ヤンキース・トーリー監督の退任と松井秀喜

ボストン・レッドソックスとアリゾナ・ロッキーズのワールドシリーズが佳境である。
WBCに敗れた米国が、
自国の勝者を決定する戦いをワールド・シリーズと呼ぶのは確かにおかしいが、
とりあえずは、「米国流ベースボールの世界最高峰の勝負の場」には違いない。

そして、松坂+岡島VS松井稼頭央(リトルマツイ)の対決が日本でも注目されている。
しかし、である。実は自分はこの対決を冷めて見ている。
理由は簡単である。ゴジラ・松井の姿がないからである。

両膝を痛めた後半戦、特に9月の公式戦やポストシーズンの松井は精彩がなかった。
精彩がないというより、痛々しかった。
そうだ松井は33歳になるんだと、星稜高校時代から松井を知る自分が、初めて松井秀喜の
年齢を考えた。
そうだった。松井は鉄人でも、不死鳥でもないのである。年相応にガタが来る...

チャンスに打てない松井を見て、何かガッカリした。そして疲れた。
自分が監督なら、多分、松井はスタメンから外したという場面が多かった。
しかしトーリー監督は、マスコミの集中砲火に遭っても、これでもかと松井を使い続けた。

そのトーリー監督が18日、ヤンキースから退団すると発表した。
同監督は1996年に監督に就任。
12季連続でチームをプレーオフに導き、4回のワールドシリーズ優勝を達成した。
しかし2001年以降は頂点から遠ざかり、今季を含め3年連続でプレーオフの地区シリーズで敗退、
解任圧力が強まっていた。

同監督の手腕は、一般的に受け止められているイメージとは多少異なる。
ヤンキース以前に指揮したメッツ、ブレーブス、カージナルスを合わせた監督生活は計26年。
ヤンキース以外の14年で地区優勝したのは1982年のブレーブスの一度だけ。
メッツでは3度の最下位がある。
要は、「勝てる監督」or「戦略家の監督」ではなかったのである。

ただスタインブレナーという”狂犬のオーナー”が支配するヤンキースでは特異な手腕を発揮した。
カネにあかせて集めたキラ星のスター選手たちと、狂犬のオーナーの間に立ち、対話を通じて
非常にうまく扱った。その調整能力は他人にはできない”離れ業”だった。

松井も日本の球界を代表するスター選手には違いなかった。
松井自体も、そのトーリー監督の期待に応えようと、本来の長距離打者の本分を捨て、
チームバッティングに徹する中距離打者としての役割に終始した。

松井の不調とトーリー監督の退陣の符合は、MLBの厳しさを感じると共に、一抹の寂しさを
感じられずにはいられない。
来期の松井には名将・トーリー監督の後ろ盾はない。
従って、MLB特有の突然のトレードにも応じざるを得ないのである。

松井がヤンキースに入団して5年。
早朝4時あたりからの業務を終了し、毎朝8時頃から始まるヤンキース戦をおかずに、
いつも美味しい朝食を取らしてもらった。
来年からはそうした楽しみがなくなるかもしれない。
そう考えるだけで、何か寂しさが募るのである。

だから、現在のワールドシリーズの喧騒が、逆に癪にさわったりするのである。