2012年02月26日

橋下徹・大阪市長は平成の坂本竜馬か

あたかも新時代の一大快挙のように言われた政権交代から2年半が経とうとしている。
有権者の間には民主も自民も、既成政党はみんなダメだというイライラ感が募っている。
そしてそのイライラ感は、政治に対する不信感を通り越して絶望感になり始めている。

職業政治家による「決められない政治」。
何があっても鼻で笑って突き放すようなシニシズム。
あらゆる制度や権威を否定するニヒリズム。
そうした一連のいい加減なスタンスが、日本の行く末を暗澹としたものにさせている。

大阪市の橋下徹市長が代表をつとめる「大阪維新の会」が日本に旋風を巻き起こしている。
既存の職業政治家よりは、政治的な経験は浅くとも、地域から現状を打破しようとする
政治スタイルは、確かに魅力的に映る。

3月に開講する政治塾の応募者が3326人になったこと、そしてその応募者の中に
民主党の現職議員もいたことも大きな話題になっている。
政治のプロであるべき現職の衆院議員が、政治のアマチュアの結合体と位置付けられる
団体が主宰する政治塾への入塾を希望するという末期的な症状が、政界の実態を如実に
物語っている。

維新の会は、次の衆院選挙に向け、高らかに「維新八策」の原案を発表している。
ご存じのように坂本竜馬の「船中八策」をもじったものだが、
例えば参議院の廃止のように、既成政党と一線を画した内容も盛り込み、
政治のアマチュアによる新しい政治、開かれた政治を目指す姿勢を際立たせている。

仮に今選挙となれば、大阪維新の会は、
小選挙区と比例代表あわせて77議席ある近畿地方区で半数近く、
中には50議席を占めるのではないかという予測まで囁かれている。
維新の会の勢いは誰の目から見ても明らかであり、05年の郵政選挙、
09年の政権交代選挙に似た旋風が関西に起きる可能性は否定できないのである。

最近の国会では、年金や税金が有権者の最大の関心事にあるにもかかわらず、
全く意味のない政党の小突きあいばかりが目立っている。
選挙に絡んで、自分の党に有利な状況を作り出すことばかりに必死である。
結果的に、有権者は完全にシラけてしまい、日本の政党政治への信任が薄らいでいる。

現在の政党が「お互いの選挙のための結合体」とすれば、機能しないのは当たり前と
言えば当たり前である。
「決められない政治」はいつまで続いていくのか。
目新しい風、橋下旋風が起きる地合いとなるのも自然の流れではあった。

怖いのは、与野党がぶつかり合ったまま、今国会で消費増税関連法案が処理できない
ということになれば、世界の市場の不信認から財政破綻ということになる可能性を
秘めるという点である。

ひょっとしたらとんでもない劇薬かもしれない。
が、もうやけくそで、維新の会に日本を任せてみるかという気にもなる。

橋下徹は平成の坂本竜馬か。はたまた単なるアジテーターなのか。
手探りの中で、現在の日本は幕末の様相である。


2012年02月19日

整理統合の最終段階に入った日本の商品先物業界

コメ先物が東京穀物商品取引所(以下東穀取)と関西商品取引所に上場して、
2月8日で半年が経過した。
コメの売買高は両取引所とも1日500枚(枚は最低取引単位)前後と
全くの期待外れで、商品先物市場の浮上のキッカケが掴めないでいる。

東穀取のコメ先物は12年に入って1日300~900枚程度で推移。
上場時に目標としていた5千枚を大幅に下回っている。
東穀取はコメ上場を起死回生の最後の切り札と位置付けていた。
従ってその不振は取引所の存続問題にまで発展している。

東穀取は毎年数億円の赤字経営が続いており、できるだけ早くコメの売買高を
数万枚に増やし、業界全体の経営を安定させるための切り札にする計画だった。
2011年産米の重要が引き締まり、先安懸念が薄らいで、生産者や流通業者など
現物を扱う当業者の参加が遅れているのが要因である。

東穀取は20世紀後半、赤いダイヤと言われ沸騰した小豆(あずき)を筆頭に、
この世の春を謳歌した時期もあった。
ただ2011年の売買高が37年振りの低水準に陥るなど、売買高の減少に
歯止めがかからなくなり、ついには解散を視野にした動きになっている。

