企業として成り立つのかどうか。

毎年決まった時期に新卒学生40万人を一括採用する日本。
一方で、欧米では横並びの就活制度はない。
職選びは個人に委ねられ、キャリアは自分の実力次第。
従って学生は知識と経験を得ようと必死に学ぶ。
「就職したら仕事の内容も働き方も会社にお任せ」の日本とは
最初から格段の差がある。

そうした“お任せ”の仕事に嫌気して、
新たなキャリアを求めて転職や復職する数は年400万人。
経済の不安定さが増大し、企業が生涯守ってくれない時代との思惑が先行、
(安易に繰り返す)転職も当たり前の時代とはなっている。

日本の高度成長時代を支えた
「会社の都合の配置転換や転勤を受け入れて、職務を限定せず働くこと」を
前提に「高い給与と終身雇用」を保証する終身雇用制度は崩れた。
そうした制度を嫌い、転職を繰り返しながら「同一労働同一賃金」を
要求する時代である。

はからずも自分の丁稚時代の様子を紹介してみたが、
自慢するつもりもないし、正しいとも思わない。
ある種異常だった。
ただ今の世の中全体が安易に流れてはいないだろうか。
「1日6時間労働?」「週休3日?」。
大きな間違いをしているように思えてならない。

2016年03月19日

災後5年の金融市場

ここ2週間、
「3.11東日本大震災から5年」をテーマにしたTV番組を見せ続けられた。
まるで絵空事のような「想定外の事実」を、これでもか、これでもかとばかり
脳裏に叩き込まれた。
いずれにしても2011年3月11日午後2時46分、
「『戦後』が終わり、『災後』が始まった」のだった。

その『災後』の5年、金融市場はどのように変化してきたか。
為替相場をベースになぞってみたい。
まず震災被害の未曽有の大きさが明確になってくるにつれ、
「日本の保険会社が保険金の支払いに備えて海外資産を売却して円を調達する」
との思惑が広がり、同年10月に戦後最高値の1㌦=75.32円をつける。

その後は徐々に円安基調へと転換していく。
原因は大震災が引き起こした日本経済の構造変化だった。
震災は製造業の供給網を寸断し、生産と輸出に急ブレーキをかける一方で、
原発停止により火力発電のへの依存が強まり、
液化天然ガス(LNG)の輸入が急増、貿易赤字が31年振りの赤字に転落し、
経常黒字も前年比半減したからである。

経常収支は、
製品輸出や海外投資の収益などをあわせた日本全体の“稼ぐ力”を示す。
震災後には(理論通りに)経常黒字の減少から円安が進んだ。
そして円安基調を決定的にしたのは、
2012年12月に安倍晋三内閣が誕生してからだった。

アベノミクスが始動し、日銀の大胆な金融緩和を先取りする形で、
円相場だけが下落する展開となった。
それから3年半、15年6月に1㌦=125.86円まで円安が進行する。
そして2016年明け、
世界経済の先行き不安が先行、110円台での動きとなっている。

大きな変化は、まずは日本の経済収支の急回復が要因だった。
経常収支は14年まで縮小が続いたが、原油価格の急落などで大きく改善。
黒字幅は震災前のレベルまで回復している。

もうひとつの要因は、
13年3月に就任した黒田東彦・日銀総裁が約束した「2年で2%」の物価上昇は
達成できず、「金融政策は行き詰まっている」との見方が広まったことである。
マイナス金利政策の副作用も明らかになっているのはご存じの通りである。

(欧州の二番煎じの)“禁じ手”、マイナス金利導入は銀行の融資を増やし、
経済を活気つけるのが狙いだったが、地方銀行等では融資先不足は明白だった。
地方再生どころか、金融システムの危機を煽る結果となっている。
結局、資本主義の常識から外れたマイナス金利は、勤倹貯蓄を旨とし、
伝統的な資本主義の発展を支えてきた“奇を衒わない日本経済”が袋小路に
入ったことを物語っている。

黒田日銀総裁は無類の読書家で知られている。
高校時代、図書館の本を全て読破したという驚くべき逸話がある。
後輩が真偽を確かめたところ「小説を除いて」という答えが返ってきたという。
今必要なのはマクロ経済の論理でなく「マイナス金利の心理学」であろう。
この際黒田総裁に(下々が好む、まことにくだらない)小説を読んでもらい、
「人間は理論通りに動かない」ことを確認してもらうしかない。

ともあれこの5年の動きは、余りにランダムで掴みどころがない。
何が正しくて、何が間違っているのか…
大震災の緊急事態の対応を巡って史上最悪と言われ続けている元首相の
“捨てゼリフ”のように
「評価は歴史の判断に任せる」しかないのかもしれない。

2016年03月12日

寒ブリの記録的不漁騒動 -北陸新幹線開通から1年-

3月11日が3.11東日本大震災から5年、
3月26日が北海道新幹線開通とあって、
今となっては全く存在感の薄い北陸新幹線だが、
3月14日は、北陸新幹線が開通して1年になる“記念日”。

それこそアッという間の1年だった。
確かに便利にはなった。
東京・富山間は2時間10分、東京・金沢間は2時間半で結ばれた。
越後湯沢or長岡で乗り換える必要がなく、本当に楽になった。

自分の地元富山には、
富山駅の他、「黒部宇奈月温泉」「新高岡」の3つの新駅が誕生した。
速達型の「かがやき」と、停車駅が多い「はくたか」(従来のL特急と同じ名称)
の他、富山・金沢間にはシャトル列車「つるぎ」も利用できる。

1年経過した後の反応は?と言えば、東京方面では総じて好評だった。
概評は
「伊豆方面に行くのと時間も運賃も大した差異はない」。
「どうせ同じなら目先を変えて北陸に行ってみるか」。
確かに在来線より5メートルばかり高い場所から見る日本海や立山連峰は
相変わらずの絶景。
旅客機並みのシートとの謳い文句の居心地もまずまず。

ビジネス面を考えれば、当初の予想通りだった。
北陸三県では大都市と比べ割安にオフィスや工場用地を借りられるのが
最大のメリットだったが、企業の進出の話は余り聞こえてはこなかった。
YKKが、その発祥地である黒部市に本社機能の一部を移転させた程度だった。

観光面に関しては、さすがに古都・金沢のイメージアップは予想以上だった。
だが、富山県の場合、新幹線開通で格段どうのこうのと言える状況にはなかった。
富山の観光としてのテーマとして思いつくのは以下の5点だった。
「立山黒部アルペンルート」、「八尾おわら風の盆」「五箇山集落」「ほたるいか」
そして「氷見ぶり」。

立山黒部アルペンルートの出発点である宇奈月温泉は、関係者に拠れば、
駅名にその名が載ったことで、“お陰様で…”の世界だったと聞く。
だが、実家方面の“滑川(なめりかわ)・ほたるいか”はサッパリだった。
千載一遇のチャンス、何でいつもそうなんだろ。
根幹の積極対応策欠如、つまりはヤル気のなさの問題なのだろうが、
何かガッカリ、である。

それにも増して全くの予想外だったのは「氷見ブリ」の
(日経新聞等に特集が組まれるほどの)記録的不振だった。
県内の漁業者が今季(昨年10月~今年1月)水揚げした寒ブリは21㌧。
昨期の10分の1。
これは2011年に商標登録して以降初めてのことである。

ブリ。主として春から初夏にかけ東シナ海や九州近海で生まれ、
夏に北海道沖まで北上する。冬になると越冬や産卵のため南下する。
毎年こうした回遊を続け、「ワラサ」や「イナダ」と呼び名が変わる。
冬に水揚げされる3歳魚が「寒ブリ」。

このブリは20~30年周期で好漁場が移動し、
越冬や産卵の場所もコロコロと変わる“つかみどころのない魚”とされている。
富山県内ででは1990年度以降、20㌧台から800㌧超まで、
シーズンごとに大きく変動してきた経緯がある。

「お~い気まぐれブリ、どこへ行った???」。
たががブリ、されどブリ、頼むよブリ!!である。

2016年03月05日

マイナス金利下で進む地銀の再編

マイナス金利発表から1カ月。
その影響が頓着される中で、「ふくおかFG・十八銀行(長崎)統合」が発表された。
ザックリ言えば、「九州一円の地銀がひとつになる」ということだが、
正直言ってインパクトの薄い、今更感の強い内容ではあった。

今回のふくおかFG・十八銀行の統合により総資産が18.7兆円となり、
地銀首位となるが、以下、横浜・東日本が統合して4月に設立される
コンコルディア・フィナンシャル・グループ(17.4兆円)、
常陽・足利HD(14.8兆円)、千葉(13.5兆円)、ほくほくFG(11.7兆円)と
続いていく。

1990年代の不良債権問題を経て、日本版ビッグバンが標榜され、
都市銀行・信託銀行・長期信用銀行の集約が進み、
3メガ銀行や巨大信託銀行が生まれた。
反面、地銀・第二地銀は全国に105行が乱立し、再編は遅れていた。

