「はさぶさ」の快挙
6月19日(土)夕方5時、食料買い出しにいつものスーパーに出かけた。
雰囲気が何か違っている。言ってみれば年末のような混雑である。
店頭にはパーティ用の詰め合わせが並んでいる。
若いカップルが手押し車に大量の食糧を詰め込んでいる。
そうか、今日はW杯・日本VSオランダ戦か…
6月14日のワールドカップ・サッカー第一戦、日本はカメルーンに勝利した。
「1対0」の薄氷の勝利だったが、アウェイでの歴史的初勝利には違いなかった。
奇跡と呼んでもいいような快挙だった。当然ながらその快挙に日本は沸いた。
マスコミが騒げば“にわか”ファンも増える。これは“日本のいつもの”パターン。
だが欧州の強豪、世界ランク第4位のオランダにはかなわなかった。
守りに守った挙句、結果的には「1対0」での敗戦。
確かに善戦ではある。だが元々簡単に勝てるはずはなかった。
決勝トーナメント進出(ベスト16入り)をかけ、リーグ戦最終戦となる対デンマーク戦は、
またまた日本を挙げて盛り上がるだろう。楽しみには違いない。
しかしサッカーという競技、攻撃と守備が瞬時に入れ替わるから、見ているだけで、
ホント、疲れる。これ本音。
ここ1週間、日本代表チームの活躍に一喜一憂し、サッカー、サッカーの日々だった。
だが、更にレベルの高い快挙を告げるニュースが流れていたのを忘れてはならないと思う。
3億㌔の宇宙を7年かかって往復した和製・小惑星探査機「はやぶさ」である。
最初に「はやぶさ」計画が持ち上がったのは1985年。
そして「はやぶさ」による小惑星のサンプルリターン計画が、
関係者に拠れば半分ハッタリで、計算も根拠もないまま公表されたのが1993年。
探査機の命名に関しては「アトム」が最有力候補だった。
しかし「原子爆弾を想起させる」との意見が出たため「はやぶさ」に変更された。
「獲物に飛びかかり、素早く離脱する」という、
小惑星の表面物質採取・帰還任務の成功を願う気持ちがこめられた。
ただ海外の関係者からは「宇宙探査後進国・日本にできるのか」といった、
冷ややかな目で見られていた。
米NASAは、こうした画期的な計画には10年で1000億円は拠出する。
日本の場合、文字通りケタが違っていた。今回の計画の予算総額210億円。
うち機体の開発・製作費は127億円。日本国民一人当たり約200円弱の出費だった。
惑星探査機は「大きな体にたっぷり燃料を積む」のが通例だったが、
日本の技術陣が開発したのは、「はやぶさ」の看板技術となるイオン・エンジン。
このエンジンはジエット噴射機と比較して積載燃料が約10分の一で済むという。
機体の製作にはNEC・東芝を中心に多数の民間企業が参加、“この場限り”として
企業秘密を明かし合い、長らく未解決だった技術的な問題を克服した。
「はやぶさ」という1.5メートル四方の小さな機体には日本の知恵と技術の粋が
結集されていることになる。
かくして2003年5月9日、
日本の期待をこめた「はやぶさ」は鹿児島県・内之浦基地から打ち上げられた。
そして日本時間2010年6月13日、地球に生還した。
月以外の天体に着陸した探査機が地球に生還するのは世界初の快挙である。
深宇宙(銀河)は60億㌔、時速300㌔の新幹線が114年かかると言われている。
3億㌔の彼方と簡単に言うが、全長500メートルの小惑星「イトカワ」という目標を設定し、
最先端機器を通して電波指令を送り、戻ってくるまで40分かかる距離である。
その「イトカワ」の試料を持ち帰っているかどうかが話題になっているが、
大した問題ではないと思う。
世界に先駆けた技術を、これでもかと世界に見せつけたことがとてつもなく大きい。
技術大国・ニッポンの“誉(ほまれ)”であろう。
そして不況ニッポンに一筋の光明を、というより元気を与えてくれた。
耐熱加工したカプセルを分離後、「はやぶさ」本体は大気圏に突入後燃え尽きた。
「はやぶさ」は与えられた指令に最後の最後まで忠実だった。
どこかアジアの極東の小さな島国の、口先だけの約束をする歴代首相とは大違いだった。
そのせつない、真摯な姿に、昔日の「神風特攻隊」を想起させた。
サッカーどころではないこの歴史的な快挙を、日本中がもう少し真剣に認めてやりたい。
どうもありがとう、そして御苦労さま「はやぶさ」!!
