2015年04月26日

見え隠れする「官製相場」の限界

4月10日の株式市場で、日経平均株価が一時2万円の大台を回復した。
そして4月22日には終値でも2万円を回復した。
IT(情報技術)バブル期の2000年4月以来、15年振りとなる“快挙”ではある。
2012年11月14日に当時の野田佳彦首相の解散宣言で始まった「アベノミクス」は
ついに大きな目標に到達した。

株高の起点は日米欧のなどの主要国の金融緩和だった。
潤沢な資金が株式を中心としたリスク資産の価格を押し上げた。
日経平均株価は8664円から2.3倍の2万円になった。
同じ期間で2倍になった中国、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和で5~7割高となった
ドイツやフランンスと比べても上昇率が大きい。

こうした上昇相場で目立つのが、海外勢による日本株の買い越し。
買い越し額は18兆円におよぶ。
そして14年度だけで5兆円以上を買った年金積立金管理運用独立法人(GPIF)や
日銀など、公的資金が下支えになっていることはご存じの通りである。

巷間では今回の2万円相場に対して「官製相場」の呼び方がされ始めている。
政府や日銀が直接・間接に介入していること明確だからである。
景気回復のために市場に介入し、国債金利を低めに誘導等の手法が採られることは
ある程度は致し方ない。
しかし資本主義にそぐわない官製相場の増殖は、市場を歪め、
様々な形で経済混乱のリスクを高める。

最近の市場では、
「英独が“自国の国債もリスク資産にすべきだ”と主張し始めている」ことが
大きな話題になっている。
「自己資本比率8%」を維持していない銀行は、国際業務ができない。
これまで「国債はリスクゼロ」とされていたことで、
日本の銀行は国債を大量に保有していた。

その国債がリスク資産と見なされれば、自己資本を積み増しする必要があるため、
銀行が一斉に国債売却することが予想される。
売却された国債を最終的に買い取るのが日銀。
政府が発行する新規国債のほぼ全てを購入している日銀は、更に国債を買い増しする…

国債価格が下がれば金利は上昇する。
金利が上昇すれば(せっかく上昇した)株価や不動産が下落する。
つまりは、
官製相場は「一旦崩れたら、もはや崩壊的な状況になる」リスクを含有するのである。

また市場では、アベノミクスを論理的に分析した論文が注目されている。
題して「怠慢局面に入ったアベノミクス」。
興味深いので主たる部分を紹介したい。

物価下落などの「危機に」金融緩和などで「反応」したアベノミクスは、
株価上昇という「改善」を実現した。
しかし現状アベノミクスは改革の減速という「怠慢」段階に入った…

日経平均株価は“大目標”の2万円に到達した。
しかし世界中を高速で行き交う投資マネーは容易に逆回転する。
株価は更に上昇するのか否か。
チャート分析からは「短期は安定的だが、中長期では当面の頭を打った」との結論が
導き出されるが、さて….


2015年04月19日

「人間VSコンピューター」の勝負

相場が膠着し、相場画面を見ていてもしようがない、
でも大事な局面であり画面からは離れられない。
そんな時はどうするか。
自分は「麻雀ゲーム」をすることにしている。
キーボードを常にタッチする必要があり、臨戦感が失われないからである。

“日本最強”と謳われたそのソフトは、実際に麻雀プロと言われる人間も含め、
各種の業界から15人、それに自分を含めた16人による熱戦が繰り広げられる。
「ポン、チー、リーチ、ロン」などの(リアルな)声が発せられ、
多少遅くなろうものなら、「早く打て!」の催促(=罵声)がくる。

その最強リーグ戦で優勝するためには半荘20回の勝負に、
総合点でトップにならなければならない。
徹底的にやっつけられることもあり、頭にきて机を叩いたりする。
いい方を変えれば”脳の活性化にはうってつけのソフト”と言える。