背景にあるのは、株式・金融先物・商品先物を一括して取引できる「総合取引所」
の実現に向けた制度整備の動きである。
また何にも増して、外国為替証拠金(FX)取引の市場の急拡大も見逃せない要因と
なっている。

2005年あたりから「ミセス・ワタナベ」と揶揄される日本の女性の個人投資家の
世界の市場に向けての進出が目立つようになった。
08年のリーマン・ショックで一旦自然消滅した格好となったものの、
またジリジリと復活する流れになっている。

現在の証拠金残高は1兆円を軽々と突破したと言われている。
「平均して証拠金の5~6倍で取引する投資家が多い」中で、
倍率を平均6倍で単純計算すると市場規模は6兆円ということになる。
これは日本の居住者の外貨預金を金残高は1兆円を軽々と突破したと言われている。
「平均して証拠金の5~6倍で取引する投資家が多い」中で、
倍率を平均6倍で単純計算すると市場規模は6兆円ということになる。
これは日本の居住者の外貨預金を上回る。

為替の世界は24時間取引でき、昨今のTV番組のレベル低下を考えれば、
趣味の世界としても重要な題材となる。
画面上で動く為替レートを見ながら、世界の市場に入っていく醍醐味は、
一度味わったらなかなか抜け出すことは困難である。

それに比して日本の商品先物業界は当初から“闇の部分があった”のは否めない。
商品先物取引会社の強引な営業スタイルや、一部投資家による強引な相場操縦
および仕手戦など、日本の相場の世界を捻じ曲げてきた面は否めない。

21世紀に入って以降のIT機器の進捗により、相場の世界では好むと好まざると
“世界を相手”にせざるを得なくなった。
元々日本の商品相場業界は「土着の家内工業」的な意味合いが強く、
“世界を相手にする”というスタンスにはなかった。
そして何にも増してIT化が遅れたのが痛手だった。

大きな時代の転換期には違いない。
かくして日本の商品先物業界も自然淘汰の時期を迎えている。

2012年02月11日

彷徨する日本の電機産業

戦後の日本経済をけん引してきた日本の電機産業が歴史的な危機に直面している。
今期、パナソニックは7800億円、ソニーが2200億円、シャープも2900億円の赤字を計上、
家電主体の3社だけで赤字額は1兆円を突破する。

2001年のIT(情報技術)バブル崩壊後、日本の電機各社は軒並み赤字に転落し、
それまでタブー視されてきた人員削減にも踏み込んでいった。
しかし今回の危機は2001年とは比較にならない、極めて深刻なものになっている。

2001年当時、家電や半導体の世界市場で日本のシェアや技術的な優位性は
まだまだ高かった。
しかし現在では、韓国・サムスン電子等に完全に主導権を奪われてしまっている。
一方で、IT・インターネットの主役は10年前のマイクロソフトとインテルの
ウインテル連合から、アップルやグーグルに主役が交代した。

その中で、日本企業の存在感はゼロという状態が続いている。
これまでの得意領域がジワジワと縮小する中で、新しい成長のキッカケも
見つかっていない。つまりは「後退の10年」の末に今回の危機が到来している。

今期の業績悪化の大きな要因が、長引く円高、東日本大震災やタイの洪水に伴う
生産網混乱にあるのは言うまでもない。
そしてデジタルTV特需の反動という一時的な要因もある。
しかし心配なのは危機に「慢性化」が伴っているという点である。

ソニーは08年のリーマン・ショック以降、一度も最終利益を計上することができず、
かっては「松下銀行」とまで揶揄されたパナソニックも、有利子負債が現預金を
上回るまで財務体質が弱くなった。
1000億円規模の最終損失を見込むNECなども、経営不振に陥るのは初めてのこと
ではない。

これまで言われてきた処方箋は
「日本の電機はプレーヤーが多すぎる」
「再編統合を進めて強力なリーディング企業を創成すべきだ」

しかしソニーなどの赤字の主因の薄型テレビや、ガラパゴス化と言われる携帯端末分野
で日本勢が大同団結したとしても、規模のメリットは望み薄い。
「再編による競争力強化」の機は既に逸した感が強い。