だが世紀が変わって地銀の再編が急速に進んでいく。
2005年前後までは経営の体力がある銀行が、不良債権に苦しむ銀行と
合併・統合する救済型が一般的だった。
しかし近年は、人口減などによる経営環境の厳しさに危機感を募らせて
結集する流れになっている。

日本の金融が3大メガバンク中心になった大きな理由は、
IT機器の爆発的な発展により、
「世界的な広域取引に対応する」ことが要求されるようになったこと。
そして「国際金融(為替)+株式+保険」をも含んだ総合的な金融機関のみが
「従来の銀行」として認知される時代となってきたからである。
今後は、潤沢な「人的資源+財的資源」をベースに、
「世界の金融市場に対峙できるか」がポイントになってくる。

ところが、未だに地銀は「地元に根ざす」ことを標榜する。
新幹線・高速道等の交通網の爆発的な発達により、
「地元意識」は次第に薄らぎ始めている。
預金の出し入れ、国内送金などの小口金融は、
全国に網羅された24時間・365日対応のコンビニのネット網の整備で、
「9時~3時の銀行の必要性」がなくなり始めている。

一連の地銀の再編は、
3大メガバンクによる全国の地銀系列化作業の一部だと思う。
「細かいのをまとめて、時期がきたら一網打尽にドカン」。
一連の地銀再編劇は、最終章の「3大メガバンク」による
「日本の金融機関の整備・統合」につながっていく。

この「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備統合」は、
マイナンバー制度の整備による「日本国民一人一銀行口座」につながる。
税収に悩む日本国は、日本国民の資産をガラス張りにしたいのは明白である。

マイナス金利という劇薬を打った黒田体制も次の一手がなくなっている。
「総資産の増大」は経営リスクを増大する時代となった。
地銀にとって「総資産10兆円」は大きな目標となってきた。
だが考えてみれば、
総資産10兆円とは、世界の大富豪ビル・ゲイツの保有資産(8兆円超)並み。
今や何の意味もない。

地銀が消滅するのか???
消滅しても誰も驚かない、多分。


2016年02月27日

打つ手なし。彷徨する世界経済

マイナス金利??? 
クロダノミクス??? 
現世界は経済理論の実験場か???

何かおかしい。
経済が歪んで不安定だ。
そういった違和感は誰もが感じておられると思う。
それでは何が根幹の問題なのだろうか。
今更ながらとは思うが、まずこの20年の経済危機をなぞることから始めてみたい。

「世界経済の危機」という表現がされたのは、
1997年の「アジア通貨危機」がこの20年で最初だった。
ヘッジファンドを中心とした短期資金の流出で、
アジア新興国の通貨・株価が急落した。
このアジア通貨危機は、タイ・インドネシア・韓国がIMFの管理下に入り、
域内での資金融通の枠組みが整理されたことで収まった。

そして2008年のリーマン・ショック。
今更説明するまでもないが、米証券大手のリーマン・ブラザーズが破綻したこと
による世界的な混乱である。
FRBは量的緩和・ゼロ金利政策を導入し、金融機関に公的資金を資本注入する
枠組みが整備された。
以降は金融再編の動きが加速していくことになる。

2010年からは欧州債務危機が勃発する。
ギリシャの債務隠しをきっかけとしてユーロ相場が急落し、
南欧諸国を中心に財政危機が拡大した。
EUとIMFがギリシャ、アイルランドなどの財政支援し、
欧州中銀は量的緩和が拡大、マイナス金利が導入されるに至る。
だが欧州債務危機は収まったとは言えず、現在も継続している。

そして2016年初から始まった世界的な株式急落は、
新たな経済危機と表現するしかない状況になっている。
「市場との対話に不慣れな国家資本主義の中国が、
世界の近代金融に(複雑に)絡み合っている」
という点が、これまでと違う“新種の混乱”を巻き起こしている。

米国の約3分の2の経済規模という大きさと、
手荒い為替介入や朝令暮改の市場対応策が混乱を深めている。
金融市場の動きを力づくで抑え込もう、
あるいはできるとする中国が絡むことによって、
従来のような政策協調も困難を極めている。

そして、未曽有の原油安も世界経済に大きな影響を与えている。
資源安は資源輸入国の消費を刺激し、これまでは世界経済にプラスに働いてきた。
しかし資源収入に依存する新興国の存在が高まり、
その新興国の「資産売却=株式売却」の流れが明確になって世界は新たな局面に
入っている。

かって中国の雄・鄧小平は「可能なものから先に豊かになれ」とする、
経済成長を最優先する「先富論」を唱えた。
そしてこの先富論は「先に豊かになった者は途上の者を助けよ」と続いていく。
が、「途上の者を助けよ」という意味のはき違えが目立ち、
世界経済における中国のポジションが上がれば上がるほど
世界経済の混乱度が増大している。

リーマン・ショック直後に「米4兆㌦、中国4兆元」という
史上最大規模のカンフル剤が打たれた。
欧米の先進国が手詰まりの中、中国という異質な国が絡むことによって、
そのカンフル剤の後始末に立ちすくんでいる。

クラッシュ近しの感がしてならない。


2016年02月20日

目のつけどころがシャープでしょ?

学生時代の友人の話。
九州出身で柔道一直線。
中肉中背だが、九州男児はかくやの豪放磊落な性格。
そしてその性格とは真逆(!?)と思われるクラシックの熱狂的ファン。
中野にあるクラッシク専門喫茶に頻繁に出入りしていた。
(人のことをとやかく言えないが)要は変わったマニアックなヤツだった。

何故その話から始めたかと言えば、
情報が昔の話で断片的なので正確さに欠くが、
どうやらその友人の遠縁に、シャープの役員クラスの方がいたらしい。
なにかにつけてその遠縁の方の優秀さや、日本の弱電業界の企業としての強さを
披露してた(ような気がする)。
で、就職先が東芝。
結婚式にも呼ばれ出席したが前途洋々、輝いていた。
1970年代の日本の弱電業界の“黄金の日々”だった。

今月に入って、シャープが台湾の鴻海(以下ホンハイ)精密工業の買収提案を
受け入れる態勢に入ったとの報道が話題になっている。
最近の日本の弱電業界の惨憺たる状態を見るにつけ、
今は疎遠になったその友人のことを思い出す。

このホンハイは、スマートフォン(スマホ)や薄型テレビなどの電子機器を
受託生産する「EMS」と呼ばれる業態で世界最大手。
2014年の売上高は約15兆円。
最近は中国本土に建設した工場の人件費の拡大で収益が圧迫され、
下請けからの脱却を模索してきた。
シャープ買収は自社ブランドビジネスへの進出を意味することになる。

なぜ日本の有数の優良企業だったシャープが、外資に、
しかもアジア系振興企業に“身売り”されるところまで追いつめられたのか。
危機の直接の引き金は液晶投資の失敗だった。
加えて、経営危機発覚後の経営陣の「無作為」も大きかった。

同社が3760億円の最終赤字に転落した2012年3月期には、
ソニーも、パナソニックも巨額の赤字を計上している。
その後両社は経営改革を進め何とか業績を立ち直したが、
シャープはいつまでたっても危機モードを脱却できなかった。

業績が悪くなると希望退職や本社ビルの売却など、
“対症療法”的なリストラを打ち出すだけで、
生き残りに向けてどんな会社に変わるのか、
大きな方向感が示されることはなかった。
結局は抜本的な施策が練られることがなかったのである。

業績が悪くなれば悪しく言われるのは世の常。
シャープには「けったいな文化」があったとされる。
「社外の顧客と打ち合わせ中でも、上司に呼ばれると、顧客をほったらかして
飛んで行く」。
事実とすれば、それは“けったい”ではなく、異常である。

ここまでシャープの再建を指導してきた日本の産業革新機構の再生案は
「事業部ごとの切り売り・解体」を基本にしていた。
それに比べればホンハイの「一体再生」「ブランドも残す」という再生案は
余りに寛容である。
だが本当に実現するのか。

言い方に語弊あり、少々キツイかもしれないが、
「技術国・ニッポンを代表する有名企業がアジアの新興企業の軍門に下るのか?」。
至極残念である。
女優・吉永小百合のCMがいまだに鮮やかに思い浮かぶ。
「目のつけどころがシャープでしょ?」。


2016年02月13日

伝統的・古典的経済理論の限界

グーロバルな株安連鎖が続き、世界の株式時価総額が急減している。
直近での推計は約56兆㌦(約6400兆円)となり、
過去最大だった2015年5月末に比べて14兆㌦(1600兆円)減少した。
この9カ月で2割減少したことになる。

日経平均株価も急激な下落となり、今年の下落率は10日で17%に達した。
特筆すべきは2月10日の終値の15,713円は、
「アベノミクス相場」の平均買いコストを割り込んだ点であろう。
この「アベノミクス相場」の起点は、
野田佳彦首相(当時)が衆院解散した2014年11月24日。
そこから2016年2月10日まで3年3カ月の日経平均株価を平均すると
15,860円になる。

昨夏までの上昇は、円高や東日本大震災で割安に放置された日本株が
正常な評価をされた側面が強い。
日銀の異次元緩和による円安や、企業統治改革の導入も
海外勢の投資を呼び込んだ。
日銀の、乾坤一擲、マイナス金利政策発直後の大混乱だけに
皮肉と言えば皮肉である。