こうした一連の流れの中に「将棋電王戦」がある。
コンピューター将棋ソフト5種とプロ棋士5人が戦う「将棋電王戦」で
プロ棋士が初めて勝利し(勝ち越し=3勝2敗)、大きな話題になっている。

3月14日から京都、高知、函館、奈良、東京と転戦した今回の電王戦。
過去2年の団体戦で敗れ、追い詰められた棋士たちは勝つしかなかった。
将棋連盟は今年出場者5人を選ぶ際「強いこと」だけでなく、
「コンピューターになじみがあり、ソフトを十分に研究できる若い人」を基準にした。

初めて負け越したとはいえ、今回のソフトが弱かったということではない。
電王戦の規定では、棋士が対戦ソフトを事前に借り受け、
練習を積んだ上で本番に臨むことが許されている。
練習段階で、プロの棋士が勝てるのが10回に1回だった。

こうした背景の中で、棋士側が3勝2敗という薄氷の勝利したのは
「これ以上は無理というくらい」準備した結果だった。
「相手はコンピューターだから、
人間同士の勝負における美意識や礼儀を求めてもしようがない」との踏ん切りがあった。

結局、電王戦とは「ソフトと人間のどちらが強いかを決める舞台」ではなく、
「強大なソフトに人間が知恵と工夫で対抗できるかを示す場」だったのである。

こうした「人間VSコンピューターの対決」が極端になっているのが
昨今の金融界である。
千分の一秒単位で反応し、注文を発信する。
そうした“荒業”or“神業”が人間にできるはずがない。
だから金融のガリバーたちは大量の資金を一気に動かし
「質より量=極端に薄い利ザヤでも動かす量が大量になれば相応の利益になる」
との論理をかざして、縦横無尽に金融の現場を荒らしまくっている。

このやり方が正しいのかと問われれば、正しいとは言えないだろう、
「相場が人間の手から離れる」のだから。
「長期的にみれば人間の判断は正しい」と考えてはいる。
しかし「人間は本当に(人間が作った)コンピューターに勝っていけるのだろうか」。
少々不安である。


2015年04月12日

淡々と進められる地方銀行の末期的合併劇

4月6日の日経新聞朝刊一面は「関西・四国に広域地銀」の見出しが躍った。
四国・トモニホールディングスの関西・大正銀行の買収劇だった。

昨年11月の「横浜・東日本銀統合」から以降、
地銀再編のうねりはメガバンクを絡むかたちで加速し始めている。

1990年代の不良債権問題を経て、日本版ビッグバンが標榜され、
都市銀行・信託銀行・長期信用銀行の集約が進み、3メガ銀行や巨大信託銀行が生まれた。
そしてメガバンクは地銀の増資を引き受ける形態で関与を強めてきた。
この構図が(表面的とは言え)地銀同志の再編の進展で変化し始めている。

メガバンクには2013年から適用が始まった国際規制「バーゼル3」の影響がある。
自己資本の充実を厳しく求める内容で、
金融機関同士の株式持ち合いが難しくなっている。
更に今年6月には、
金融庁と東証が定めたコーポレートガバナンス・コード(企業統治方針)の適用も
始まり、持ち合い株に関して経済合理性について説明を求められることになる。
結果的にメガバンクは、(一旦は)所有する関連株式を売却せざるを得ない。

地銀・第二地銀は全国に105行が乱立し、再編は遅れている。
世紀が変わった2000年からの推移をみると、2005年前後は経営の体力がある銀行が、
不良債権に苦しむ銀行と合併・統合する“救済型”が一般的だった。
しかし近年は大型再編こそ乏しかったものの、中堅行が人口減などによる経営環境の
厳しさに危機感を募らせて結集する流れになっている。

日本の金融が3大メガバンク中心になった大きな理由は、
IT機器の爆発的な発展により、
「金融機関が(好むと好まざると)国際競争に晒される」からである。
そして「国際金融(為替)+株式+保険」をも含んだ総合的な金融機関のみが
生き残れる時代となってきたからである。
今後は潤沢な「人的資源+財的資源」をベースに、
「世界の金融市場に対峙できるか」がポイントになってくる。

