2011年10月29日

サイバー戦略を検証する

2001年2月に「インターネット犯罪者」という翻訳本を刊行している。
IT用語のオンパレードで、専門の英和辞典を片手に、汗みどろの翻訳作業をしながら、
実際にこんなことがあり得るのかと、実は半信半疑だった。
ところが10年を経過して、実際にサイバー攻撃が現実のものになっている。

国や企業の秘密を盗み、核関連施設等の安全を脅かすサイバー攻撃。
米国防省は7月、「サイバー戦略」を発表、
サイバー空間を陸・海・空・宇宙並ぶ新たな「作戦領域」と位置付け、
サイバー攻撃対して通常兵力などで対抗する可能性を示している。
「キーボード対巡航ミサイルの戦いもあり得る」としたのである。

9月中旬に発覚した三菱重工業へのサイバー攻撃の輪郭が見え始めている。
3種類の異なるハッキング技術が使われ、大手IT(情報技術)企業の上級技術者と
同等の力量を持つ複数のハッカーと、それを束ねる指揮官が、
かなりの時間をかけて仕掛けた組織的な犯行と結論付けられている。

攻撃は従業員の知り合いを装うメールに添付されたコンピュータウイルスから始まり、
会社の組織図や社員のメールアドレス、交友関係などの情報を集めた人物がいた
ことになる。
ウイルスを外部から操るには、隠れた場所でサーバーを運営する技術も必要に
なってくる。まさに「プロの集団」である。

警視庁公安部は
「サイバーインテリジェンス(サイバー空間を通じて国の治安や外交を揺るがすスパイ活動)
の被害が表面化した国内初の事例」
と位置付け、今回の攻撃を「国家への脅威」と認定している。

巷間では、敵が見えず、実際の被害が想定できないことが危機感を募らせており、
サイバー攻撃は近い将来警察の主戦場になるとし、
今回の事件でどこまで攻撃者に迫り、捜査能力の高さを示せるかの、
大きな試金石となるとの見方をしている。

また最近、金融機関のネットバンキングの利用者が契約者番号やパスワードを
抜き取られ、預金を別の口座に送金されて奪われる被害が、今年の4月以降全国で
103件に上っていることも注目されている。

これまでは、電子メールなどで偽のホームページに誘導し、
入力させたパスワードを不正に入手する「フィッシング」と呼ばれる手口が主流だったが、
今年になって、ウイルスを使った手口が発覚している。

かくして、金融・電力などのインフラをコンピュータ攻撃でかく乱して経済活動を
停滞させ、現実空間でも攻撃を起こすといった、複数の手段を併用し、
同時多発的なテロを起こされたら現在の日本はひとたまりもない。

考えてみれば、ややこしい時代になったものである。
いずれにしても大震災と原発事故に直面した日本の危機管理は、
サイバー攻撃でも試されることになる。
いつものワンパターン、「全くの想定外だった」では許されない。

2011年10月23日

アップルを超えるのは誰か

PC(パーソナルコンピュータ)を使い出して、かれこれ15年以上にもなる。
その間、一貫して東芝製のダイナブックを使用してきた。
買い替え総数12台。
ほぼ1年に1台の割で買い替えてきたことになる。
(キーボードの)キーを必要以上に叩き付けて壊したことも要因だが、
最大の要因は次から次へと新製品が発売されてきたからである。

ビデオの「ベータ対VHS」の熾烈な戦いの中でベータを選択して敗れたことで、
「マッキントッシュ仕様にするか、ウィンドウズ仕様にするか」にも当初は大いに悩んだ。
ただIBM製品と互換性があったことがダイナブックを選択させる要因にもなった。

そして15年経過した今、IT機器の入力方式はキーからタッチパネルへと変わりつつある。
この流れは「アップルのマッキントッシュ」を真似た「マイクロソフトのウィンドウズ95」
の登場で、キー入力からマウスに移ったのに似ている。
しかしアップルの多機能端末「iPad」は、そのマウスさえも葬り去ろうとしている。