黒田日銀総裁の考え方は、
「マイナス金利を嫌って、銀行が融資を積極的に増やすようになる」
そして「ポートフォリオ・リバランス(運用資産の組み換え)が高まる」
しかしそうした効果は、
人々が景気や物価の先行きに期待感を抱いている時に限られている。

そしてまた、
日銀がマイナス金利を導入したにもかかわらず円高が急激に進行した。
先行き不安が高まる中での金利低下はかえって不安を煽り、
比較的安定している日本円に転換する動きが強まった。
日銀の金融緩和政策が限界に近いことを証明した格好となった。

リーマン・ショックから8年半。
先進各国は0.5%レベルの低金利政策を継続してきた。
「不況時には金融緩和」。
これが近代の資本主義経済社会の鉄則だった。
だがその金融緩和も、マイナス金利という異常事態にまで突入した結果、
次に打つ手がなくなり始めている。

リーマン・ショック後の世界経済の低迷時、際立ったのは中国だった。
4兆元という巨額な経済対策を実行して、見事な景気回復を遂げた。
誰もが感じた、
「民主的な手続きを重視していたらこれだけ大胆な手は打てない」と。

だがその4兆元の経済対策がバブルを生み、
そして国営企業の過剰設備や地方政府の過剰債務が後遺症と残るようになって、
国家資本主義への称賛は急速に色あせていった。
その主役はまたもや中国であり、今や中国が世界最大のリスクとなりつつある。

今年初めからの世界市場の動揺も、
中国当局の拙劣な対応に起因する部分が少なくない。
国家資本主義は剛腕を振るうのは得意でも、
市場との繊細な対話は苦手なのは明白である。

ここにきて、
黒田日銀総裁の掲げる金融緩和を最大のテーマとする施策(=クロダノミクス)
を疑問視する風潮が広まっている。
しかし黒田総裁を責めても致し方ないのかもしれない。
20世紀を通して世界経済を席捲した、
まず“不変的なもの”を設定して論理を展開する、
伝統的で古典的な経済学の限界なのだろう。
考えるまでもなく、“はやぶさ”のような壮大な宇宙探検が普通になった現代に、
不変的なものなど存在しない。

かくして絶対的な解決策が見つからないまま、世界は不安の連鎖の中にいる。


2016年02月06日

アクセルとブレーキを同時に踏んだらどうなるか

1月29日、
日銀は、同日開催された金融政策決定会合で、
マイナス金利政策の導入を、5対4の僅差で決定したと発表した。
2013年4月に導入した量的・質的金融緩和(異次元緩和)政策は
大きな効果が出ないまま、最後の切り札を切った格好となった。

マイナス金利政策を定義すれば
「中央銀行が政策金利をゼロ%よりも低い水準にする政策」である。
民間銀行が中央銀行に預け入れる預金の金利をマイナスにするのが一般的。
民間銀行は日銀に資金を預けると金利を支払うことになるため、
民間企業への融資や有価証券の購入に資金を振り向ける効果を見込む。

今回の政策の背景にあるのは
2014年6月、欧州中央銀行(ECB)が導入したマイナス金利政策である。
対ユーロでの自国通貨高を抑え込もうと、スイスやデンマーク、スウーェデン
も同調した。

かくして欧州では、マイナス金利政策をベースに、
ポルトガルやスペイン、イタリアではマイナス金利の住宅ローンが
登場して話題になった。
ただ一方で、資産を減らしたくない個人や企業間で現金志向が拡大し始めている。
端的に言えば、マイナス金利が続けば“タンス預金が増える”状態になっている。

脱デフレのためなら打てる手は何でも打つ。
劇薬の投与もいとわない。なぜマイナス金利が劇薬なのか。
「借りたい人と貸したい人がいて、借りたい人が代価を払って借りる」約束を、
「借りる人が代価を受け取る」とする、資本の論理から外れる方式だからである。
結局黒田東彦日銀総裁は、アクセル(金融緩和)とブレーキ(マイナス金利)を
同時に踏んだことになる。

当然ながらマイナス金利は「もろ刃の剣」である。
金利低下で銀行の収益力が悪化するため、銀行が積極的にリスクを採れず
中小企業向け融資が減る可能性を含んでいる。
それ以上に企業自体が借りたがっていないのが現実である。

特に地方では、海外進出を志向する企業は少なく、人口減で売り上げ伸びない。
結局マイナス金利の実施でコストを確保するために預金金利を下げるしかない。
ところが預金流出が怖くてそれもできない。
つまるところ「口座管理料手数料」という名目で預金者に請求するしかない。

貸出先がなく、日銀の口座に溜まった金額は、昨年末で230兆円。
そして無理矢理貸し付けた不動産向け融資残高は昨年9月末で83兆円。
平成バブル時を上回った。

今回のマイナス金利政策の目的はデフレ脱却だけでなく、
「株安・円高」を止めようとする狙いがあったに違いない。
マイナス金利政策が発表された時点で、円は対ドルで121円台、
日経平均株価も乱高下した挙句、2日間で823円上昇した。
しかしその効果も、ほんの“三日天下”だった。
年金資金を大量に流入した安倍内閣の最大の焦点・株価の頭は
予想以上に重かった。
結果論から言えば、今回のマイナス金利政策は全く効果がなかったことになる。

今年に入っての国際金融不安は、中国経済の失速、原油安、
米利上げによる新興国からの資金引き揚げに根差している。
特に中国からの資本流出は、人民元の下落と株式の動揺を通じて、
世界経済を揺さぶる。
そして最近、
「無敗の帝王・ジョージ・ソロス、中国売り=元売りで出動」の噂も飛び交う。
ソロスの戦法は、ポジションを構築した上で、おもむろにマスコミに露出する。
中国が混乱すればどうなるか?…想像するまでもないだろう。

すべからく、リーマン・ショック以来のクラッシュの再来を予感させる展開である。


2016年01月30日

「フィンテック」と呼ばれる金融改革の中で

本ブログで取り上げた経緯があるが、
NHKの朝ドラ「あさが来た」が絶好調である。
前作が余りに内容が薄かっただけに、本当に面白い。
いわゆるエキサイティングの展開である。
主題歌の「365日の紙飛行機」も、ヒットチャートの首位戦線で推移している。

江戸から明治という時代の大きな転換点で、没落して淘汰される両替商と、
時代の変化に機敏かつ柔軟に対応しながら、
業態を変えてたくましく生き残っていく両替商の姿が印象的である。
そして中央銀行としての日銀が誕生し、近代日本の金融システムが出来上がって
いく時代を的確に表現している。

その後の日本の金融業は、昭和の大恐慌等、数々の転換点があった。
近年ではバブル崩壊後の金融危機が発端となり、
96年に始まる「日本版金融ビッグバン」と呼ばれる金融制度改革が進行した。
結果的には銀行の統廃合が進み、「規制に支えられた金融システム」から
「市場原理に基づいた金融システム」への転換が図られた。

言ってみれば20世紀の金融の変革は政治主導だった。
だが現在進行中の金融改革は『フィンテック』と呼ばれる民間主導のものである。
フィンテックの語源はFinance(金融)とTechnology(技術)を
組み合わせた造語である。
インターネット、スマホ、クラウド、ビッグデータ分析、人工知能の発達が、
金融そのものを大きな変化に巻き込んでいる。
年初からの大波乱は、
そうした時代の変革を認識していないことが大きな要因に思える。

1月12日午前、
元売りに業を煮やした中国当局が大規模な元買いを実施した。
金融市場から元が消え、元の香港銀行間取引金利(翌日物)は
過去最高の66.8%に高騰した。
こうしたアナログの政治主導の力づくの論理がまかり通っているのも
現在の姿である。

結局、市場との対話に不慣れな国家資本主義の中国が、
世界の近代金融に絡み合っているという点が大きな問題には違いない。
米国の約3分の2の経済規模という大きさと、手荒い為替介入や朝令暮改の
市場対応策が混乱を深めている。
中国が絡むことによって、従来のような政策協調も困難を極めている。

そしてまた、未曽有の原油安も世界経済に大きな影響を与えている。
資源安は資源輸入国の消費を刺激し、これまでは世界経済にプラスに
働いてきた。
しかし資源収入に依存する新興国の存在が高まり、
世界は新たな局面に入っている。

「世界の債務は07年からの7年間で57兆㌦(約6700兆円)増加した」と
言われている。
米国発の「大量の緩和マネー は世界中の金利を引き下げ、
各国の政府や企業の債務が膨張するのを助長した。
中国が過剰債務を抱える要因にもなった。

本ブログで何度も申し上げてきたように、
「大きくしてはならない国(中国)を大きくしてしまった」感は否めない。
負の連鎖が行き着く先は見えていない。
時代の大きな流れに逆らう中国という存在がある限り、
世界経済の混乱は続いていくようである。

2016年01月23日

グーグルの野望 -急速に進む自動運転車の実用化-

1月14日、
米運輸省は自動運転車の実用化計画に今後10年で40億㌦(約4700億円)を
投じると発表した。
同支援策は、
オバマ大統領が2月に提案する2017年会計年度(16年10月~17年9月)の
予算教書に盛り込まれる予定である。

