鳩山版アジア通貨構想の検証

2008年度の日本の輸出は東アジア向けが45%、北米向けが19%。
従って日本経済の懸念材料は東アジアの経済状況、および為替情勢ということになる。

さればということで鳩山由紀夫新首相は、日本の生活空間である東アジアに、安定した
経済協力と安全保障の枠組みを創るとして、「東アジア共同体&アジア共通通貨」構想を
唱えている。

しかし現在の東アジアは、人民元を中心とする通貨圏に傾斜していると考えるのが妥当であろう。
結局、アジア通貨構想とは、
「中国・人民元を中心とした為替安定システムを構築する試み」ということにはなる。

単純に考えて、為替リスクを負担する相手国企業が人民元決済を受け入れるためには、
「人民元の安定」と、「(その通貨に対する)開かれた正常な市場」が必要である。
元相場は2005年7月の制度改革で、事実上の固定相場から、1日あたり一定の範囲内
(現在は上下0.5%)の変動を認める「管理変動相場制」に移行した。

その後、中国人民銀行は市場介入を調節しながら元相場を切り上げ方向に誘導していったが、
世界経済の低迷で輸出企業の業績が悪化した08年7月以降は元相場の上昇を1㌦=6.83元
前後で抑え込んでいる。

中国政府は原則として輸出など経常取引に伴う外貨取引しか認めていない。
しかし、(モノのやり取りを伴わない)架空の貿易取引などを通じて投機目的の資金が中国国内
に流入しているのは衆知の事実である。
事例を上げてみれば、09年9月末の中国の外貨準備高は8月末に比較して618億㌦増加したが、
同じ期間の貿易黒字と対内直接投資の合計は200億㌦強に過ぎない。
残りの400億㌦強は出所不明で、かなりの部分は投機資金とされている。

中国政府は、世界各国の批判はものかわ、輸出が増加に転じるまでは元相場を現水準に保つ
方針と見られる。
しかし介入の拡大は市場に出回る人民元の量が増大することを意味し、資産バブルやインフレの
原因になるのは勿論である。

10月15日、米財務省は半期ごとの為替政策に関する報告書の中で、「中国を為替操作国」として
認定するのを見送っている。
認定見送りは4月の前回報告に続くものだが、今回の報告書の書き振りは、09年上半期で
1860億㌦の外貨準備に達する“世界の大国”に対して次第に厳しくなりつつある。

民主党政権になって2ヶ月。
同党の掲げるマニフェストと現実とのギャップが表面化し始めている。
“若葉マーク”をつけたままの“お試し期間”とは言え、論理の展開が余りに理想に走り過ぎ、
現実と乖離している点は否めない。

今回の鳩山構想は、欧州統合通貨・ユーロの歴史を見ても論理的には正当である。
東アジアの旧盟主として、そうした論理を掲げることは、ある意味での義務でもある。
しかし現実には、中国という今や難攻不落の世界の大国に易々と通じるはずもない。

時代の流れとは言え、世界の大国にしてはならない国を大国にしてしまった。
市場では、鳩山構想は“絵空事”としか見ていない。
20世紀の経済大国・日本は、もはや大国ではないのである。