10月5日に衝撃的な死が伝えられたアップルの共同創始者・スティーブ・ジョブズの姿は、
アップルの新製品が発売される度にTV画面に登場したことで、その“異質な雰囲気”は
嫌でも脳裏に叩き込まれた。
Tシャツにジーンズ、そして坊主頭。
世界の最先端をいく企業のトップとしては異様だった。
その異様性はどこから来たのか…

同氏の死後、ようやくにしてその理由が解った。
スティーブ・ジョブズは「日本の禅」に傾倒していたのである。
日本の禅が「ZEN」として全米でブームとなる1955年生まれのジョブズが、
10代の日々を過ごしたのが60年代後半。
「ZEN」は、当時の反体制、ヒッピー文化の思想基盤の一つともなっていた。

「政府機関や大企業が独占するコンピュータを、オレ達も所有できる時代を作るんだ」
というのが、当時のジョブズら、コンピュータに興味を持つ若者の熾烈な動機だった。
それが世界初のPCである「アップルⅠ(1976年発売)」を生み出すことになった。

興味深いのは、ジョブズ自身がプログラマーでも技術者でもなかったことである。
アップルⅠも、そして1977年発売されて大ヒットにもなるアップルⅡも、
製作したのは5歳年上の友人で、天才的技術者であった共同創始者の
スティーブ・ウォズニアックだった。

むしろジョブズが技術者ではなかったことから、常識にとらわれない発想で、
製品の理想形をイメージできた。そして技術者に無謀な注文を出し、
何が何でもその無謀な注文を完成させてしまうことがジョブズの凄さだった。
結局アップルの成功は、斬新な技術やデザインと、ジョブズの情熱と交渉力だった。

かくしてジョブズには
「スピーチの達人」
「容赦のない厳しい上司」
「魔術師」等々の形容詞がつけられることになったが、
ジョブズ亡き後のITの世界は果たしてどこに向かうのであろうか。

アナログな自分は、ただひたすら世界の激流に必死こいて随いていくしかないが…


2011年10月15日

拡大し続ける個人為替取引

つい最近、誠に遅まきながら「携帯メール」の世界に入いり込んだ。
このままじゃ世の中の動きに遅れるとのあせりからだったが、
慣れるにつれ「こんな便利なものはない」とまで思うようになっている。

これまではラップトップ型PCの世界にドップリ浸っていたが、
立ち上げに時間がかかり、瞬時の動きを逃すことも多かった。
最近惜しまれつつ亡くなったアップルの創始者・スティーブ・ジョブズが
「PCの世界は終わりに近づいている」と宣言したが、 確かにPCの世界から、
携帯=iPadの世界に移行し始めているのは否定できないようである。

そうしたIT環境の中で、外国為替証拠金(FX)取引の市場が急拡大している。
今から5年前あたりから「ミセス・ワタナベ」と揶揄された日本の個人投資家が
世界中でクローズアップされたが、リーマン・ショックで一旦自然消滅した格好と
なったものの、またモクモクと湧いて(!?)出てきている。

市場の推定だが、証拠金残高は初めて1兆円を突破したと伝えられている。
なんだ1兆円か、と言われるかもしれないが、
「平均して証拠金の5~6倍で取引する投資家が多い」中で、
倍率を平均6倍で単純計算すると市場規模は6兆円ということになる。
これは7月末で5兆7千億円と発表された日本の居住者の外貨預金を上回ることになる。

為替の世界は24時間取引でき、昨今のTV番組のレベル低下を考えれば、
確かに秋の夜長などには結構な題材となる。
ピコピコ動く為替レートを見ながら、世界の市場に入っていく真剣勝負の醍醐味は、
一度味わったらなかなか抜け出すことは困難である。