一連の支援策は、デトロイトでの北米自動車ショーでフォックス米運輸長官が
明らかにしたもので、同長官は
「自動運転は人命を救い、温暖化ガスの排出を減らし、交通を一変させる大きな
可能性がある」とし、
自動運転車の実用化が運転ミスによる事故の回避や二酸化炭素排出量の削減に
必至であり、自動運転車が公道を走るための指針策定を進めることを明らかにした。

同省は米自動車業界等と協力し、
車や道路に設置された機器同士が通信して運転を支援するシステムの実験計画を
推進する他、現在カリフォルニア州などが独自に策定している公道試験の指針に
ついてもひな型を策定する。
また自動車メーカー各社が開発している実用段階に近い技術が既存の安全規制を
満たすかどうかを確認し、自動運転技術の迅速な実用化を促進する方針も
明らかにしている。

こうした一連の流れの中心にいるのがアルファベット社(グーグルの親会社)。
同社の凄さは、行政をも巻き込んで実用化に向けたスピーディな展開を
繰り広げている点である。
もはや「IT企業の雄」ではなく、「次代の産業革新の雄」になり始めている。

安倍首相が「2020年の東京五輪までに実用化を目指す」と発言する中で、
日本においても(密かに)計画が策定されている。
昨年6月に閣議決定された「『日本再興「戦略』改定2015」がそれである。
同戦略の中で、
「完全自動走行(レベル4)を見据えた環境整備の推進」を
「日本産業再興プラン」のひとつとして掲げる。

こうした流れの中で、来月(2月)から神奈川県藤沢市で、
自動運転車に一般市民を乗せて走るという実証実験が始まる。
その実験では、公道における有人の自動運転(レベル3)を実施、
運転手や実験担当者も同乗して、安全確保やや緊急時の対応行う予定である。

この実験では、
買い物時に自宅とスーパーなどの往復や荷物の運搬が困難な高齢者も含まれる
予定となっている。
実験期間は2週間をメドとし、その後は利用者からの意見をも求めつつ、
断続的に実施されるとしている。

海外では
毎年年初に米ラスベガスで開催される世界最大の家電ショーで、
基調講演にダイムラーやフォルクスワーゲンといった自動車メーカーが
登壇するようになっている。
自動運転を始めとした近未来の技術をアピールするためである。

最近、何かにつけ「イノベーション(Innovation)」という単語が使われる。
その「イノベーション=(産業)革新」はある意味で「破壊的(Disruputive)」で
ある点は認識しなければならない。
既存の常識を完膚まで破壊し、通用させなくなるからである。
依然として、自動運転車??大丈夫か??と言われている。
だが自動運転車が世界を席巻する日が近いと思う。

原油安→株安に揺れ、中国発の第2のリーマン・ショックを恐れる現在の世界。
そんな時だからこそ、ググールの野望は一気に達成されそうな気配である。


2016年01月16日

原油は次世代でも主役足り得るか

まず現在の原油先物市場の実態について簡単に説明したい。
指標銘柄はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)。
米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループ傘下の
ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されている。

NY市場の参加者は石油会社が2割弱、金融機関が2割強、ファンドが5割、
個人投資家は1割未満とみられている。
市場規模は0.1兆㌦に満たない額。
NY証券取引所の時価総額の約18兆㌦、東京証券取引所の4.6兆㌦等に
比較すれば問題にならない額であり、半数を占めるファンドの売買動向次第で
値動きが荒くなる傾向がある。

NY原油先物市場で1バーレル=30㌦割れが世界の金融市場を揺さぶっている。
原油先物が12年振りの安値に陥った原因は至ってシンプルで明確である。
需要の低迷と、産油国が制御不能に陥った供給過剰である。

2000年代の原油高は、中国やインドなどの新興国の旺盛な需要がけん引した。
中国が「新常態」と呼ぶ経済成長の減速の結果、
鉄鉱石や石炭などと同様の構図である。

ただ原油が1年半に4分の1の価格になった大きな要因は
米国のシェール革命だった。
米国発のシェール革命は、原油の需給バランスだけでなく、
地政学上のリスクも増大させた。
結果的に大産油国となった米国に対して、サウジアラビアやイランなどの
OPEC(石油輸出国機構)の足並みは乱れ始めている。

特にサウジアラビアは世界最大級の原油埋蔵量を持ち、
生産余力はダントツである。
だが1バーレル=30㌦を割り込めば国家運営にも深刻な影響を与える。
国際通貨基金(IMF)によると、サウジアラビアがこのままのペースで
金融資産を取り崩すと、5年で底をつくとしている。
福祉や教育を丸抱えしてきた往時の石油大国の面影はない。

「原油の暴落=金融資産の取り崩し=世界的な株安」の連鎖は、
オイルマネーで潤っていた世界の金融市場を一気に混乱に陥れている。
ここまでくれば「先物が現物をリードするのが正しいのか」という
単純な疑問は残るが、現在の金融システムがそうなっている以上、致し方ない。

年明けからデトロイトで北米国際自動車ショーが開催されている。
原油安で大型車の人気が高まっている、と(表面的には)言われている。
その一方で、米政府が燃費規制を強めており、2025年には米国内で売買する
車の平均燃費を53%向上させることを要求している。
要は「ガソリンをジャブジャブ使うな」という意味である。

結局、今回の自動車ショーの主役は新型電気自動車(EV)であることは
暗黙の了解である。
本欄では2020年を転換の大きな目標であるとしてきた。
同年に向け、
排気ガスをまき散らすガソリン車の時代が終わりに近づいているのだろう。

「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」。
1970年代のOPECの時代を築いたサウジアラビアのヤマニ石油相の
残した警句である。
30㌦を割り込んだ原油はどこまで下落するか。
あくまで理論上ながら、大きな節目は10㌦台となるが….

石炭から石油へと主役が代わり、そして(多分)電気が主役の時代へ。
知らないうちに時代は変わりつつある。


2016年01月09日

大嵐の兆候・丙申年2016年

昨年12月、講演会に講師として招かれた。
大きなテーマを「円高」「株安」「中国」「金(GOLD)」とした。
円の売られ過ぎ、株の上がり過ぎ、不協和音満載の中国、下げ難い金
といった内容だった。
そうした講演内容が、新年早々揃って現実化した。

2016年最初の取引となった4日の金融・資本市場は大揺れとなった。
日経平均は600円近くの暴落、円の118円台等など…
要因は、実に簡単明瞭だった。
まず地政学リスク。
3日にサウジアラビアがイランとの外交関係の断絶を発表した。
「イスラム国」に揺れる中東は、サウジとイランの対立により
混迷を深めることになった。

そして中国。
4日に発表となった2015年12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が
好不況の目安となる50を下回る48.2となった。
また2011年5月以来の安値水準となった元安も投資家心理を急激に弱気に
傾けることになった。

そしてまた6日、
突然のタイミングで「北朝鮮が水爆実験成功」のニュースが飛び込んだ。
成功かどうかは定かではないにしても、北朝鮮の今回の暴走は
従来の「米国を対話に引きずり出す瀬戸際戦術」を超えたものだった。
怖いのは、
北朝鮮に核武装を許せば、核物質が中東にも流出しかねないという点である。

いずれにしても中東問題は奥が深くなり始めている。
サウジは世界屈指の産油国であるだけでなく、
メッカとメディナというイスラム教の二大聖地を領内に抱える。
その安定は中東域内だけでなく、世界の政治や経済の安定にとっても
極めて重要だった。

だからこそ米国の歴代政権はサウジと特別な同盟関係を続けてきた。
そこにはサウジが穏健なイスラム主義を維持し
、世界への石油の安定供給に責任を持つ代わりに、
米国が後ろ盾となる「暗黙の契約」があった。
ところがサウジなどの中東各国から見れば、
オバマ米政権がその約束を裏切ったと感じる出来事が相次いだ。

第1は2011年に中東各地に広がった民主化運動「アラブの春」で、
米国がサウジと親密だったエジプトのムバラク政権を見限ったこと。
第2には15年7月イランと米欧などが6カ国が達した核合意だった。
イランの核開発を一定期間制限する代わりに米国などの欧米各国が
イランに科している制裁を解除したしたことだった。
第3は米国発のシェール革命だった。
水圧破砕法(フラッキング)による石油増産で原油の需給は緩み、
価格が下がり、サウジは大幅な収入減に見舞われた。
かくしてオバマ政権の方針が場当たり的で一貫性がないと
中東各国が受け止め始めたのである。

こうした一連の動きの中心にいるのはやはり米国。
そして「米国の体力と気力の衰え」は否めない。
オバマ政権は「米国は世界の警察ではない」とも公言し始めている。
シリア介入をためらい、中国の人口島を巡っても及び腰。
結果的に米中の対立が深まれば、間隙をついて新興国経済も揺らぎ始める…

