2013年03月31日

”キプロス”ってどんな国???

ここ2週間、金融界では“キプロス”という聞き慣れない単語が飛び交っている。
キプロス??
それは地中海東部に位置する島国。面積は9251平方キロメートル(四国の約半分)。
人口は(2012年の推定で)113万人。主要産業は観光と金融。

そのユーロ圏の経済規模の0.2%しかない小国が、
世界の金融市場を動揺させた裏にはロシアの影があった。
キプロスの銀行の預金の3分の1がロシアの資金であり、
キプロスは表面的にはオフショアセンターと謳ってはいるものの、
その実は「ロシア専用のマネーロンダリングの国」という位置付けだった。

そのキプロスも、ギリシャ債務危機のあおりで銀行の不良債権が急増、
財政赤字と銀行資本注入のための支援が必要となっていた。
その額、キプロスの国内総生産(GDP)に匹敵する170億ユーロ(約2兆円)。

3月15日夕方から16日未明のユーロ圏財務相会合で打ち出された条件は
「預金課税」だった。
預金額に応じて7~10%程度の負担を幅広い預金者に求めるもの。
ただキプロスでは、今回の金融危機はギリシャの“もらい事故”という感情が
先立っていた。

こうした国民感情の中で、小口の預金者までも負担の対象なるというのは
寝耳に水の話には違いなかった。
結果的に国民の怒りが爆発。
発表直後から銀行のATMに行列ができ、いわゆる取り付け騒ぎとなった。

3月19日には議会が課税措置に必要な法案を採決したが、
「賛成ゼロ」で否決される事態に陥った。
そうした一連のドタバタが世界中にTV放映され、
“ユーロ危機の再来”として世界各地に伝えられた。

ユーロ圏の雄・ドイツは、
キプロスの大口預金者はロシア・英国・欧州等の富裕層であり、
そうした大口預金の4割が資金洗浄(マネーロンダリング)に関わっているとして、
安易な救済には難色を示している。
かくして金融支援には厳しい条件、結局は“闇の投資家”の排除を持ち出したことになる。

今のところ、キプロス第一の大銀行であるキプロス銀行と、
第二位のキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行の10万ユーロを超える高額預金に
ついて、最大40%カットする条件で100億ユーロを支援する方向で妥結する気配と
なっている。

今回のキプロス問題が起きて、多くの方々から
「キプロスとは何なのか」「ユーロは大丈夫なのか」
といった質問を受けた。

大丈夫かどうかという以前に、自分にとってキプロス自体が“新種の国”であり、
その所在さえ不確かであった。
ユーロ経済規模の0.2%しかない小国の問題がユーロ全体に波及することは考え難く、
「ほっときゃいいでしょ」と答えるしかなかった。

短期データ専門のPCベースの市場ではユーロが売られることになったが、
一時的なものと思う。
日本円にして1兆2千億円程度でユーロ全体が揺らぐか否か。
バックにはロシアがいるにしても、神経質に過ぎると思う。
一過性の“かすり傷”であろう。

2013年03月24日

TPPに”聖域”はあるか

3月15日、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見し、
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加すると正式に表明した。
TPP交渉参加国は年内妥結を目指している。
仮に参加しないままだと日本経済は、得意種目が突然五輪から外されたと同様の
パターンとなる状況となっていた。

ただ日本のTPP参加には米議会の了承が必要であり、
米政府による議会への通告後に交渉に入るまで90日かかる。
交渉会合は既に決まっている5月と9月に加えて7月にも開催が検討されているため、
日本は7月にも協議に合流する見通しとなっている。

また同時に交渉参加による経済効果をまとめた政府の統一試算も公表された。
全ての品目での関税ゼロを前提に、輸出の増加などで国内総生産(GDP)を
3.2兆円(0.66%)押し上げると見積もる一方で、海外農産品の流入で、
農林水産業の生産額が3.0兆円減少するとしている。