幾多の大相場を経験したことで、言葉を変えれば損失をしていたことで、
日本の個人投資家も随分とレベルが上がってきている。
以前のような“パチンコや競馬のノリ”での取引は自然と影を潜めるようになっている。
長い時間をかけて修練したことで、今や銀行の若手の専門家=為替ディーラーを
凌ぐ知識と能力をお持ちの方を頻繁に見かけるようになっている。

かたや世界に散らばる超専門のプロ集団は、コンピュタープログラムを使って、
1000分の1秒単位で注文を出す「超高速取引」を外国為替市場でも広げている。
株式市場でノウハウを蓄えた欧米のヘッジファンド等が為替市場に持ち込み、
ここ数年でその存在が高まっている。

国際決済銀行(BIS)が9月末に発表したリポートに拠ると、
超高速取引の直物全体に占める割合は25%としている。
とは言え、この超高速取引に欠陥がないわけではない。
命令系統が全てコンピュータである結果、信じられない損失リスクも併存している。

「相場は機械がやるものでなく、人間がやるものである」との古来から定説に拠ると、
こうしたスピード競争だけで勝ち続けることは不可能である。
「人間VS機械」の勝負は、結局は「人間が勝つ」ことはリーマン・ショックが
見せつけている。

とにもかくにも時代は変わった。
好き嫌いは別にして、時代の流れについていける知識・能力は必要なようである。

2011年10月09日

ドイツとギリシャを巡る争点を探る

最近、混沌とした世界情勢を映し出そうとして、TV画面にギリシャのストライキの
模様が頻繁に出てくる。
ただ、あのストライキ、憤懣をぶつける相手を間違っているように思えて仕様がない。
自分たちが自助努力をしないで、誰かが何かをしてくれる、誰かが助けてくれると
考えているようにしか見えない。
何か筋違いのように見えて仕様がない。
ギリシャとドイツ。この真逆にいる国の立場について考えてみたい。

欧州統合通貨の議論は1970年のウェルナー報告にさかのぼる。
西ドイツ(当時)、フランスなどの欧州共同体(EC)6ヶ国が
単一通貨への段階的移行への構想を描いた。
この流れは1989年のドロール委員会報告に引き継がれる。

通貨統合は、欧州域内でモノ(貿易)、ヒト(労働)に続いて、
カネの流れも自由にする欧州統合の大目標だったが、
これを後押ししたのが1989年の冷戦終結とその後の東西ドイツの統合だった。

統合ドイツが強くなりすぎるのを恐れる近隣諸国の懸念を緩和するため、
ドイツは自国通貨マルクを捨て、通貨統合に進む道を選択した。
通貨統合前には目標相場圏である欧州通貨制度(EMS)の下で、変動幅の調整や
加盟国の増減を繰り返してきたが、ユーロ誕生で域内通貨が一つになり、
域内企業は為替変動に悩まされることはなくなった。

ユーロ相場は、創設時の1ユーロ=1.17㌦台から、2000年には0.82㌦台まで
売り込まれる。
しかし2002年にユーロの現金流通が始まった頃から上昇基調に入り、
リーマン危機直前の08年に一時1.6000㌦台にまで上昇する。
そして09年末のギリシャ危機以降は、下押し(ユーロ売り)が先行している。

ギリシャの現在の財政状況は、国債発行による自力での資金調達はほぼ不可能に
なっており、EUやIMFの融資に資金繰りを依存している。
このままでは10月末にも資金が枯渇する見通しで、
12月の64億ユーロの国債償還の手当はできていない。

今回の一連の危機は、
域内の金融政策は欧州中央銀行(ECB)に一本化されている一方で、
財政政策は17ヶ国が独立して運営するという、
ユーロ発足当時から指摘されきた最大の弱点が表面化したものである。

そもそもドイツは、ギリシャをユーロに迎え入れることに抵抗があった。
勤勉なドイツ人は、“役人天国”と言われるギリシャが怠惰に映り、
経済的に脆弱な国を迎え入れれば、そのツケを払わされるという思いが強かった。