丙申年の2016年。大荒れ模様である。

2016年01月03日

謹賀新年

本ブログにアクセスを戴いている皆様、明けましておめでとうございます。
申年のお正月、如何お過ごしでございましょうか。

こちらは久し振りに東京での正月を過ごしております。
元旦が金曜日、2日が土曜日、3日が日曜日で、4日が仕事始め。
このような変則な日程で、例年の実家での正月はあきらめた次第。

北陸新幹線が開通し、以前に比べれば格段に便利になったとはいえ、
せっつかれるような日程では、単に疲れに行くようなもの。
こうなったら久し振りに東京で過ごしてみるか、ってなったわけです

今日は3日(日)になりますが、快晴の日々が続いております。
寒いのは寒いに違いありませんが、耐えられない寒さではない。
例年の隅田川のトレーニングでは、半袖1枚でも大丈夫といった具合です。
ランニングは当然ですが、
音楽番組を聞きながらバットの素振りを続けていますと、
しまいには汗ばんでくる。

こうした温暖な(!?)状況の中で、初詣は自転車で参りました。
最近、銀座(主としてビッグカメラ)、
築地界隈(行き付けの安価で美味い寿司屋)等、
近場の移動はもっぱら自転車を利用しております。
駐輪場の関係から、ここ2年、
もっぱら折り畳みのチャリを利用しておりますが、
最近の折り畳みのチャリは重量が10㌔程度で、組み立ても約30秒。
地下鉄の乗換やらエスカレーターの乗り降り、時間待ち等を考えますと、
チャリの移動は本当に便利です。

こうして考えてみると、とりあえず2020年の東京五輪までの最大のテーマは
「自動自動車」になるような気がします。
最近特に、高齢者のブレーキとアクセルの踏み違いの自動車事故が
問題になっておりますが、
「自動自動車」が世界的に普及すれば、世の中が一変します。
安全運転どころか、酔っ払い運転も可能になります。

米グーグルのGPS機能の精度の進捗や、
インド・タダ自動車の安価な一人乗り自動車の性能アップを考えますと、
高齢者中心の過疎地帯の“食料買い出し難”問題解決を含めて、
“革命”が起こるのも時間の問題のように思えます。
あり得ないと思われるかもしれませんが、あり得ないことが突然起きるから
革命なのであります。
年初早々小難しい話をしましたが、ここまでにしておきます。

ところで今年は雑煮にトライしました。
実家の雑煮にはほど遠いものの、
自己流の雑煮がそれなりに美味しく出来上がり、
餅が“ススム君”になって困っております。
この歳になると、過剰なカロリー摂取は強敵。
元旦にドンブリでデカイ餅を6個も食べたら、ウエストがスッときつくなりました。
従って運動せざるを得ないことになりますが、
今年もこうした“いたちごっこ”が続そうな気配ではあります。

本年も健康に留意して鋭意頑張って参ります。
変わらぬアクセスのほど、よろしくお願い申し上げます。

2015年12月26日

自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場

2015年も大詰め。
今年も様々なことが起きたが、
印象的だったのは日本の電機大手の弱体化が明白になったことだった。
シャープ、東芝など、20世紀には栄華を誇った日本の電機大手が
世界から大きく遅れをとっていることが明らかになった。

最後っ屁は東芝だった。
12月21日東芝は、2016年3月末までに国内外でグループ全体の5%に
あたる1万600人を削減すると発表した。
そして16年3月期の連結最終損益は構造改革費用などで
5500億円と過去最大の損失になることも発表した。

なぜ東芝の構造改革は遅れたのか。
チャンスは2回あった。
1度目は00年以降のITバブル崩壊後、2万人の削減、DRAMからの
撤退などを進めたが、円安など追い風が吹いて不採算事業が温存された。
そして同時期、米原子力大手の巨額買収に踏み切っている。

2度目はリーマン・ショック時の09年3月期決算。
同業の日立は製造業で過去最大の7873億円の最終赤字を計上した。
財務基盤の強さを背景に「一気に膿を出した」のである。
一方東芝は「日立ほど膿を出せなかった」。
財務が日立ほど強くなかったからである。
不適切会計へとつながる低収益事業構造が温存されたのだった。

日本の電機大手は2000年代に軒並み苦境に陥った。
価格競争で収益が不安定になりやすいデジタル家電や半導体事業に傾注し、
韓国や台湾、中国などの新興国メーカーの追い上げを受けたためである。
そして08年のリーマン・ショックが追い打ちをかけ、
ソニー、パナソニック、シャープなどが相次ぎ巨額の赤字に陥った。

09年3月期に製造業最悪の赤字を計上した日立は、
不採算のハードディスク駆動装置事業の売却や
液晶パネル事業の分離を進める一方で、
社会インフラや情報システムに経営資源を集中し、収益が劇的に改善した。

またパナソニックはプラズマパネルの生産から撤退し、
自動車などの企業向け事業に軸足を移した。
ソニーはパソコン事業の売却やテレビ事業の分社化に取り組んだ。
各社はハードの単品売りからサービス提供へとビジネスモデルを
切り替えたのである。

タイトルはソニー創業者である井深大が設立趣意書に描いた一節である。
企業規模が大きくなるにつれ、組織は硬直的になりやすくなる。
それでもソニーは、トランジスタに続くヒット商品を生み出していった。
「トリニトロン」方式のカラーテレビ、
音楽を屋外に持ち出した「ウォークマン」、
CDを使った「ハンディカム」と系譜は続いていった。

そんなソニーも「井深大(97年)+盛田昭夫(99年)」の
二大巨頭が次々に逝った後は、ヒット商品の枯渇が顕著になっていく。
残ったのは「(往時を懐かしむだけの)ソニー神話」だった。
日本の電機大手は大概がこんなパターンだったと思われる。

2015年は確かに大きな転換期ではあった。
「技術のニッポン」の旗頭である電機大手の「リセット」から再生なるか否か。
いずれにしても時間がかかりそうである。


2015年12月19日

真田一族の経済学

2015年もカウントダウン。
年末特集として今回は、今年、5回も読み返した火坂雅志著「真田三代」から、
戦国時代をしぶとく生き残った真田一族の姿を現代に当てはめてみようと思う。
「真田三代」は文庫本・上下2巻、総ページが1100ページにもなる重厚な作品
となっている。

著者の火坂雅志氏は今年の2月に急死されている。
同氏は元々歴史小説、特に地方の戦国武将に焦点を当てて描いてこられた。
中身の濃い内容で、多分背後には膨大な資料の研鑽があったと思われる。
タッチが司馬遼太郎「坂の上の雲」に似ており、
そうした丁寧でち密な描き方をする作家は現在では見当たらず、
氏の早世を至極残念に思うのである。

日本の戦国時代は、各地の大名が室町幕府の支配を離れ、
自治権を持って領国を支配していた。
戦国大名も、江戸時代のように譜代の家臣が支えていたのではなく、
一国一城の主ながら勢力が弱く、有力武将に従っている小領主(国人)の協力が
なければ政権運営ができなかった。
まさに「地方自治の時代であった」と言える。

真田一族は、武田信玄、上杉景勝、豊臣秀吉、徳川家康という名だたる武将に
次々に“鞍替え”していく。
そうした中で「表裏比興の者」と呼ばれるが、一連の(侮蔑的な)批判を
褒め言葉と受け取るようなしたたかな生き方をしていく。

そのしたたかな生き方ができた原点は、
全国に放った“真田の忍び”の情報であった。
有名な猿飛佐助、霧隠才蔵を始めとする“真田十勇士”のような
忍術と武術に秀でたグループが、真田家の情報戦略を支えていた。
そうした忍びが集めてくる情報を分析して敵の一手先、二手先を読み、
「利」に弱い人間心理を巧みにつきながら、
めまぐるしく主君を変えるという“瀬戸際外交”を展開していく。

真田家三代・4人は、それぞれに超人的な頭脳と行動力を持っている。
現代に置き換えるなら、一度会社を追われ再チャレンジを計る幸隆、
ベンチャー的な発想と機動力で生き残りを画策する独立志向の強い昌幸、
仕事はそこそこにして、精神的なゆとりを求める幸村、
組織の中で出世を目指す信之ということになる。

天下を統一した秀吉や家康からみれば真田一族は取るに足らないほど小さいが、
硬軟を取り混ぜた戦略で自治権を守り、領民から信頼される善政を敷いている。

振り返って現在の日本では、大企業が集中する東京と地方の格差は勿論、
持つものと持たざる者の格差が広がり続け、一度転落すると這い上がるのも
難しくなっている。
地方の疲弊と格差の拡大の中で、小さな組織や個人でも、知恵を絞り、
努力をすれば巨大な組織と互角の勝負ができることを真田一族は示している。
真田一族の家訓とも言える
「不様にあがいても生き残れ」
「泥水をすすっても生き残れ」
というメッセージに触れると夢と希望が湧いてくる。

芸人の芥川賞受賞が話題になった2015年ではあった。
だが受賞作の余りの中身の薄さに他の著作を探した結果、
「真田三代」に辿りついた。
つまりは「大河に決まったから読んだのではない」点は述べておきたい。
来年のNHK大河ドラマが幸村を主人公にした「真田丸」に決まったのは
単なる偶然である。