残された道は「会社の再定義」「事業領域の再編成」にしか残っていないように見える。
米IBMは大型コンピュータ・メーカーから「ITサービスの提供者」に使命を変えることで
再生した。
日本の富士フィルムは、写真のフィルムではなく光学材料のメーカーとして、
日立製作所は総合電機からインフラ企業へと軸足を移すことで危機を回避した。

こうした「会社の再定義」には不要事業の人員整理などの痛みも不可避である。
フィルムに代わる活路をプリンターに求めようとして失敗した
米イーストマン・コダックのように、必ず成功するとは限らない。
もはや待ったなしの状況である。
生き残りをかけて挑戦していくしかない。

全くの蛇足だが、ソニーの創始者の盛田昭夫さんの筆頭秘書を長い間務められた
Sさんを存じ上げている。何を気に入って戴いたか定かではないが、ここ10年、
飲み仲間として親しくお付き合い戴いている。
ただでさえ酒癖の悪い(!?)Sさんの、
「何でだ??」「どうしたんだソニーは!!」
といった(愚痴)が聞こえてくるようである。

2012年02月05日

「31年振りの貿易赤字」を検証する

1月25日、財務省が発表した貿易統計(通関ベース)によると、
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆4927兆円の赤字となった。
第二次石油危機による原油価格高騰で輸入額がかさんだ1980年以来31年振り。

日本の貿易収支が赤字となった背景には、東日本大震災という突発的な要因に加え、
円高定着による産業の空洞化などの構造問題も潜んでいる。
海外経済やエネルギー価格の動き次第では2012年以降も貿易赤字が定着すると共に、
海外からの配当収入なども含めた経常収支が赤字になる可能性も現実味を帯びてくる。

日本の場合、海外からの配当金などからなる所得収支の黒字が年10兆円超あり、
即座に経常収支が赤字になるわけではない。
ただ貿易赤字の膨張が続けば、話が違ってくる。
日本の原発が全て停止した場合、貿易赤字が膨らんで所得収支を上回るようになり、
2017年度には経常赤字に転じるとの試算もある。

ここで考えなければならないのは、
戦後輸出立国の道を歩んできた日本経済の構造変化である。
いわゆる「マーチ化」現象である。
円高が定着した結果、日本市場向けであっても海外生産に切り替えた日産自動車の
小型車「マーチ」のパターンである。

2011年7~9月期の日本企業の海外現地法人の逆輸入額は約2.2兆円。
過去最高だった08年7~9月期に並び、なお増える勢い。
アジア諸国に比べて高い人件費や法人税率に、歴史的な円高や電力料金の値上げが
追い打ちをかける。
競争力低下に直面する輸出製造業は海外生産を選択せざるを得なくなっている。

2005年、政府の経済財政諮問会議がまとめた「日本21世紀ビジョン」では
「2030年度には貿易赤字は赤字に転じる」としている。
しかも医療関連サービス等の内需の拡大による「良い輸入増」を想定した。

しかし現実は円高や空洞化による輸出不振と、電力危機に伴う燃料輸入増により、
予想は的中したものの、時期が大幅に狂ってしまった。
米経済学者キンドルバーガーらが唱える国際収支の発展段階説によると、
貿易赤字だが所得収支の黒字で経常黒字を維持する状態は
「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」への移行を意味するとする。
しかし日本の場合、成熟型の収支構造への移行は20年も早まった。
そして一方で、前提となるグローバル化は遅れている。

そしてまた大きな問題が待ち受ける。
国内総生産(GDP)の2倍の政府債務残高を抱えながら、日本の国債利回りは
低位安定してきた。
最大の強みは国内投資家による消化割合の高さであった。
もう少し正確に言えば、日本国内の企業ならびに国民が日本の金融機関に
預けた預貯金は、すべからく国債購入に充てられていたということである。

経常赤字国のイタリアやスペインでは、海外投資家の国債保有高は4~5割。
黒字国の日本は1割。
だが経常赤字に転落すれば、国内資金だけでは財政赤字を埋めきれない。
海外投資家に日本の存続を任せなければならない時代が、カウントダウンに入っている。

かくして日本は、「想定外」の道を着々と進んでいる。
日本の常識=想定内の考え方は徐々に通じなくなり始めている。
冷静に現状を判断すべき時期である。


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