自民党ではコメや牛肉などを“聖域”として例外に求めるが、
日本が例外を増やそうとすればするほど相手国は足元を見る。
自由化率が下がればその分、日本が得る果実は小さくなる。
特にコメに関しては、日本の消費量は3分の1以上減っている。
人口減で日本の農業は縮小せざるを得ず、海外に活路を見出すしかないのが現状。

ここでTPPの本当の目的を考えてみたい。
まず第一は安全保障政策の側面である。
軍事面でも膨張する中国に対する抑止力である。
米国は中国を囲む国々との連携を急いでいる。要は中国包囲網の完成である。

第二の狙いは次世代の通商ルールの構築である。
世界貿易機関(WTO)協定が発効した18年前にはインターネットが未発達で
新興国の発言力も弱かった。
世界の変貌に合わせて新しい規則を米主導でつくろうとする。

第三の意図に米企業の損得勘定がある。
日本車から米市場を守ろうと、
フォードが日本の交渉参加に反対しているのが典型である。
実務的とされるオバマ政権は、米企業の利益代表とも見える動きが表面化する。

日本国内ではこうした側面をごちゃまぜにして語りがちである。
まず考えなければならないのは、(隠れた)大前提が軍事同盟である以上、
不参加はあり得ない。
平和立国を標榜する日本ではあるが、(軍事的に)米国の庇護なしで生きることは
不可能である。

農業問題については日本の農業を見直す良い機会であろう。
日本のコメは世界で一番美味しい。
それは日本人がよく知ってるはず。
なぜそんなに怖れるのだろうか…
たとえ安価なコメが入ってこようとも、日本の農産物、特にコメは不滅と思う。
逆手に取り、農産物輸出の絶好のチャンスと捉え、自信をもって対処するしかない.

考えてみれば20世紀後半の金融自由化の時も同じだった。
日本国内での既得権益を守ろうとするばかりの反対論が大きかった。
ただ世界の潮流に逆らうことはでき得なかった。
それはここ20年の流れを見れば分かる通りである。

日本には依然として聖域堅持を望む声があるが、なし崩し的に否定されるのがおち。
腹を括って、“世界という土俵”で戦っていくしかない。

2013年03月17日

14,000㌦超えNY株式の潜在リスク

2月5日のNY株式市場で、
ダウ工業株30種平均(NYダウ)が大幅続伸、
2007年10月につけた過去最高値を約5年5カ月振りに更新、
以降も14,000㌦台をキープしている。
米株式市場は08年9月のリーマン・ショックに端を発した金融危機の停滞から脱却し、
未知の領域に入ったことになる。

世界的な金融緩和によるカネ余りの観測が強まり、
米景気の本格回復への期待が株価上昇をもたらした。
また新型資源の「シェールガス革命」による米製造業の国内回帰といった
追い風も吹いている。まさにイケイケの展開ではある。
そして根底には
「米国にはチャンスが溢れている(著名投資家・ウォーレン・バフェット)」といった
楽観論があるのも否めない。

今年に入って、
安全資産である国債から株式に資金がシフトする「グレートローテーション(大転換)」
も徐々に顕在化していった。
米国を先頭に、世界の投資家が再びリスクを取り始めたことになる。

ダウ平均を構成する30銘柄の株価(07年10月)と比較すると、
住宅関連のホーム・デポが2倍強、小売り関連のウォルマート・ストアーズが60%超と、
内需の拡大に恩恵を受ける銘柄が好調。
また新興国で着実に稼ぐグローバル企業のIBMが75%高、コカコーラが34%高となり、
米企業の国際競争力の高さを見せている。

NYダウ平均は00年1月に最高値をつけた後、ITバブル崩壊に直面、
06年10月に再び最高値を回復するまで約6年9カ月かかった。
今回の金融危機では、最高値を回復するまでにかかった期間は5年5カ月。
「100年に一度」と言われた金融危機からの脱却は“緩和マネー”の存在抜きには語れない。