1000ページを超える著作を読むには相応の時間がかかる。
だが読めば読むほどその深さに引きずり込まれる。
天才脚本家・三谷幸喜はどのように仕上げていくのだろうか。
今年の大河は散々だっただけに、今から楽しみである。

2015年12月12日

いよいよスマホ全盛の時代へ

米年末商戦のスタートを指す「ブラックフライデー(=黒字の金曜日)」は
感謝祭の翌日で、今年は11月27日だった。
例年同日は、有名店での大幅値引きの目玉商品を狙った客の長い行列ができる。
だが近年、若者の間では「余りに混むから行かない」との声が多くなった。

代わって登場したのは、
感謝祭の週が明けた月曜日の「サイバーマンデー」。
つまりはネット上でのバーゲンが慣例となった。
今年のサイバーマンデーの売上高は前年比12%増の30億㌦(約3690億円)。

全米小売業協会によると、年末商戦が最初のピーク迎えた11月26日~29日の
ネットでの買い物客の推計値が1億300万人となり、
初めて実店舗の買い物客数を超えたとしている。
スマートフォンに慣れた30歳以下の若者世代がネット消費の担い手だった。
世界は「繁華街からサイバー空間の時代」になり始めている。

12月4日の日経朝刊第一面トップ。
「東芝・富士通・VAIOのパソコン3社の事業統合」の大きいタイトルが躍った。
年内にも基本合意し、来年4月に新体制発足とある。

米調査会社IDCによると、14年の世界のパソコン出荷台数は3億836万台。
中国レノボ・グループ、米ヒューレット・パッカード、米デルが
市場の約半分を占める。
今回の統合が成立すればシェアは約6%で、世界第6位の米アップル(6.3%)に
迫ることになる。

世界のパソコン(PC)市場では、
2011年4月のウィンドウズXPのサポート終了に伴う買い替え需要が発生、
3億6380万台が出荷されたが、以降は徐々に減少、
現在では3億台が徐々に遠くなるとの見方が大勢になっている。
原因はご推測の通り、スマートフォン(スマホ)やタブレットの台頭にある。

1990年代から本格的に始まるPC時代、
米IBM、アップル、日本NEC、パナソニック、ソニー、東芝、富士通など
有数のメーカーが激しい競争を繰り返した。

自分は一貫して東芝製ダイナブックを使用してきた。
明確に覚えてはいないが、買い替えた台数は10台超。
次々に発売される最新式(20万円前後)を追っかけた。
今思えば高い買い物を続けてきたことになる。

東芝は140年の歴史を持つ。
家電製品、例えば洗濯機、冷蔵庫などの白物の国内第一号機は全て東芝だった。
21世紀に入り、PCやTV事業の不振で、ソニー、パナソニック、シャープなどが
軒並み赤字経営をしてきた中で唯一、東芝だけが黒字経営を続けてきた。
ただ今年の7月、その東芝に、組織的利益操作をしてきたことが明らかになった。
2008年度から14年度4月~12月期まで計1562億円に上る。
結局、孤軍奮闘したかに見えた東芝も、ベースは赤字だった…

今回の事業統合で再生なるか。
海外大手は減収で苦しみ、リストラでしのいでいるのが現状。
(あくまで私見ながら)再生は難しいように思う。

まず「パソコン時代の終焉」を自覚しなければならないだろう。
でなければ、液晶画面に拘り続けたシャープの二の舞である。
間違いなく世の中は変わりつつある。「パソコンからスマホの時代へ」と。

最近の都心の電車内では10人中8~9人がスマホをいじっている。
そうした情景を横目で見ながら、見苦しい、絶対にああはならないぞと、
スマホを頑固に拒否し続けている自分は実感するのである、
時代の転換期には“発想の転換”が必要であると。

2015年12月05日

人民元は国際通貨たり得るか

11月30日、国際通貨基金(IMF)は、
通貨危機などに備えてIMFが加盟国に配るSDR(特別引き出し権)に、
中国・人民元を採用することを決定した。
この決定によりIMFは、(というより世界経済は)人民元を国際通貨として
認めることになった。

実際に組み入れられるのは2016年10月。
元は米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに次ぐ5番目の通貨として
SDRに加わるが、
構成比からみると、巨大な経済規模を映して円を上回る3位に浮上する。

IMFがSDRの通貨構成を見直すのは、現在の仕組みが発足してから35年振り。
中国が世界第二位の経済大国に台頭したことで、
「元も主要通貨として認めざるを得ない」との判断になった模様である。
日米欧が主導してきた戦後の国際通貨体制は、
大きな、歴史的な節目を迎えることになった。

SDRが創設されたのは1969年。
創設当時の外国為替制度は、金とドルを定価で交換できた「金・ドル本位制」。
そして1970年代には基軸通貨国の米経済ドル相場が不安定になる事態を想定し、
ドル以外の主要通貨を混ぜた「バスケット」制度になっていく。

SDRはいざという場合、主要通貨国から現金を引き出せる仕組みになっている。
専門的に言えば、加盟国は有事に備えて「通貨請求権」を持つ。
「バスケット制度」が成立したことで、
米ドル体制を補う公的な準備制度が完成したことになる。
「バスケット制度」制定当時は16カ国の通貨と交換できたが、
現在は簡素化されドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨になっている。

IMFの加盟国は188カ国。
出資比率に応じてSDRを配分している。
ただ「転ばぬ先の杖」の性格から、
SDR全体の規模はおよそ3000億㌦(約37兆円)。
現在の世界の経済規模から考えれば大きくはない。

当然ながら中国当局には「中国元のSDR入り」の歓迎ムードが高まっている。
ドル、ユーロに次ぐ「世界の三大通貨入り」となるからである。
ただ世界の市場で、「中国元が本当の意味で世界通貨なのか」と疑問視する声も多い。

08年のリーマン・ショク以降中国は、
ドル依存から脱却しようと「元の国際化」に向けて動き出した。
しかし実情は「依然として元は取引不自由な通貨」のままである。
中国は国境またぐ巨大マネーの制御ができなることを恐れ、
元ベースの為替取引や資本取引を厳しく制限している。
要は、未だに自由資本主義制度の枠外にいるわけである。

今年の8月には唐突に元を切り下げ、市場が大混乱に陥ったのは記憶に新しい。
元の市場は言ってみれば“(中国政府主導の)名目だけの”市場である。
中国は「市場改革を始めたばかり」であり、自己本位的な動きが目立っている。

共産党一党独裁国家が世界の自由資本主義国と同列になって協調できるか否か。
確かに現在の世界経済は中国抜きでは考えられなくなっている。
とは言え、無理矢理「(欠陥だらけの)中国元のSDR入り」を画策し、
中国元を世界通貨として認めてよかったのだろうか。

大きくしてはならない国を大きくしてしまった気がする。


2015年11月28日

高度成長時代を駆け抜けた“強すぎた横綱”北の湖

大相撲九州場所13日目の朝、突然の訃報が流れた。
「日本相撲協会・北の湖理事長死去」。
あれ、昨日まで恒例のコメントを出し、
横綱白鵬の“猫だまし”を批判してたんじゃなかったっけ?
病名は直腸ガンによる多臓器不全。享年62歳。

1953年5月、北海道壮瞥町に生まれる。
67年1月、中学1年生で初土俵。
当時は新弟子検査が通れば中学1年から相撲がとれた時代だった。
71年5月新十両、72年1月新入幕、74年1月幕内初優勝し場所後に大関に昇進、
74年7月最年少の21歳2カ月で横綱昇進。
劇画の世界の“出生街道まっしぐら”だった。

横綱に昇進して4~5年の充実期、
あまりの強さに「(たまには)負けろ!」の声が飛んだ。
勝った時、負けた力士に手を差し伸べず、肩をゆすって花道を引き揚げた。
北の湖自身も倒れた時には手を借りなかった。
それが北の湖の流儀だった。

ただそうした“憎まれ役ダンディズム”は、
一般的には“ヒール(悪役)”にしか映らなかった。
当時、嫌いなものは何かと聞かれたら「江川、ピーマン、北の湖」と
答えるのが普通とされた。
「巨人、大鵬、卵焼き」の裏返しの表現だった。

横綱としての晩年、1984年5月に全勝で24回目の優勝。
これが北の湖の最後の優勝となる。
85年1月、31歳で引退。
両国国技館完成を最後の花道に、現役力士への未練を断ち切ったのだった。

力士としての北の湖の経歴は、1973年に変動相場制に移行し
1985年9月のプラザ合意を迎える日本経済に酷似している。
戦後の日本は朝鮮戦争を回復のきっかけとし、
70年代には世界の経済大国・債権大国に上り詰めていく。
そしてプラザ合意以降は、円高・ドル安が作為的になされて
「(強すぎる)日本の一人勝ち」が修正されていく。

85年の引退後は一代年寄「北の湖」を襲名、「北の湖部屋」を創設。
2002年日本相撲協会理事長に就任。
08年大麻問題などが発覚、4期目の途中で辞任を余儀なくされる。
12年に異例の再登板。
14年公益法人移行後、評議会の決議を経た初の理事長就任。

