銀座ホステスA子からのメール

3月某日、ここ3年付き合いのあるA子からメールが届いた。
「先生(青柳のこと)、4月より先生の後輩になります!」
それって一体どういう意味だ?

早稲田理工学部3年の編入試験に合格したとのことである。
ご丁寧にも早稲田大学のホームページのアドレスが載せてあり、
要は合格番号を確認せよとのリクエストもある。

以下はあくまで伝聞であるから真実かどうかは定かではないが、
本人の性格からしてまず90%超は真実であろう。

A子は30歳を過ぎている。
幼くして両親が離婚、某家に養子にもらわれていった。
大学受験時になり、養親は当然のように就職を勧めた。
しかしA子はそうした雰囲気に敢然と挑戦、大学を受験する。
いくつかの大学に合格したが、結局入学した大学が東京理科大。

学費等は全て銀座のホステス稼業で賄った。
そして大学卒業後、入社したのがリクルート。
ただ、当然ながら畑違い。
次第に理科大で学んだことを活かした生活をしたいと思うようになる。
目指したのは健康食品の分析。
そして再度理科大で学ぼうと決心する。それから彷徨が始まる。

20歳代後半、リクルート退社、銀座のホステス稼業一本に絞リ込む。
そして希望通り、理科大に再入学。
ただ二年次に進級の際、学費が工面できず、退学を余儀なくされる。
昨年1年間は、お茶ノ水女子大学で科目履修生として単位を取得しつつ、
学費稼ぎに勤しむ。
そして今年、早稲田の編入試験に合格。

素直だが、体が弱く、泣き虫。
そんな彼女に栄養をつけてやろうと、時には食事(和食中心)を共にする。
どんな場所であっても、(野良犬然とした)青柳といると楽しい、心が安らぐと言う。
(過分なお世辞にしても)ウレシイことを言ってくれるじゃないか!

B型系直情型性格の自分は、酔って虫の居所が悪いと、直ぐに泣かせてしまう。
何が問題なのか、そして何が癪に障ったのかは定かではない。
正気に返り、オイオイ止めろ、何がそんなに悲しいんだ、といった場面がしょっちゅう。
こうした付き合いが約3年。

それにしても執念というか、向学心というか、A子の持っているエネルギーには驚くばかり。
日ごろから、”人生、日々これ毎日が勉強”と言いつつ、
今の自分に果たしてそうした”燃えるような”向学心が残っているのだろうか。

早稲田理工学部は、JR高田馬場とJR新大久保の真ん中にある。
2008年中頃までには理工学部のまん前まで地下鉄が開通するが、
それまではJR高田馬場か、地下鉄東西線・早稲田からの歩きとなる。
所要時間は早くて20分、ダラダラ行くと30分はかかる。
こうした通学に嫌気さし、ドロップアウトした理工の同期生をヤマほど知っている。

晴れた日ばかりではない。雨の日も、風の日も、嵐の日もある。
本来が体の弱いA子には、まず通学(=参加すること)自体が試練である。
卒業まで3年かかるのか、はたまた4年になるのか...
学費を銀座で稼ぎつつ、学業を続けようとするA子にエールを送るしかない。

さすが世界に冠たる東京・銀座。人間の坩堝(るつぼ)である。
オメデトゥ、A子!そして頑張れA子!


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