中東政変に見る世界の潮流

2008年のリーマン・ショックを機に環境が一変した世界経済は、約2年を経過して、
順調に回復に向かっているようには見える。
しかし根底では「新自由主義的思潮と経済のグローバル化」の歴史的な転換点にいる。

国際収支の不均衡、国際商品市場の異変、ドル基軸通貨体制の揺らぎ。
そして先進国のデフレと新興国のインフレ、国際商品価格の高騰といった様々な混乱は、
現在の世界が歴史的な転換点にいることを示している。

20世紀後半から、新興国が世界経済に本格的に組み入れられるようになった。
そしてその巨大な低賃金労働力に向け、世界の巨額の投資マネーが流入し、
結果的に低価格製品の絶対的な供給者となり、先進国で深刻なデフレを起こすに
至っている。

一方で、
新興国の産業・生活インフラへの投資が拡大した結果、新興国の賃金・生活水準も上昇、
今度はその巨大な人口を養うための資源・エネルギー・食料の需要家としての影響力が増大、
インフレの震源となっていった。

北アフリカから中東全域に広がった政情不安は、物価高騰が低所得層の国民生活を
脅かすことになった結果引き起こされた。
国民生活の危機が社会不安となり、最終的には政治不安に及んでいったのである。

根幹の問題を明確に露呈したのはエジプトの政変である。
30年近くエジプトに君臨したムバラク独裁政権が倒れた背景には、同国固有の事情と共に、
若年失業の増加、食料品の高騰など、世界経済に密接に絡む要因があった。

米一極集中から多極化に移行する中で、新興国の需要急増や、先進国の金融緩和に伴う
膨大な投資マネーの流入が食料価格を押し上げ、エジプト・ヨルダン・イエメンなどの
資源の乏しい新興・途上国を揺さぶったのである。

混乱する中東諸国に共通するのは、人口に占める若年層の割合が高い一方で、
そうした若年層の雇用を十分吸収できないという点である。
それに追い打ちをかけるように食料品が高騰し、怒りの矛先が独裁政権に向かった。

IT時代が予想以上に驚異的な進歩を見せる中で、中東の政変は、
ネット時代の新たな市民革命の形式も見せつけている。
反政府デモの連帯を支えたのは「ツイッター」や「フェイスブック」などのネット空間だった。
ムバラク政権はネット遮断を試みたが、民主化を求める国民や国際世論がそれを
突き崩したのである。

かくして、投資マネーとネットが世界を一つにつなげ、この二つにうまく折り合いを
つけられない政府は崩壊するという時代になった。
政府は数年に1回の選挙だけでなく、市場からも、また瞬時に広がるネットからの
脅威にも晒される時代になったのである。

今回の中東発の大きな潮流は、
一党支配を続ける中国という“新時代の化け物”に連鎖する可能性を秘めている。
新時代の秩序をどうやって見い出していくか。
その答は闇の中である。