21世紀に入った後の日本の大相撲は、熱狂・若貴ブームが去り、
モンゴル勢の躍進もあり、大相撲人気が一気に下火となった。
大麻問題やら賭博問題やら八百長問題やらが次々に噴出、
ある意味では相撲界全体の環境汚染による暗黒の時代を迎えることになる。
そんな危機的な時期を支え切ったのが理事長としての北の湖だった。

振り返って、「横綱北の湖の活躍した時代」がたまたま日本経済の上昇期であり、
「北の湖理事長の時代」がたまたま日本経済の修正期だったという言い方が
できるのかもしれない。

正直言えば自分は、ヒールを貫く力士・北の湖を好きになれなかった。
ただ激動する時代の角界を背負い、鮮烈に駆け抜けていった北の湖という
稀代の名力士をうらやましくも思うのである。

またひとつ「戦後の昭和の時代の象徴」が逝っていった。

2015年11月21日

13日金曜日のパリ同時テロ  -空爆・報復テロ連鎖の恐怖-

11月13日の金曜日。
仏パリ市とその近郊で発生した同時テロが世界中を震撼させている。
死者130人、重軽症者350人。
花の都、世界の観光地・パリが「新たな戦地」の様相を呈している。
かくして国際社会が対峙する主要な敵は、
国際テロ組織アルカイダから、過激派組織「イスラム国」へと姿を変えた。

イスラム国の樹立は2014年6月。
イスラム教スンニ派の過激派武装組織が「国家」樹立を一方的に宣言した。
ただ国際社会は「イスラム国」を国家として認めず、
イスラム教徒を代表する国と誤解を招かないよう「IS」と呼称している。
支配地域はイラク北部やシリアの一部約5万5千平方キロメートル。
日本の九州・四国の合計に相当する。

バグダディ現主導者は非イスラム諸国を敵視し、
「聖戦(ジハード)」を呼びかける。
構成員は過激派「イラクの聖戦アルカイダ組織」が母体で、
現在1万~3万人とされる。
資金源は原油の密輸や身代金目的誘拐、寄付などによる。

過激派が生まれた背景を探ってみたい。
2003年にフセイン元大統領を倒した米主導のイラク戦争後、
軍は解体され大量の軍人が失職。
大多数がスンニ派だった。
また06年から8年続いたマリキ前政権はシーア派に主要ポストを割り当て、
スンニ派を冷遇した。

雇用の大きな受け皿だった軍や警察に、
スンニ派が就職するのは簡単ではなくなった。
こうしたマリキ前政権による冷遇に不満を募らせたスンニ派住民が、
生活のためにとれる選択肢は限定的だった。
かくして過激派への“就職”は最後に残された道だった。

またISは、シリア内戦でも力を蓄えた。
アサド政権と戦う反体制派武装組織の勢力を飲み込んで勢力増大。
13年、米国が軍事介入を断念すると内戦は泥沼化、
シリア全体の統治能力を失ったアサド政権は、
収監中の過激派構成員を釈放したとされる。

こうして成り立ったISは「恐怖政治」を正当化し、酒、たばこは勿論、
音楽や映画などの娯楽を禁止、男性はひげを伸ばし、
女性は全身を覆う服装を強要している。
「ヒスバ」と呼ばれる宗教警察が一般市民を監視・支配する体制を採っている。

結局、テロの連鎖の始まりは「9.11」だった。
米同時テロ後のブッシュ政権は、アフガニスタンとイラクの戦争に突入し、
直接介入によってイスラム過激派の掃討を目指した。
イラクのフセイン政権打倒に成功したブッシュ前大統領は
03年5月に「勝利宣言」を行う。
だが皮肉にもイラクにおけるテロはそこから激化した。
宗派対立が深刻化し、経済復興に失敗したイラクがテロリストの磁場と化し、
各国の過激派が終結した。

現代の戦争は核戦争への恐怖から「国家VS国家」のそれではなく、
「現代の戦争=テロ」の色合いを強めている。
具体的な施策なく、「空爆・報復テロの連鎖」は永遠に際限なく続く様相である。

伊勢志摩サミット(2016年)、ラグビーW杯(2019年)、東京五輪(2020年)等の
国際的ビッグイベントを控えた日本が標的にならないはずがない。
パリ市街の惨状を見るにつけ、考えるだに鳥肌が立つが、
日本において同時テロが最も効果的になる場所と言えば…
巨大なターミナル駅と化した東京駅、新宿や渋谷の繁華街等々、次々に思い浮かぶ。
特に若者が(若さゆえの)履き違えた自由を主張し、“何でもあり”の世界を横柄に
謳歌する街、渋谷に同時テロが起きたら….

平和ボケのニッポン。
怖い時代が始まっていることを認識せざるを得まい。


2015年11月14日

日本の商品先物市場を死滅させていいのか?

つい最近、東京・日本橋・茅場町界隈を歩く機会があった。
証券会社が乱立する情景は今まで通りだが、
一時は同じように乱立していた商品先物取引会社の看板が全く見えない。
あっても雑居ビルに小さな看板がかかっているだけである。
ある程度は聞いていたが、そこまでとは思わなかった。愕然とした。

ここ5年の目玉としては、2011年には72年振りとなるコメの上場だった。
しかし期待されたほどの起爆剤にならず、大きな効果は出せなかった。
00年には東京工業品取引所(東工取)の売買高は世界第三位であったが、
その後はジリ貧状態となっている。

2013年2月12日には
工業品と農産物の商品先物を取引をする「東京商品取引所」が発足した。
しかし個人投資家への営業規制などが逆風となり、取引高は急激に落ち込み、
先物会社(=商品取引員)の廃業が相次いだ。

また一連の改革論議の中で、証券マネーの呼び込みによる市場再生の切り札と
されてきた「総合取引所」への合流は、商品特有の現物受け渡しの問題があり、
実現に至っていない。
予想された以上に異種業種の合併は簡単ではなかった。
独特の“文化”で成り立っていた日本の商品先物市場の一般化・近代化は
進まなかったのである。

一方、世界を見渡せば、商品先物市場は活況で、
00年以降、投資ブームや資源高を背景に、
売買高は10年で9倍以上に膨らんでいる。
投機マネーの流入は勿論、資源会社、航空会社、農家などの実需家も参入して、
産業インフラの機能を活用している。

では日本はどうかと言えば、市場参加者名簿には
住友金属鉱山、ブリジストン、横浜ゴムなど、錚々たる企業が名を連ねているが、
売買はほとんどない。市場の厚みがないのが最大のネックとなっている。

なぜ日本の土壌には商品先物市場が健全に定着しなかったのか。
戦後生まれた商品取引員(=先物会社)の強引な「まず手数料ありき」の営業手法、
あるいは「赤いダイヤ」として一世を風靡した小豆を代表例とする相場手法(仕手戦)
の荒っぽい雰囲気が、投資家離れを起こしたのはご存じの通りである。

日本全体が、商品先物業界・経営者の“(日本独特の)先物屋スプリット”も
骨身に染みて嫌気さしている。
しかし、IT時代の進捗と共にFX取引が爆発的に拡大していく中で、
営業マンが介在する従来の営業スタイルは完全に死滅した。
無理矢理とは言え、とりあえず業界自体の体質改善はなし得たのである。

商品先物市場は現代の先進国には必須である。
ヘッジ(保険つなぎ)取引のほか、資源価格の形成や資産運用の場として
先物は重要な位置にいる。
そうした中で、日本の商品先物市場全体の取引システムの変更は急務である。
だが遅々として進まない。日本の関係当局も積極的ではない(ように見える)。

そうした間隙をついて、中国系資本による市場全体の乗っ取りがカウントダウン
に入っている。当局は見て見ぬ振りをしている(ようにしか見えない)。
金融オールマイティを謳う三大メガバンク時代を迎え、
そしてマイナンバー制度が定着し始める中で、
商品取引員(=先物会社)の滅亡の危機と思う。
あれだけ隆盛を誇った消費者金融が完全に銀行系列化されたように。

現代の金融の世界は「儲ける」から「儲かる」世界を目指している。
その中で、金融大資本は「儲かるシステムを構築する」ことを主眼に置いている。
だが最後に勝利するのは金融大資本が主導するスーパー・コンピュータではなく
「泰然自若、長期で勝負する」人間と思う。

死に体の商品先物業界で孤軍奮闘する専門会社から講演会の依頼が来ている。
講演会が実現すれば以下の流れで述べようと思っている。
まず最初に現状を正確に、客観的に、冷静に伝えるしかあるまい。
そして言及したい。
メガ主導のコンピュータ取引全盛の今だからこそ、
米相場に端を発する日本の先物の伝統を消してはならないこと。
体質改善がなった和製の商品先物専門会社は残さなければならないことを。


2015年11月07日

異次元緩和の限界

ポルトガルなどの一部の欧州諸国には現在、
夢のような(=異常な)ローンがある。
「借りた分だけ金利を払う」のではなく、
「借りれば逆に受け取れる=マイナス金利」のローンである。