今回のNYダウの上昇に日経平均が追随したことで、
米株高は日本国内では大々的に報道はされている。
しかし海外では、ウォール街の熱気は限定的との言い方もされている。
取引そのものは低調であり、大手銀行のJPモルガン・チェースが1万7千人規模の
人員削減計画を公表するなど、リストラの流れも止まってはいない。
最高値と実体経済が乖離しているのが現状の米国の姿ではある。

日本の証券各社などでは大入り袋を配るなど、久し振りに“株屋業界”が活況を
呈している。
しかし冷静に眺めてみれば、
世界各国の主要な中央銀行がこぞって量的緩和に突き進む中で、
「行き場に困った緩和マネーが米国株を最高値に押し上げた」
「ついでに日経平均も上昇した」と見るのが妥当であろう。

確かにこの5年、誰もが株安を恐れてはいた。
その意味では「米国は前向き」にはなっている。
株価上昇から実体経済の回復にバトンが渡るのか。

折も折、日本ではアベノミクスが蔓延、「株なら何でも」という雰囲気になり始めている。
日本の一般投資家の株式投資には「下げたら(永遠に)“氷漬け”」という“悪習”がある。
“いくら下げてもゼロにはなるまい”との楽観的な考え方であるが、
株式投資も相場には違いないのである。損失は損失なのである。

冷静に対処したい局面ではある。


2013年03月09日

株なら何でも買う???

いつの間にか日経平均株価が大きな上値目標だった12,000円を突破した。
衆院解散の表明日である11月14日から直近までに、主要100銘柄のうち99銘柄が
上昇している。
「株なら何でも買う!!」という、いわゆるバブルの兆候が出始め、
最近のTV画面では、証券各社の大入袋が配られる風景が頻繁に映し出されている。

驚くことに、上場以来数十年を経て高値をつける例も出る始末。
昨年11月以降3カ月以上相場の底上げが続き、好業績の企業には資金が流れ込み易く
はなっている。
所詮「相場は結果」。しかし、この流れに落とし穴はないのか。

金融緩和に消極的な日銀をデフレの元凶と見る安倍晋三政権の誕生と、
円高是正が進んだことで、金融政策への関心と期待値は一気に高まった。
前任者の政策運営を厳しく批判する方々が執行部に座るのも日銀史上初めて。

日銀次期総裁に黒田東彦アジア銀行(ADB)総裁(68)、
副総裁に岩田規久夫・学習院大学教授(70)、中曽宏日銀理事(59)による新チームに
よって、確かに変化は起きつつある。
しかしそれが永続的な成果に結びつくのか。
新体制が動き出せば夢見心地だった市場がそんな疑問を持ち始めるのは目に見えている。

金融緩和の効果を期待するのであれば、為替相場の動向は無視できない。
行き過ぎた円高の是正が経済改善のための前提条件であることは不変である。
とは言え、欧州経済の不安定化など、海外情勢によって円高再燃もあり得る。

また逆に円安が行き過ぎれば輸入物価の上昇で景気の腰が折られる可能性もある。
現に石油価格や農産物価格の上昇が問題になり始めている。
こうした為替相場の影響を念頭に置いた金融政策運営になるのは避けられない。

大胆な金融緩和を求める安倍政権の考えと一致する(日銀の)チームをつくることで、
政府と日銀の意思疎通は円滑にはなった。
しかし「日銀が政治の“しもべ”になる」こと自体が大きな問題である。
「中央銀行は独立性は保つ」のは先進国の常識中の常識である。

先導役の米株高にも危うさがつきまとう。
世界で稼ぐグローバルな米国企業の復活、
エネルギー需要を激変させるシェールガス革命をテーマに、
NYダウ工業株30種平均が14,000㌦をクリアし、過去最高値を更新した。

