「経営の神様」の経営理念の転換

1月10日、松下電器産業は、社名を「パナソニック」に変更することを明らかにした。
08年10月1日付けで実施される見込み。
また同時に併用していた「ナショナル」ブランドを廃止、グループ会社も全てパナソニックを付ける
としている。

松下は1918年(大正7年)に松下電気器具製作所として創業後、1935年(昭和10年)に
松下電器産業に改組。
1925年からはインターナショナルをイメージした「ナショナル」ブランドを商標として出願登録し、
国内向けの家電製品に使用してきた。

ただ輸出先の北米で「ナショナル」が使用できなかったため、
「Pan(あらゆる)」と「Sonic(音声)」から「パナソニック」を1955年から輸出用スピーカーに採用し、
その後、北米や欧州、アジアなど、輸出関連製品は全てパナソニックブランドで通してきた。

創業者・松下幸之助は丁稚奉公から身を興し、一代で日本を代表する家電メーカーへと育て上げた
立志伝中の人物で、「日本の経営の神様」として君臨してきた。
2007年3月期の連結売り上げ高は9兆1082億円。従業員は32万人。

松下発展のバックボーンは幸之助氏が掲げた経営理念とそれに基づくシステムにあった。
価値のあるものを水のように安価に、大量に供給すべきとする「水道哲学」、
それを実現するための製品分野別の自主責任経営体制である「事業部制」、
そして商品をきちんと顧客に届けるため「(ナショナルショップを核とする)販売網の整備」。

しかし02年3月期で4310億円という最終赤字を抱えるに至って、中村邦夫現会長の指導の元に、
“神聖不可侵”とまでいわれてきた幸之助氏が構築したシステムを改善しなければならないとする
動きが起こった。

結果として変化するニーズに対応できない事業部制の解体、
“松下幕藩体制”とも言われた販売店への手厚い手当ての見直し、
早期退職制度の断行など、時代にそぐわなくなったものの「破壊」が断行された。

今回の社名変更には想像以上に莫大なコストがかかる。
合計32万人の従業員が所属する大企業グループの社名変更にかかる費用は約300億円と
試算されている。

社名である「松下電器産業」、国内白物家電ブランドの「ナショナル」、
そして海外専用の「パナソニック」の三つの名称が併存することによる認知度におけるハンディを、
創業90周年を機に払拭しようとする遠大な計画ではある。

「明る~い、ナショナル」「な~んでもっ、ナショナル」とCMで歌われても嫌味に感じないほど、
電球から始まって、ラジオ、TV、炊飯器、洗濯機等など、ごくごく当たり前に“ナショナル”が家中に
氾濫していた時代があった。

日本の雄・松下は世界に通じるパナソニックとして、再生に向けての再出発ではある。
今日(28日)のニュースでは、今は海のものとも山のものとも分からない、プロゴルファーとは
名ばかりの全くのヒヨっ子・石川遼を、パナソニックの新しい顔としてCM契約するとの発表があった。

今年は平成になって20年。
幸之助氏が「時代の顔」だった「昭和」がまた遠くなっていく。
これもまた時代の流れには違いない。