当然ながらこうした状況は尋常ではない。
そうした異常な状況を生み出したのは、
政策金利をマイナスの領域まで切り下げる欧州中央銀行(ECB)や
スイス国立銀行(中央銀行)が採用する“異例の”金融緩和だった。

こうした異常な状況は欧州だけではない。
日本の一部の取引でも起きている。
原因は日銀が先導した異次元緩和策である。
日銀は年80兆円ベースで国債を買い増しており、
期間1年未満の金利を中心にマイナス金利が定着している。
償還期間6カ月の短期国債の流通利回りがマイナス0.1%台を付けることもある。

日銀の黒田東彦総裁が就任直後の2013年4月に異次元緩和を始めて2年半。
任期5年の折り返し点を過ぎ、次々と歪みが表面化してきた。
日銀による国債の大量購入で金利が大きく低下し、
短期の国債金利がマイナス金利になることも珍しくなくなった。

国債の発行残高1000兆円のうち、
毎年発行する新規国債(=赤字国債)は40兆円未満。
それなのに日銀が年間80兆円を買い上げるために、市場に出回る国債が減り、
需給が締まって金利が低下(国債価格は上場)する。
金利低下は経済活動を刺激するが、
同時に債券市場のゆがみが目立ってきたのである。

「日銀の保有国債残高が300兆円を超えた」ということは、
発行残高の3割ということである。
このまま日銀が国債を買い続ければ17年末には保有比率が5割を超える
可能性を秘める。
銀行等が取引の担保に使う国債を除けば、買える国債が事実上なくなり、
債券市場が機能しなくなる可能性をも秘める。

債券市場が円滑に機能しなくなった場合、金利上昇リスクが高まる。
それでも「債券市場の機能よりも脱デフレが優先だ」の論理が先行している。
日銀内では
「デフレ脱却のためには、市場が一時的に機能しなくなってもやむを得ない」
との考え方が強い。
金利が乱高下すれば金融緩和効果も危うくなる。
つまりは異次元緩和を長期化することによって、
“(あやうい)綱渡り”の様相を呈しているのである。

そうした状況の中でも日銀は、
マイナス金利で短期国債を買う「コスト無視の爆買い」を止める気配はない。
マイナス金利を事実上容認している。
巷間(特に株式市場)で期待されている更なる金融緩和となれば、
消費者に関わる取引にマイナス金利が更に広がり、定着する可能性を秘める。

もともと異次元緩和は2年の短期決戦で設計された政策だった。
「緩和長期化がマイナス金利という市場の歪みにつながった」のは間違いない。
導入から2年半を経過し、
日銀が買い入れた国債を大量に償還する(払い戻し)期限を迎えつつある。
償還額が増加する中で、追加緩和で更に買い入れを増やすことが可能なのか。

机上の理論先行のクロダノミクスの限界。
いわゆるドロ沼である。

2015年10月31日

あさが来た

NHK朝ドラ、正確に言えばNHK連続テレビ小説は、
1961年「娘と私」(獅子文六原作)でスタート、以来半世紀を超えている。
月~土曜15分の放送が基本で、現在は毎朝8時を中心に、
地上波、BSを含めて1日4回放送している。

日本人は朝ドラという形式を至極当然のように思っているが、
1日15分のドラマを、土日を除いて毎朝放送するという形式が、
半世紀も続いてきたという例は世界にない。

インターネットやゲーム等を通した娯楽が多様化し、
欲しい情報が瞬時に手に入る現代社会において、
毎週1回の連続ドラマや毎日15分だけの朝ドラを見続けるというのは、
今や“時代遅れのアナログな”受容形態である。

そうした時代の流れに逆らった方式が続いてきた最大の理由は、
朝ドラが趣味や娯楽というよりも、日本人の「生活の一部」であり、
「(一種の)日課」のようなものになったからである。
要は朝ドラは「(日本人の)生活のリズム」を醸成してきた。
それが毎朝15分しか見られないという「不自由さ」を
受け入れた理由でもある。

朝ドラが受け入れられてきたもうひとつの理由は
「先を急がない」ことにもある。
劇的な展開となれば、15分では到底描き切れない。
その点朝ドラは「毎日同じ人に出会う」ことに意味がある。
極端に言えば、「毎朝家族に顔を合わす感覚」に近い。

83年11月12日に「おしん」が記録した62.9%は、
62年にビデオリサーチが調査を開始して以来、史上最高率とされている。
ただそうした“(朝ドラの)劇的な展開”は異例で別格である。
現在の朝ドラに過剰なドキドキ感は不要である。

基本的に考えれば、朝ドラに重要なのは「事件」よりも「人」である。
毎朝元気に仕事に向かう気持ちにしてくれる明るい笑顔や、
仕事から帰ってほっとした気分にさせてくれる心温まる微笑(ほほえみ)が見たい。
従って、女性に焦点が当られてきた。

現在の朝ドラ「あさが来た」のモデルは明治を代表する女傑・広岡浅子。
舞台は幕末から明治・大正時代。
嫁ぎ先を立て直すために炭鉱経営に乗り出し、
ピストル片手に荒れくれ者の炭鉱夫をまとめあげたと言われている。
その後も銀行や生命保険会社を設立するなど、
嫁ぎ先の両替商を近代的金融業に生まれ変わらせる活躍を見せた。

波瑠の演じるヒロイン・あさと、玉木宏の遊び人の夫・新次郎、
宮崎あおいの演じるヒロインの姉・はつ、
江本佑(たすく)の演じる陰気なマザコン夫・惣兵衛。
それぞれに好演しているが、
特に、朝ドラ版・冬彦さんの役を演じる江本佑の演技が光っている。

前作の輪島を舞台にした「まれ」が、方向感のない迷走で今ひとつだった。
その点今回の「あさが来た」は、幕末から明治にかけて実業家として
活躍した女性がベースになっており、流れに安定感がある。
幕末から明治初期の日本の金融界の推移も興味深い。
AKB48の主題歌も元気の出る曲に仕上がっている。

「あさが来た=夜が明けた」。
朝に格好な連ドラと思う。


2015年10月24日

「五十貨店」の時代 -淘汰される総合スーパー-

2020年の東京五輪を控え、東京・晴海・豊洲・有明方面での
50F超のマンションや商業ビル建築ラッシュはすざまじい。
テーマは「部屋から東京湾花火が見える」ことにある。
自分が現在の住まいに引っ越した当時、「部屋から見る東京湾花火」を
堪能できはしたが、高層ビル建築ラッシュで、
“今は昔(今から20年超前)”の夢物語である。

そうした歴史的な大きな変化の中で、自分が住まいする佃地区では、
最寄の大江戸線・有楽町線・月島駅から半径500メートル以内に
コンビニが6店舗、スーパー5店舗が乱立する。
スーパーと言っても、食料品専門スーパー。

そしてタクシーで5分、自転車で10分以内には、
ヨーカー堂、イオン、赤札堂の総合スーパーや、
ユニクロや、(東京ドーム1.5個分の面積を誇る)日用品雑貨専門店もある。

確かに人口密度の濃い地域ではある。
だから乱立状態になる。
そして競争も激烈になっていく。
究極の三段論法ではある。
だからと言って、人の流れが(多少は)違うからと、
「同一店舗が100メートル移転する状態」が尋常と言えるかどうか。

コンビニの国内の店舗数は5万店を超え、年間売上が10兆円を超える中で、
顧客の奪い合いが激しさを増している。
一方、衣料品から住居関連品まで揃う総合スーパーはこの10年で急速に
競争力を失った。
コンビニの台頭が大きな原因ではあるが、
ユニクロやネット通販の台頭も総合スーパー駆逐の動きに拍車をかけている。

10月15日、
国内コンビニ3位のファミリーマートと、
同4位のサークルKサンクスを傘下に持つ
ユニーグループ・ホールディングス(GHD)が、
2016年9月に経営統合することで基本合意したと発表した。

ファミリーマートは西友ストアー(現西友)の小型店事業として1972年に発足。
98年に伊藤忠商事が筆頭株主となった。
ユニーグループ・ホールディングスは1971年に発足したユニーが母体。
2004年にサンクスアンドアソシエイツと統合して
サークルKサンクスが発足している。

コンビニに関しては依然としてセブンイレブンの独走状態が続いている。
セブンイレブンは1万8千店の店舗数と、
それを支える約1600の専用工場を中心とした、
プライベートブランド(PB=自主企画)商品や弁当などの、
品質・価格・開発スピードで差をつけている。

1日1店あたりの売上高(日版)では約67万円、2位のローソンが約55万円、
ファミマは約52万円。サークルKサンクスは約44万円。
以降はセブンイレブン、今回の統合後の新会社、そしてローソンの
「コンビニ三極時代」となっていく。

以降は従来の百貨店のようにあらゆる商品を揃えるのではなく、
商品を絞った「五十貨店」の時代と言われる。
コンビニ優勢の流れが続いていくのか否か、
セブンイレブンの牙城が崩れるか否か。

最近、1985年に登場した30年後の世界を描いた映画
「バック・トウ・ザ・フューチャ-」の「実現度」が話題となった。
21世紀に入って変化のスピードが増しているように感じる。
これから30年後はどうなっているのだろうか…

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