2014年11月30日

プロ野球の経済学 -プロ野球選手の寿命&成功ライン-

2014年のMVP(最高殊勲選手)、新人王、ベストナインが相次いで発表されている。
こうした発表が始まると、野球シーズンが完全に終わることになる。
ここから3カ月、中身の薄いお笑い番組中心の世界に入る。
野球ファンには約3カ月の“暗黒の時”を迎える。

2014年の日本のプロ野球の最高殊勲選手(MVP)は、
セリーグが巨人・菅野智之、パリーグはオリックス・金子千尋。
また新人王は、セリーグが広島・大瀬良大地、パリーグがロッテの石川歩。

ご存じと思うが、4人とも投手である。
そしてMVPの両人とも閉幕に向け、肘の故障が明らかにとなっている。
投手の肘は生命線。いわゆる職業病である。
果たして来期はどうなるか、少々心配ではある。

ここで考えてみたいのは
「プロ野球の選手寿命」および「成功ラインとはどのレベルか」という点。
ドラフト会議が創設された1965年以降、50年にわたる選手の成績を集計・分析した
興味深いデータ(近畿大学・産業理工学部調査)がある。

成功ラインは、投手は「通算28勝」、野手は「427安打」、ということになるらしい。
そして入団選手の平均在籍年数、いわゆる選手寿命は65~03年が8.25年、
04年~13年が4.5年となっている。
つまり、ここ10年、球団が選手に見切りをつけるスピードが早まり、
選手の成長を我慢強く待つ育成重視の球団が少なくなったという結果になっている。
外国人やFA制度で即戦力を求める風潮が強くなっているのである。

要はプロで生き残るためには
「入団後3~5年で一定の成績を上げる」ことが必須ということになる。

その他、諸般のデータは球界の厳しい現実を浮き彫りにしている。
ドラフト6位以下の指名選手の4割以上は1軍の試合に出場できず、球界を去っている。
育成選手は06年の制度開始から昨年までプロ入りし275人のうち、
1軍の試合に出場できる支配下登録選手になれたのが87人(約3割)。

そして1軍に定着した後もプロ野球界に残留できるのが、
投手は「通算28勝以上」、野手は「427安打以上」の上位25%の層となる。
5年で通算28勝というと、年間6勝。(各月1勝)
5年で427安打というと、年間85安打。(各月15本)
達成不可能な数字には見えないが、大きな壁になっている。

また昨年までのポジション別のドラフト1位指名の割合は投手が73%を占める。
ドラフト1位の投手が28勝できる確率は39%。
要は3人に1人の勘定。

つい最近、MLB(米大リーグ)で13年総額3億2500万㌦(約380億円)という
”化け物”のような金額の契約が成立したことが報道されている。
最近の野球は日米の格差もほぼなくなり、巨額のカネが動くビジネスの場となっている。
但し、データでみる限り、
プロ野球界は「30歳までには勝負が決まる」厳しい世界には違いない。


2014年11月23日

衆院解散騒ぎを吹っ飛ばした名優の死

衆院解散騒ぎに揺れる11月18日午後、臨時ニュースが流れた。
「俳優・高倉健さん死去」。
流れた直後、ただ字面(じずら)を眺めるだけで、何かぽかんとしていた。
その後は各局が“健さんニュース”の乱発。
衆院解散ニュースを吹っ飛ばす勢いだった。

俳優・高倉健(本名=小田剛一=通称健さん)との“出会い”は、
大学時代の(今は無き)早稲田松竹でのオールナイト上映だった。
パチンコ、麻雀、酒が最大の娯楽だった当時、
(確か)ラーメン1杯分の入場料で見られる週末深夜のサービス3本立映画は
それなりに魅力があり、場所柄、早稲田の学生を中心にいつも満員だった。

当時は館内喫煙自由、飲酒自由だった。
もうもうとした“霞ヶ関”状態の中での何でもありのザワザワ感は、
今の映画館には考えられない独特のもの(無法地帯)だった。
高倉健、藤純子、鶴田浩二などを配した東映黄金時代の義理人情をテーマにした
“ヤクザ”映画は、
「(村田英雄の演歌)人生劇場」を第二校歌と公言するワセダの学生には
絶大な人気があった。

ただ社会に出てからは、「死んでもらいます(唐獅子牡丹)」といったセリフに
代表される、実世界から乖離した世界を嫌悪し始め、次第に“ヤクザ映画”から
離れていった。
任侠の世界が、「男らしさについての自己満足の世界」に映り始めたのである。

だが健さんは、
1976年の東映を退社した直後の「(山田洋次監督)幸福の黄色いハンカチ」から
再び自分の生活空間に戻ってくる。
(出所直後の)ビールの飲み方、ラーメンのがっつき方が余りにリアルで、
TVでの放映・再放送・DVDを含めて同作品を20回以上見ることになる。
そして同シーンを撮るのに2日間断食したことも知るようになる…

その後の健さんは「駅 STATION」、「南極物語」等の後世に残る名作品に出演、
ヤクザ映画の健さんのイメージは払拭され、日本男子の辛さを正直に真剣に演じる、
戦後を代表する映画俳優になっていった。

