日本のプロ野球界のビッグバン-51,111,111.11㌦の衝撃-
やはり主役は”ヤケクソ”のレッドソックスだった。
11月15日、西武球団はポスティングシステム(入札制度)による
米大リーグ移籍を目指す松坂大輔投手に対する最高入札額を受託、
落札球団がボストンレッドソックスであることを発表した。
入札金額はまさにサプライズの51,111,111.11㌦。
11月15日の東京外為市場の中心レート1㌦=117.70円で換算すると、
6,015,777,777円。(桁外れの金額に、計算間違いしそう!)
これまで最高だった2000年のイチローに対してマリナーズが入札した
1,312万㌦の約4倍。まさに驚愕の金額での落札となった。
1㌣でも上回りたいとの”奇妙な”端数の付け方は、レッドソックス側の
ねちっこい執念が窺い知れる。
レッドソックスは今期アメリカン・リーグで東地区3位で、ワイルドカードに
すら入れず、プレーオフ進出を逃している。
米関係者間では今回の巨額での獲得劇を、
「ライバル、ヤンキースに絶対渡したくない」ことが最大の原因と分析している。
確かに松坂をとらなければプラスマイナスで二重に効く。
しかしこの60億円がいかに途方もない金額かは単純比較でも容易に解る。
松坂が入団から8年間で西武からもらった報酬は、契約金・年俸を合わせ
推定14億円弱。
単純計算で西武側は差し引き46億円の利益が出ることになる。
そして今回の60億円は、日本プロ野球選手会に所属する12球団全選手(743人)
の総年俸の約2割。
こんな巨額の移籍金を西武に払い、そして松坂に4年60億円、〆て120億円也の
巨額のトレードが、果たして採算があうのだろうか?
ところがドッコイ、十分採算に合うようである。
11日付けのボストン・ヘラルド紙は、松坂を獲得できれば、レッドソックスが80%の
株式を所有するケーブルテレビ会社「NESN」は高額の放映権料を手にできると指摘。
またヤンキースの本拠地、ヤンキースタジアムには、コマツ・読売新聞を始めとして、
日本企業の広告看板が並ぶが、レッドソックスの本拠地・フェンウェイ・パークでも、
松坂効果で、日本企業が一気に看板を塗り替えるのは目に見えている。
レッドソックスのオーナーは、(初めて分かったが)米国の先物取引の世界でその名が
知れたジョン・ヘンリー氏。
2002年に同球団を買収してオーナーに就任。
同氏は1980年代から商品・金融の先物取引で頭角を現し、財を成したとされる。
従って、
「損な取引はしない」「総額9千万㌦にもおよぶ今回の取引も同氏一流の成算がある」と
の見方がもっぱらである。
赤字に苦しむ日本の各球団にとって、今回の60億円は衝撃的には違いない。
FA宣言されて“ただで”メジャーに旅立たれるよりは、その前の売り時に手放した方が
儲かることは、小学生でも解る論理である。
西武球団は実質的に年間約20億円の赤字を計上してきたと見られている。
そしてこの赤字分は西武グループが「広告協賛金」との名目で補填をしてきた。
従って、今回松坂の残した「置き土産」の60億円は、単純計算で3年分の赤字を
埋めることになる。
こうして2006年11月15日、日本プロ野球界のビッグバンが始まった。
「優秀選手を見出し、育て、米MLBに売り出せば、巨額の利益が捻出できる」
という、欧米流ビジネスモデルが完全に確立したのである。
このビジネスモデルは、日本独特の慣習を完璧に排除する最近の金融界特有の、
レバレッジを多用した金融手法に似た匂いがする。
「松坂VS松井」「松坂VSイチロー」は確かに来年のMLBの目玉となろう。
しかし、かたや日本のプロ野球はどうなっていくのだろうか。
盟主巨人に昔日の面影はなく、2007年には巨人戦はテレビ放映もされないとの
観測が広がっている。
1995年以降の10年にわたる金融ビッグバンで日本の金融が完全に淘汰されたように、
2007以降日本のプロ野球は、世界の大きな潮流の中で、自然に淘汰される運命にある
ようである。
