基軸通貨の要件

まず基軸通貨の定義は何か。
「世界各国で共通の価値基準として認められる通貨」ということになる。

近代経済では、貿易の決済や金融取引などに幅広く使われるほか、各国政府の外貨準備ともなる。
通貨発行国の経済規模や政治・軍事力、通貨取引の規模で決まるとされている。

19世紀以降、英・ポンドが基軸通貨の役割を担ってきたが、
1945年に発効したブレトンウッズ協定で、米国が世界各国にドルと金との交換を約束したことから
米ドルが基軸通貨の地位を確立した。
1971年の金・ドル交換停止(ニクソン・ショック)後も、米国の経済力を背景にドルは基軸通貨の役割
を続けている。

1997年には欧州の通貨統合でユーロが誕生、国際取引でも存在感を増し、1999年に外貨準備の
7割を占めたドルは、現在は6割にまで低下している。
ただ今回の金融危機において基軸通貨としての機能は不十分だった。
それは欧州中央銀行(ECB)の中央銀行としての権限が平時のものとしてしか与えられていなかった
からである。

ECBは通貨の供給や金利政策などの機能を持つが、危機時の金融機関の監理監督権限、
すなわち金融機関の破たんの是非、預金の保護、銀行間の市場の保証、公的資本の注入などの
権限はあくまで各国の主権に属する。
このため、その調整と管理が極めて困難な状態にある。

しかし今回のユーロ暴落を機に、欧州各国がその欠点を改善してくるのは目に見えている。
「ドルはもはや唯一の基軸通貨と言い張ることはできない」
「20世紀の枠組みを21世紀も続けることはできない」。
11月13日、サルコジ仏大統領はパリのエリゼ宮殿で演説、ドルの将来に疑問を投げかけた。

イラク戦争の混迷などで政治的威信に傷つき、金融危機で揺らぎが見える米国は、
ドルの基軸通貨としての優位を前提に、巨額の資金不足(経常赤字)の穴埋めを海外からの
資本流入に頼り続けている。サルコジ発言にはドルへの強い不信感がある。

中国など新興国の台頭と共に、世界経済での米国の地位が低下する中で、
21世紀に確立したドル基軸体制への潜在的な不安は根強い。
米国発の金融危機でその不安は強まっているが、現状の世界に第二次大戦後に英ポンドから
基軸通貨の座を奪った時のドルのような勢いのある通貨は見当たらない。
例えばロシアなどは、自国通貨ルーブル圏の拡大を目指してはいるが、不可能というしかない。

新興国の代表中国は「ドルの安定は世界経済に重要な意味がある」(温家宝首相)としているが、
それはドル安定を前提に、輸出で高成長を維持する戦略に固持しているためである。
中国は日本と同様に、対米輸出で稼ぎ、多額のドル資産を抱え込んでいる。
「ドル本位」を巡る論争は、結局は自国利益を優先する「自己本位」論争でもある。

かくして、
「100年に一度の恐慌」の真っただ中、21世紀を支配する基軸通貨に関する論議が盛んである。
大きなポイントは「果たしてオババ・米新政権が世界経済を担えるか」という点になろう。
更に大きなリスクは、経済音痴・ブッシュが正式に退任する来年1月20日までに“何か”が起これば、
米政権が対応し切れないリスクがある。
すなわち世界経済が完全にクラッシュする可能性があるということである。

日本の麻生首相の(ブッシュ大統領並みの)頓珍漢な発言が続く中、あろうことか、日本の円は
世界最強通貨になっている。
いずれ劇的に修正されようが、現在はまるで(麻生首相の大好きな)アニメの世界である。

結論的には「ドル一極時代終了」「ユーロを中心に群雄割拠の時代に入る」ということに
なろうが、世界は「100年に一度の大恐慌にある」のは間違いないようである。