「駅 STATION」の、八代亜紀の「舟歌=(通称)あぶったスルメの歌」が流れる
大晦日の倍賞千恵子との絡みのシーンも大好きで、この作品も20回以上見ている。
その後も日米合作の「ブラック・レイン」や「鉄道員(ぽっぽや)」等などの名作品に出演、
また日本生命のCMのセリフ「不器用ですから」が健さんの俳優としての地位を確立、
2013年には文化勲章を受章することになる。

205本の出演映画の中で、代表作とは何かと問われれば、
健さん人気の範囲を老若男女を含む規模にした「幸福の黄色いハンカチ」と思う。
ラストシーンの(風に揺れる)黄色いハンカチのパタパタが余りに清冽で、
何回見ても感動する。

巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄、俳優&歌手・加山雄三、そして俳優・高倉健の
(自分の)日本の三大スターの一角が崩れた。
「想いを伝えるのが俳優」とした名俳優・高倉健の座右の銘は
「往(ゆ)く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」。

気が付けば、2014年が終わろうとしている。
そしてまたひとつ、昭和の時代が終わろうとしている。

2014年11月16日

「ハロウィン・サプライズ」から一転、衆院解散へ

10月31日、
黒田東彦・日銀総裁の突然の発表は以下の通りだった。
「長期国債の買い入れを年30兆円増やし、年80兆円にする」
「株価指数の連動する上場投資信託(ETF)の買い入れ額をこれまでの3倍の年3兆円にする」
「上場不動産投資信託(J-REIT)買い入れ額をこれまでの3倍の年900億円にする」

昨年の異次元の金融緩和を導入した際には「資金供給量を2年で2倍」といったように
数字の「2」を強調した。
今回は「30兆円」「3倍」などの「3」を強調した。
一連の黒田発言を受け、追加緩和決定後から日経平均株価は上昇、
また円相場の急落が続き、日経平均は17,000円台、円は116円台に到達した。

特に株価の急騰が目立ったが、これは黒田発言に先立ち、
年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が、
国内株式と外国株式による運用比率を12%から25%に、
国内債券は60%から35%に引き下げることを正式に発表したことも影響している。

この一連の追加緩和決定のニュースは世界同時株高を演出することになった。
この日本発の“大々的な仕掛け”を世界の金融市場では「ハロウィン・サプライズ」と
“浮かれ”口調で呼称した。
だが事態は(予想以上に)深刻である。

そもそも今回の追加緩和には、日銀内部でも意見が分かれた。
異次元緩和政策導入時には
インフレ目標の達成時期を2年程度とした点をのみ反対した1委員が反対し、
その他の政策は(総裁・副総裁と審議委員6人の)9人からなる政策委員会の全会一致だった。
しかし今回は「5対4」の僅差だった。

今回の発表により、日銀は“渡ってはならない川”を渡ってしまったことになる。
GPIFが減らした日本国債の保有分を日銀が肩代わりせざるを得ない。
突き詰めれば、
「日銀は、国債価格維持のために、未来永劫、国債を買い続けなければならない」
ことになってしまった。
「出口がなくなった」のである。

そして急激な円安である。
「円安=輸出の増益=株価上昇」の図式はもはや過去の話。
“アベノバブル”が始まって円はドルに対して約4割下落している。
石油を始めとした輸入品価格ハジリ高状態になっている。

怖いのは中国の動き。
中国元はドルに対してジリ高(約2%)。
中国から見れば、日本の不動産や株式、骨董品や日用品が全て4割安になったと映る。
巷間では「国を挙げた叩き売り」との表現も使われ始めている。

アベノミクスでは「株価が上昇すればデフレマインドが改善し、
国民がカネを使うようになる」という“安易な”考え方が見え隠れする。
だが株高の恩恵を受けているのはごく一部の国民。

かくして(必要以上に)過激なアベノミクスが“アベノミス”になり始めた結果、
衆院解散の動きが顕著になっている。
黒田東彦という学者の(リスクを顧みない)“壮大な実験”の連発に、
日本国民もしらけ始めている。

安倍政権も、そして日本も大きな曲がり角である。


2014年11月09日

地方銀行の末期的合併劇

11月4日の日経新聞朝刊一面は「横浜・東日本銀統合」の見出しが躍った。
「攻めの広域再編」とある。
だが、果たして地銀に生き残る道はあるのか。

1990年代の不良債権問題を経て、日本版ビッグバンが標榜され、
都市銀行・信託銀行・長期信用銀行の集約が進み、
3メガ銀行や巨大信託銀行が生まれた。
反面、地銀・第二地銀は全国に105行が乱立し、再編は遅れている。

今更資産の大小で金融機関の優劣を決める時代でもないが、
今回の横浜・東日本の統合により、総資産が10兆円を超えるのは、
同横浜・東日本をトップに、以下福岡FG(14兆1000億円)、千葉(12兆円)、
ほくほくFG(11兆1000億円)、静岡(10兆7千億円)となる。