大胆に言えば、「現代社会において地銀の使命は終わった」と思うしかない。
止めようもない国際金融の大きな変化の中で、
金融庁主導による地銀の大々的な再編は、
最終的に「3大メガバンクによる全地銀の系列化計画」の実施と思えば納得がゆく。

(言い方は少々乱暴だが)
「細かいのをまとめておいて、時期がきたら一網打尽にドカン」。
地銀再編劇は、最終章の「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備・統合」
につながっていくように思う。

「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備・統合」は、
「マイナンバー制度の完成」および「国民の一人一銀行口座」にもつながる。
税収に悩む日本国は、日本国民の資産をガラス張りにしたいのは明白である。

いろいろな理屈をこねながら、法に張り付けた整理・統合は進んでいく。
かくして最終シナリオは着々と完成に近づいている…


2015年04月04日

大塚家具の「親子げんか」

東京・江東区有明にあるIDC(International Design Center)大塚家具。
完成した当初から高級家具を扱うことで有名だった。

市中から従来の家具屋が消えて久しい。
必要に迫られて行ってみたことがある。
まず従来の家具屋とは違う雰囲気だった。
確かに高級品が陳列され、値段も高かった。
単品だけを買うスタンスは余り好まれず、セットで買うよう誘導された。
そして会員になることをしきりに勧められた。
少々しついこい感じだった。次に行こうという気にならなかった。

家具に関しては関心が薄く、詳しく市場調査もしたことがないが、
相対にあるのがニトリと思う。
高級感はないにしても、価格帯がいわゆるリーズナブルで、
とにかく好きに選ばせてくれるのがいい。
特価品も用意されており、“お得感”もある。
“家具のスーパー”といった雰囲気である。

その大塚家具の「父と娘の親子げんか」が注目を集めた。
会員制による高価格販売を掲げる父と、カジュアル路線を志向する娘。
「(家具屋の娘=)かぐや姫の乱」と揶揄された「親子げんか」は、
3月27日の臨時株主総会で、娘(大塚久美子社長)が父(大塚勝久会長)に
“勝利”し、一応の決着を見た。

こうした「親子げんか」が注目されたのは理由があった。
「価格・顧客戦略」と「事業継承の行方」が注視されたからである。
内需企業は「限られた市場を深耕する戦略」を最大の関心事とし、
同族企業は「事業継承の行方に“明日は我が身”」との危機感を募らせたからである。

ここ数年、価格志向が薄れる中で、
顧客獲得の新たな仕組み作りに腐心する企業は多い。
大塚家具の場合、最近勢力を広げているニトリのような幅広い顧客層獲得は
至上命令だった。
会員制による方式は、新設住宅着工数が頭打ちとなる中で、時代にそぐわない
システムになり始めていた。

同族企業は結束力がある一方で、ほころびが出始めるとやっかいなことになる。
互いに批判を繰り返す父と娘の確執は先鋭化し、どちらも引くに引けなくなった。
複数の社外取締役や社外監査役も無力だったために決まったこともすぐに覆される。
企業統治の制度があっても有名無実だった。

最大の争点は「経営を立て直すための健全な企業統治の再構築」には違いない。
経営と資本が一体化した同族企業では常に矛盾を抱える。
一応の決着をみた親子げんかも、根本的な解決にはほど遠い。
それは大塚家具が特異なのではなく、多くの同族企業の抱える深刻な問題ではある。

かくして大塚家具は、娘・久美子氏の社長続投、創業者・父・勝久氏は会長を
退任することになった。
ただ株式の約18%を保有する勝久氏は筆頭株主として残るため、
父と娘の対立の構図は続いていく。
簡単に終わりそうにない。

「親子げんか第二幕」、さしずめ「父の逆襲」の可能性は高いと言わざるを得ない。

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