ドイツ国民は、第一次大戦後に経験した天文学的なインフレが“トラウマ”と
して残り、物価安定に極端に敏感であった。
そして「ユーロ+欧州中央銀行(ECB)」は、
世界最強を誇った「マルク+ドイツ連邦銀行(独連銀=ブンデスバンク)」の
生き写しであるべきであるとの思いが強かった。

そうした「強い通貨+強い中央銀行」を目指してきたドイツにとって、
ギリシャ等の南欧や中・東欧が加わることで変貌し始めたユーロを複雑な思いで
眺めている。

確かにドイツ国民は「必要以上に心配性である」との見方もある。
ただ一方で、困った人々を救済すべしとするキリスト教的精神も強い。
最終的には、
納得がいかなくても「ユーロ体制を維持する」との結論を出すと思われる。

「たゆたえど沈まぬユーロ」が、今回の一連の危機のキーワードと思う。

2011年10月01日

日本のプロ野球に明日はあるか

暑い暑いと言っているうちに気がつけばもう10月。
4月から始まった日本のプロ野球もエンディング・テーマが流れ始めている。
ただでさえTV番組の質の低下が言われる昨今、またお笑い中心の、
長い冬眠の時期を迎えようとしている。

その日本の球界も、市場の伸び悩みに直面している。
プロ野球に起こった劇的な変化は、放送権事業の衰退だった。
地上波放送の視聴率の低下が顕著で、黄金コンテンツだった巨人戦も、
視聴率のピークだった1983年の27.1%からほぼ下落の一途を辿り、今や7~8%台。
そして1試合1億5千万円とされた放送権収入は年ごとに下落。
「人気球団のふんどしで相撲をとる事業モデル」が成り立たなくなっていった。

日本の企業がプロ野球球団を持った最大の理由。
それは広告塔しての役割であった。
日本のプロ球界は、押し並べて新聞社と鉄道会社がリードしてきた。
読売は、先発グループの毎日、朝日が中等・高校野球をバックに購買部数を
伸ばしたのと同様の論理で、プロ野球を推進、盟主として君臨するに至っている。

一方関西(主としてパリーグ)では、阪急電鉄の創始者である小林一三モデル
「宅地開発により沿線住民を増やし、ターミナル駅や沿線に百貨店などの商業施設や
娯楽施設を開業して鉄道利用を促す」
「その中でプロ野球事業を集客力向上やイメージアップの切り札にする」
が定着していった。

南海・阪神・近鉄、九州の西鉄、東京の東急、西武もまた同じ経営論理の展開であった。
ところが、広告塔の役目が終了し“(関西風に言う)元を取った”結果、
高給取りを忌避、帳簿ズラを合わせる経営論理が先行する流れとなってきた。

放送権料がほとんどなかったパリーグは2004年の球界再編を機に、
先行したダイエー(現ソフトバンク )に倣って「地位密着」に舵を切り、
07年に共同事業会社を設立、収入増を模索してきた。
ただその会社も規模が小さく、本質的な解決にはなっていない。

現実的には、セリーグとパリーグが一体となった対策は何もなく、
「リーグ全体の事業を大きくしたい」とする掛け声はあっても、
総論は賛成、各論は球団の思惑が絡みなかなかまとまらない、という結果になっている。

特に今年は、東日本大震災に絡んでシーズン開幕延期を巡る騒動が起き、
世間の常識とずれた“(プロ野球)ムラの論理”が露呈した。
横浜ベイスターズの売却が囁かれる中で、箱庭組織からの脱却は進むのか。

グローバル化の進捗で、米大リーグは勿論、サッカーを中心に世界中のスポーツが
楽しめる時代となっている。
そして既存の「親会社に頼り切る日本の球団経営」は完全に行き詰まっている。
果たして日本のプロ野球が魅力あるコンテンツとして継続し得るか。

抱えた問題は余りに多く、簡単に解決しそうにない。
いっそのこと米大リーグの傘下に入った方が一気に解決するような気がするが、さて…

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