TPPに揺れるニッポン

11月9日、10日に開かれた衆院予算委員会。
NHKのライブの中継。最近の軽いお笑い番組よりもよほど面白い。
主役は仙石由人内閣官房長官。現役の弁護士とあって、答弁も法的用語を巧みに交え、
まさに老獪。オールラウンドの“妖怪”のように映る。

ただ民主党政権の外交は、素人目にも稚拙に見える。
米中の狭間で、双方の顔色を窺うばかりで、断固とした結論を出せずにいる。
菅首相は全く内容のない曖昧な答弁を繰り返し、“影の首相”仙石官房長官の答弁も、
最後の最後には結論を欠いている。

そうした中、TPP(トランス・パシフィック・パートナーシップ=環太平洋経済連携協定)
が大きくクローズアップされている。
最近のマスコミ界では、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)など、
同じような横文字の経済協定が乱舞し、無理矢理日本語に訳してしまうものだから、
どれがどういう内容なのか、それぞれがどう違うのか、字面からは全く見えてこない。
ただ今回のTTPが重要視される最大の理由は、
原則として「全ての関税を即時または10年以内に撤廃する」協定だからである。

同協定は、2006年、シンガポール・チリ・ブルネイ・ニュージーランドの4ヶ国が、
貿易や投資、人の移動など、幅広い分野の自由化を目指して締結。
そして今年に入って、米国、オーストラリア、マーレシア、ベトナム、ペルーの
5ヶ国が参加を表明している。

1980年代以降、日本は、米欧との貿易摩擦に直面し、農産物以外の幅広い分野で
様々な規制を迫られた。
現状のTPPは米国主導の自由貿易圏構想をベースに拡大交渉が進んでおり、
場合によっては米国との関係が悪化しかねないとの懸念が根幹にある。

大きなポイントは「郵政事業」「農産物問題」「人の自由の移動」。
郵政事業に関しては、国の後ろ盾がある日本郵政と外資系保険との競争条件に
格差があるのは従来から問題視されていた。
農産物については、輸入制限が撤廃されれば、日本国内の専業農家に大きな影響を
与えるのは必至。
また人の移動に関しては、移民を受け入れ続けてきた米国からの圧迫があれば、
一段の開放に追い込まれる。

私見だが、農産物問題が最大のポイントと思う。
農水省はコメなどの主要19品目で全て関税を撤廃すれば、毎年4.1兆円の生産額が減り、
自給率は40%から14%に下がると試算している。
中国・北京のスーパーで、最安価の米は5㌔で300円なのだという。
国際的にも高品質とされる日本のコメだが、通常で2000円弱。
何がなくとも、とりあえず食い物があれば生きてはいける。
大々的な農業革命が起った挙句、日本が世界から孤立した場合、一体どうなるのか…

法人を含む日本の農業者数は今年までの5年間で16%減り、耕地面積も1.5%減少した。
一方で法人数は16%増加し、しかも規模が大きい農業者ほど数が増えるという傾向にある。
農産物に関する最大の解決策は「農業経営者を育成する」しかないことにはなる。

しかし「プロの農業者は圧倒的に少ない」のが現状である。
現在の農業就業者の平均年齢は65.8歳。
平均年齢はこれからどんどん上がっていく。
そうした農業者が引退した後、耕地と技術を引き継ぐ経営者を早急に育成できるか否か。

「TPPは米国主導の第二の開国」と呼ばれ始めている。
“青葉マーク”の民主党政権が、一連の“危機”を乗り切れるか否か。
誠に心許ない限りである。