世紀が変わった2000年からの推移をみると、20005年前後は経営の体力がある銀行が、
不良債権に苦しむ銀行と合併・統合する“救済型”が一般的だった。
2007年の福岡銀行が熊本ファミリー銀行(現・熊本銀行)、親和銀行(長崎県)を
傘下の収めたのが典型例である。

しかし近年は大型再編こそ乏しかったものの、中堅行が人口減などによる経営環境の
厳しさに危機感を募らせて結集する流れになっている。
だがこうした流れが「地銀の生き残りのための決定打」になるのか否か。

日本の金融が3大メガバンク中心になった大きな理由は、IT機器の爆発的な発展により、
「金融機関が(好むと好まざると)国際競争に晒される」からである。
そして「国際金融(為替)+株式+保険」をも含んだ総合的な金融機関のみが
生き残れる時代となってきたからである。
今後は、潤沢な「人的資源+財的資源」をベースに、
「世界の金融市場に対峙できるか」がポイントになってくる。

未だに地銀は「地元の根ざす」ことを標榜する。
ところが、新幹線・高速道等の交通網の爆発的な発達により、
「地元意識」は次第に薄らぎ始めている。
リニアで東京・名古屋間が40分になる時代。
確かに地方にリニアが整備されるには相応の時間(50年程度)の時間が
必要であろうが、この時間のハンディキャップをIT機器が補ってくれる。

金融庁主導による地銀の再編は、
最終的に3大メガバンクによる全国の地銀の系列化の序章と思えば納得がゆく。
(言い方は少々乱暴だが)「細かいのをまとめておいて、時期がきたら一網打尽にドカン」。
地銀再編劇は、最終章の「3大メガバンク」による「日本の金融機関の整備・統合」に
つながっていくように思う。

この「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備統合」は、
「国民総背番号制」および「日本国民の一人一銀行口座」につながる。
税収に悩む日本国は、日本国民の資産をガラス張りにしたいのは明白である。

かくして遠大なシナリオは着々と進行する…


2014年11月02日

バブル最末期の産物「91世代」の検証

時として20歳代後半から30歳代前半の社会人から「バブル時代とは何?」と
聞かれることがある。
単刀直入に「1985年9月のプラザ合意から1992年あたりまでのカネ余りの時代」
と説明している。
米主導型の超円高時代を迎え、大々的な金融緩和が続られた結果のカネ余りの時代
ということにはなる。
象徴的な言い方として、
「深夜にタクシーを停めるのに1万円札を(ひらひらと)大きく掲げなければ
止まってくれなかった時代」で締めることにしている。

彼らは一概に「経験してみたい」と言う。
だが実際に経験した者にとっては「苦い思い出ばかりの狂った時代」というしかない。
最近、そのバブル最末期に就職した年代層を問題視し、「91世代」と表現するように
なっている。

「91世代」。
もう少し丁寧に言えば、1991年に社会人になった大卒社会人。
バブル期の超売り手市場の中で就職活動をした最後の層で、67~69年生まれが多い。
都会生活、ブランド品への愛着が強く、次の団塊ジュニアと一線を画す世代。

「91世代」の大学時代に起きた主たる出来事。
1987年(大学1年)
アサヒ「スーパードライ」発売。
安田火災がゴッホ絵画を53億円で入札。
日本の外貨準備高が世界一に。

1988年(大学2年)
東京ドーム完成(3月)。
「24時間戦えますか」「くう・ねる・あそぶ」のコピーが流行。

1989年(大学3年)
昭和天皇崩御(1月)。
ソニーが米コロンビア映画を買収。
三菱地所が米ロックフェラーセンター買収。
ベルリンの壁崩壊。
日経平均株価が史上最高値。

1990年(大学4年)
太陽神戸三井銀行誕生。
松下電器、米MCA買収

1991年はバブルのお祭り騒ぎが日本全体を覆っていた。
就職活動生は企業主催のパーティに参加したら一次面接に合格。
内定をもらうと研修と称した旅行で拘束され、入社式は豪華客船で開催…
企業は「入ってもらった」、新入社員は「入ってやった」という風潮…
デートのある日に残業を命じられたら「デート優先」が37%…

このバブルの風潮は92年から暗転する。
採用枠は大幅に削られ、「92世代」以降は目の前でシャッターを閉ざされた格好となり、
メディアでは「就職氷河期」の言葉が取り上げられ、組織に世代間の断層が生まれ始める。
またこの頃は「インターネット勃興期」でもあった。
1991年を期に、世の中の環境が大転換を始める。

2010年あたりから「ビジネスマン35歳定年説」が言われ始めている。
「知識・経験を35歳までどれだけ蓄積できたか」がその後の人生を決めるとする。
こうした新時代の中で、現在46~47歳になる「91世代」のポスト(不足)問題が
深刻になっている。
日本伝統の年功序列制度は既に形骸化、リストラの嵐はまともに受けざるを得ない。

高度経済成長型時代の徒花(あだばな)、狂騒・バブルの時代はもう二度と来ない、多分….


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