しかし米経済は今なお過剰債務と雇用不足に苦しんでおり、
実体経済と株価には乖離がある。
世界中を巻き込んだ米国発の金融危機から5年、株価上昇から実体経済の回復に
バトンが渡るのか否か。

最近の金融市場では1㍉秒(1000分の1秒)に満たない短時間で行われる売買が
主流になっている。
人間が認識できないわずかな時間の価格変化が投資機会となり、
プログラムが瞬時に注文を出す。
そうした“架空の空間”の流れが、人間の想像できない状況を創り出す。

先週の衆院予算委員会で、安倍首相のむくんだ顔や、頻繁にしかも30分以上も
離席するパターンが目立った。多分トイレだろうが…
アベノミクスの言い出しっぺ、安倍晋三首相の健康は本当に大丈夫なのか??

「相場は結果」ではある。しかし今回の流れ、いかにも危うく見える。

2013年03月03日

乱高下する円。アベノミクスが肯定され続けるか

2月25日午後、安倍晋三首相は日銀次期総裁に
黒田東彦アジア銀行(ADB)総裁(68)、副総裁に岩田規久夫・学習院大学教授(70)、
中曽宏日銀理事(59)の3氏を充てる正副総裁人事を明らかにした。

新体制で大胆な金融緩和が進むとの見方から同日の金融市場では円安と株高が進み、
日経平均株価は16,000円台を回復、取引時間中としては2008年9月29日以来、
4年5ヶ月振りの高値をつけた。

また同日の東京外為市場では対ドルで前週末の93円台から下落、
早朝には2010年5月以来2年10ヶ月振りの円安水準となる94.77円をつけた。
ただ早朝に円売りが進んだ後は利益確定を目的とした円買い・ドル売りが優勢となり、
円は下げ幅を縮めた。
また円安が一服するにつれて株式市場も伸び悩んだ。

そして同25日のNY外為市場では、
イタリアの総選挙緊縮策に反対する中道右派が上院で優位に立っていると伝わると
円は急伸、対ドルで90.85円近辺、ユーロ円で118.74円近辺まで急騰した。
財政再建路線が修正されれば、同国の債務問題が再燃しかねないとの見方から、
警戒感が急速に広まったためである。

また翌26日の東京株式市場では日経平均株価が大幅安となり、
前日比の下げ幅が一時280円を超えた。
外為市場で急激な円高となったことから、
輸出株を中心にこれを嫌気する売りが先行した。
一触即発の危うい相場展開が続いている。

以上が先週初の顛末だが、
まさにコミックのようなドラマティックな展開ではあった。
日銀総裁人事で円が売られ、イタリア選挙の動向で円が買われる。
確かにグローバル世界ならではの展開ではあったが、
元々、アベノミクスに無理があるのは否めない。

2月15日、16日、
モスクワで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、
新興国などから日本を意識した「通貨安戦争」の批判が続出していた。
結果的には「日本の政策姿勢」および「現状の円安」が容認されることにはなったが、
「副産物としての円安」という建前論に、全ての国が賛同したわけではない。

「経済の刺激を目指す」とするアベノミクスの論理には「通貨切り下げ」という
“付録”が付いて回る。
こうした“(自分勝手の)無理矢理の論理”が先進国は勿論、
新興国も認めるはずがない。

衆院解散から4ヶ月、政権交代から3ヶ月。
支持率もジリ高で、ここまでは安倍首相の独壇場の展開とはなっている。
日銀総裁人事も安倍首相の思惑通りに進む気配ではある。
だが、世界各国のむきだしの利害がぶつかり合う通貨論争は、
予想以上に早く再燃する可能性を含む。

円絡みの通貨ペアのチャートは日足・週足共に崩壊したままである。
強烈な反落(=円高)の可能性を秘めている。

アベノミクスの賞味期限は6月の参院選挙見るまでと見るのが妥当なようである。


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