中国の異変 その(3)

4月10日の上海外国為替市場で人民元の対ドル相場は1㌦=6.9916元で取引を終えた。
人民元の対ドル相場は昨年11月から上昇ペースが加速、今年初めからの上昇率は既に
4.5%となり、07年の年間上昇率6.9%の三分の二に達している。

中国の中央銀行である中国人民銀行がこの時期に「1㌦=6元台」を容認したのは、
世界の市場は、4月11日からワシントンで開催された7ヶ国財務省・中央銀行総裁会議を
意識したものと解釈している
ちなみに同会議には周小川総裁もオブザーバー参加している。

4月中旬にはポールソン米財務長官の訪中があった上に、
北京五輪に絡み、聖火リレーに関して各国でトラブルも頻発、
「果たして北京五輪が開催されるのか否か」と、国際的な注目が集まる中での決断だった。

人民元は05年以降、「管理変動相場制」という、
現在のグローバルな世界では異例の市場システムを採用している。

元々為替市場とは、株式市場のように実体があるものではなく、
電話線やコンピュータを経由する“バーチャルな世界(=実体のない世界)”である。
そして上海外国為替市場と言われても、邦銀は勿論、欧米の銀行が参入しているという話を
一度も聞いたことがない。
簡単に言えば、中国元の交換市場は名目上は存在していることにはなるが、
その実「中国政府の世界に対する見せ掛け」あるいは「ニセモノ」の市場と位置付けるしかない
シロモノである。

こうした名目上の市場で中国政府は、輸出への影響を抑えるために大規模な市場介入を実施、
元相場を実勢よりも低く抑えてきた。
しかし元売り・ドル買い介入は中国国内のカネ余りを助長し、株式や不動産の価格高騰を招いてきた。
そうした一連の状況は、超円高時代、大規模な円売り・ドル買い介入を繰り返した1990年代半ばの
日本のバブル時代と全く同じ構図である。

いずれにしても唯我独尊・異質の国・中国も、ここにきてのドルの全面安もあり、
元高を容認する以外に選択肢がなくなったと言える。
市場介入を縮小し、人民元の上昇を容認すれば、カネ余りの解消につながる上、
輸入物価の下落を通じて消費者物価(CPI)の上昇を抑えることにもつながる。

ただ一方で、人民元高が中国の輸出産業の収益を圧迫し始めているのもごく自然の流れではある。
労働のコスト高・原材料高・優遇税制の見直しなども響き、“世界の工場”と化した中国の環境が
急激に変化し始めていることも見逃すことはできない。

2008年の北京五輪開催、2010年の上海万博開催を根拠に、
雪崩を打って中国に進出してきた日本の企業も、大きな転換期に入っている。
“皆で渡っても怖い”のが中国である。

世界の経済システムに完全に絡んでしまった結果、欧米流のそれとは相容れない不条理な部分が
露呈し、成長が鈍化し始めた中国は、逆に居直ってその異質な本性を剥き出しにし始めている。
“こうなったら矢でも鉄砲でも持ってこい”の風情である。

世界の爆薬庫・中国から目が離せない。