中国を巡るネット戦争

1月12日、インターネット検索世界最大手の米グーグルが、
「サイバー攻撃を受けた」
「ネットの内容に対する当局の検閲があった」として、
中国からの撤退を検討していると発表した。

同発表を受け米国では、「ネットの自由」を重んじる立場から、
中国の人権問題や社会体制への批判が目立っている。
米メディアも、グーグルへのサイバー攻撃に関して、調査会社の報告などを元に、
中国政府関係者の関与の可能性を相次いで報道した。
攻撃対象の拡大や精巧な手口も伝えている。

グーグルと中国政府の対立は、言論の自由などの論点を通して米国の世論を
刺激する格好となっている。
米企業が中国のネット統制に悩まされるのは今回が初めてではない。
2006年にはグーグルやヤフーなど4社が、中国の検閲に協力しているとして
米議会で批判を浴びた。

その後、08年3月のチベット騒乱を期に、中国側の締め付けは一段と強まった。
09年3月にはグーグル傘下のユーチューブが閲覧できなくなり、
英語サイトも一時的にブロックされるという状態になった。

中国の調査機関によると、中国人のネット利用の目的のトップは音楽。
ニュース、簡易メール(IM)が続き、メール・検索・買い物が上位の米国とは
異なっている。
中国検索市場で6割のシェアを持つ百度(バイドウ)が、世界最大手のグーグルと
勝負を分けた大きな要因は音楽だった。
百度はいち早く音楽検索サービスを開始。
欧米の音楽業界が2005年に著作権侵害裁判を起こしたが、判決は
「楽曲を提供しているのは当社ではなく第三者」とする百度側の主張を認めた。

グーグルが音楽各社と収入分配契約を結び、音楽サービスを開始したのは09年。
グーグルは人気のコンテンツで完全に後れをとる結果となった。
またグーグルだけでなく、通販のアマゾン・ドット・コム、競売のイーベイなど、
世界のネット市場をリードする米企業は中国ではふるわない。
結果的に、中国市場の急成長の恩恵は地元企業に集中することになった。
株式時価総額で米大手に迫っている。

中国のネット人口は3億人以上とされているが、普及率は3割未満。
ネット人口が7千万人で7割普及の日本とは成長力で比較にならない。
世界のネット産業の上位は米日ではなく、米中企業で占められつつある。

独自の規制などから、中国のネット市場は、
日米欧とは異質な進化を遂げる「ガラパゴス諸島」と揶揄されてきた。
しかし世界に散らばる華僑を含めれば20億とも言われる世界最大の人口を
バックに、欧米市場を凌ぐ巨大な市場に“大化けする”可能性を秘める。

「欧米はグーグルの天下。しかし太平洋の西側は我々の天下」
百度の李彦宏(ロビン・リー)総業者会長の強弁も否定できない状態である。

ネットの進化は驚異的である。果たしてどこまで行くのか。
たかがネット、されどネットである。
本気で国際戦略を描かず、完全に立ち遅れた日本。
結局は中国の支配下に入らざるを得ない運命なのだろうか。