島耕作の世界
島耕作。60歳。
1970年早稲田大学法学部卒業。同年初芝電器産業入社。
以来38年、2008年5月、初芝電器と五洋電機が経営統合して誕生した持ち株会社である
「初芝五洋ホールディングス」の初代社長に就任した。
1983年に講談社の「モーニング」で始まった漫画、「島耕作」シリーズでの話である。
だが、社長就任が決まった回以降、講談社モーニング編集部には、読者からの祝福の
手紙も急増、本物の祝電も届いたという。
主人公である島耕作は、元々出世が期待されたわけではなかった。
島耕作が初めて世に出たのは、シリーズ連載前の読み切り漫画で、オフィスラブがテーマの
「カラーに口紅」だった。
これが読者の評判を呼んで連載化される。
日本経済やビジネス社会の実状をタイムリーに映すストーリー展開も注目されたが、
それよりも、ビクビクしながら浮気を繰り返すサラリーマン「課長 島耕作」の姿に妙に親近感あり、
共感を呼んだには違いなかった。
しかし連載の長期化に伴ない島耕作は、正義感が強く仕事も頑張るキャラクターに変化し、
出世街道を驀進していった。
突如のように出世街道を驀進し始めるのも不思議だが、出てくる女性はすべて美人で、
しかも聡明に描かれていた。
まさに「漫画の世界」ならではの”架空の世界”には違いなかった。
作者の(早稲田法→松下電器産業の経歴を持つ)弘兼憲史さんが言うように、
「ハングリーさを持った団塊の世代の読者を対象に、サラリーマンの夢をバーチャルで
実現しようとした、大人のおとぎ話」であった。
自分の場合、架空の人物とは言え、島耕作と同年代の早稲田大学法学部出身であり、
必然的に自分自身を漫画の世界に当てはめ、バーチャルではなく現実の姿をイメージしつつ、
「島耕作の世界」に入り込んでいった。
それが「漫画を読むのは時間の無駄」と思っていた自分が、連載漫画「課長 島耕作」を読むように
なったキッカケである。
「会社に入れば誰もが偉くなりたいだろう」との“暗黙の了解”が、企業の多様化で崩れ始めた今、
会社を舞台にしたヒーロー物は成立し難い時代である。
企業にありがちな派閥抗争に謀略、足の引っ張り合い。
大企業の人事には波乱と愛憎が付き物で、そうしたリアルで醜い“見たくない”ものをも含めて、
「島耕作」の物語は進展していった。
今回の島耕作の人事は、「あの課長が..」の思いと共に、祝福に包まれている。
誠に不思議な感覚ではある。
誰もが目標にし、日夜奮励努力しても簡単には実現できない“夢”が、それが架空の世界とは言え、
完成したからである。
島新社長は、今後は社業を超え、日本経団連の会長職も視野に、国益にかなう行動をとることに
なるという。
団塊の世代は定年を迎え、厳しい時代を迎えている。
そうした中で島耕作は、団塊の世代の“希望の星”には違いないのである。
