IT帝国・マイクロソフトの最後の賭け
1月31日、米マイクロソフトは米ヤフーに対し、1月31日のヤフー株の終値より62%高い31㌦での
買収を提案した。買収総額は(日本円換算)4兆7千5百億円。
昨年2月の交渉決裂から1年。
ネット業界を主導するグーグル追撃に向け、20世紀後半からの米国発のIT業界をリードしてきた、
IT帝国・マイクロソフトが最後の賭けに出たことになる。
パソコンで世界の王者として君臨してきたマイクロソフト(以下MS)だったが、
ネット・メディア・携帯電話等、ITのあらゆる分野で猛烈に勢力を拡大するグーグルは、
無料ネットサービス普及の尖兵であり、そうした普及が更に本格化すれば、
MSの牙城である基本ソフト(OS)を完膚なきまでに無用のものとしてしまう。
「強い企業ほど成功モデルを壊す革新は難しい」。
最近頻繁に引用される「イノベーションのジレンマ」である。
MSは90年代後半から始まるパソコンの世界的な普及の過程で、
基本ソフト(OS)の事実上の“標準の座”を獲得、ここ20年、ワープロや表計算などのソフトで、
IT業界に君臨してきた。
しかし21世紀に入って、ネットの能力が飛躍的に向上し、MSの中心商品である一連のソフトを
「サービス」として、無料または安価に提供するモデルが出現し始めると、
「MS中心のIT業界の力学」は一気に変っていった。
この変化に先頭を切ってリードしたのが1998年創業のグーグルだった。
グーグルの成長スピードは突出している。
創業から年商100億㌦に達するまでMSは22年かかったが、グーグルは8年。
時価総額は1765億㌦(約19兆4千億円)で、MSの3034億㌦(33兆3700億円)には劣るものの、
04年の上場から3年余りで18兆円を突破し、日本の雄・トヨタさえも軽々と凌駕した。
MSの創業者で現在会長職にあり、08年内の引退を表明しているビル・ゲイツは52歳。
そして現在の最高経営責任者(CEO)のスティーブ・バルマーは51歳。
一方のグーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ、およびセルゲイ・ブリンは共に34歳。
客観的に考えれば、MSのヤフー買収提案は、
新世代に追いやれようとしている旧世代の経営者のあせりに見えなくもない。
2月8日(金)、フジの8:00AMからの朝番組「とくダネ!」では、
そのグーグルの直接取材を特集して取り上げていた。
同特集は20分程度のものだったが、日本の企業と比較するのが馬鹿らしくなるくらい圧倒的で
中身の濃いものだった。
シリコンバレーに、これでもかと馬鹿デカイ敷地を誇るグーグル本社は、
若者特有の、既存の世界の大企業に対するギラギラした挑戦の表象に見えた。
そうした若者特有のわきの甘さ、考え方の稚拙さを見せつつも、
世界から優秀な頭脳を招聘し、その頭脳が最も機能すべき環境を造ろうとする、
新時代に生きんとする若者たちの旺盛なエネルギーに満ち溢れた世界だった。
当然ながらスーツ無用・ジーンズ常用の世界であり、(日本で言えば)アキバ系のメタボも多く、
勤務中のゲーム自由・食後の昼寝自由の世界は、言ってみれば大学のキャンパス以上の、
(日本の頭の固いジィ様経営者達がひっくり返るような)全く異次元の世界だった。
そうした全く自由で、一見マニアの集まりに見えるその世界を評して、MCの小倉智昭は、
(さも無念そうに)
「日本はどうして遅れてしまったんだろうネ?」とのたまった。
小倉さん、日本は遅れるべくして遅れたんですよと、苦笑するしかなかった。
日本では地上波の全面廃止、および総デジタル化となる2011年7月24日に向け、
あと何日とカウントダウンさえし始めている。
同日は21世紀最初の“文化革命”が完成する日と位置付けるべき、劇的な日となることは
否定できない。
壁掛け式・超薄型大画面をベースに、世界の情報どころか、銀行取引や、買い物が自由にできる
日は近い。それでまに20世紀のIT帝国・MSが生き残っているか否か。
今週に入ってヤフーから買収金額の増額要求もあり、MSは苦戦している。
個人資産が7兆円を超えると言われるIT帝国の雄・世界の大富豪ビル・ゲイツは
どうみても敗色濃厚である。
祇園精舎の鐘の声、盛者必衰の理を表す...
