2015年06月27日

不協和音が出始めた(!?)アベノミクス

6月10日午後の衆院財務金融委員会。
民主党の前原誠司議員に、円の実力や競争力を表す「実質実効レート」が
歴史的な安さになっていることを指摘された黒田東彦・日銀総裁はこう述べた。
「ここから更に円安に振れることは普通考えるとなかなかありそうにない」。
日銀総裁にあるまじき、“(為替動向に言及する)不用意な”発言だった。

相場材料に飢えていた市場は「(黒田総裁の)円安」というキーワードに
過剰反応を示した。
円相場は122円半ばまで2円近く円高が進み、
日経平均も2万円割れ寸前まで急落した。
日銀総裁の発言に市場は敏感に反応した。
市場参加者は「何かあれば日本経済が吹き飛ぶのではないか」との懸念を
持ち続けていることを証明した格好となった。

2012年12月の第二次安倍政権発足以来、株価は高騰し、
市場は沸き立っているかに見える。
アベノミクスの象徴となったのは「黒田日銀総裁人事」だった。
13年3月に就任した黒田総裁は
「異次元緩和」と名付けた量的・質的緩和政策を打ち出した。
日銀がETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を大量に買い、
市場にカネを流通させる仕組みだった。
「黒田バズーカー」と名付けられた手法で株価は短期間で急騰した。

さらに就任から1年半が過ぎた14年10月、
「黒田バズーカー2」と呼ばれる追加緩和策を発表した。
“弾薬”となったのは日本国債だった。
現在日銀による長期国債買い入れ額は80兆円まで拡大。
14年年度末時点で、日銀の保有する日本国債は約269兆円と
過去最大の数字に達している。
ただし「黒田バズーカー2」は官邸には寝耳の水の出来事だった。

「黒田バズーカー2」は
「追加緩和で景気を支える代わりに消費税増税を的確にやってくれ」とする
黒田総裁からの安倍政権へのメッセージだった。

ところが11月18日、安倍晋三首相は消費税増税の延期を発表する。
安倍首相にとっては財政再建は二の次で、
増税を実行して成長を壊せば元も子もないとの考えだった。

大量の国債購入は財政健全化を前提に行われる。
ただ安倍政権歳は歳出削減よりも経済成長に軸足を置いているため、
結果的に「財政赤字を日銀が(自動的に&半永久的に)埋める」パターンを
繰り返す格好になり始めている。

世界の市場では、10年のギリシャ危機で国債が紙くずになることが証明され、
国債を「暴落する可能性のある『リスク資産』として取り扱う」流れに
なりつつある。
先進国主要銀行で構成されるバーゼル銀行監査委員会が、
銀行が保有する国債の損失を厳しく見積もる規制案が提出され、
16年に決定、19年から施行される見通しである。

ムーディーズの評価では日本国債は韓国・中国よりも下で、
チェコやイスラエルと同格。
「先進国で最も危険な国債」との見方をされ始めている。

「日本人が国債を持っている限り暴落しない」との楽観論はあるにはある。
ただアベノミクス=(無理矢理の)株価上昇&過度の円安パターンに
“黄信号”が点灯していることは間違いなさそうである。

2015年06月20日

IT新時代のスポーツ界の行方

世界の金融市場に対峙している」という大前提で、
24時間TVをつけっぱなしにしている。
どこで何が起きるかわからない。地震に備える意味もある。
ある種のBGMである。
真っ暗にし、全く音が消えると、かえって眠れない。
もはや職業病ではある。

こうした状況の中で、必然的に世界のスポーツ(番組)に対峙することになった。
下手な映画やドラマは勿論、特に日本発の“(安直な)どぎつい”お笑い番組は
さすがに耳障りになる。
消去法ながら、スポーツ番組が一番ということになっていった。

21世紀に入って、まずMLB(米大リーグ野球)がごくごく普通になった。
ヤンキースに松井が入団した頃からそれが明確になった。
午前8時からの(東海岸の)ヤンキース戦がメインとなり、
午前11時からは(西海岸の)イチローのマリナーズが写し出され、
自分の生活スタイルは完全に確立した。
午前8時までにとりあえず一仕事終える…

そして4月からは、マスターズを始めとするゴルフのメジャー大会が始まる。
放送は早ければ午前2時頃から始まる。
日本のプレーヤーが予選を通過するか否かのレベルであれば、
そうは気にならなかった。
それが松山英樹のような世界のメジャー大会で優勝も狙える若者が排出するに至って、
おちおちしていられなくなった。

それに加えて錦織圭のような、世界ランキング4位だ、5位だという、
この100年、日本では考えられないテニス選手まで現れた。
国際的なテニスの観戦はとにかく疲れる。
5セットマッチともなると4時間も張り付くことになる。

そしてサッカーである。
女子・なでしこは(まぐれとは言え)世界制覇し、男子もW杯の常連になってくると、
テストマッチさえもが興味が湧く…
国内のJリーグも見ておかねばならない…

そしてまた2カ月に1回は(最近人気急上昇の)大相撲もある…
もはやモンゴルの国技かと思える状態ながら、見過ごせない。
かくして極限では、午前2時頃から午後11時のスポーツ・ニュースまで
20時間以上スポーツ番組漬けになる….

かたや最近、日本のプロ野球離れが盛んに言われている。
解決策として「試合時間を3時間以内にしたらどうだ…」云々。
不振の理由は至って簡単である。
「(民間放送の)CMがやたら多い」
「試合終了まで放映しない」
「(特にセリーグに)スター選手がいない」。
小手先の問題ではない。スポーツのダイナミズムが感じられないのである。

ITの驚異的な進捗は、世界中のあるとあらゆるスポーツの観戦を可能にした。
但し「日本の生活時間帯にない」ことが前提となった。
1970~80年代の巨人軍・王&長嶋を中心にした
「ビールを飲みながら日本のプロ野球を観戦する時代」ではないのである。

FIFA(国際サッカー連盟)の汚職事件が世界中を騒がしている。
過去40年にわたり、膨大な“闇の”カネが動いたのは間違いない。
“巨大産業”となったサッカーの世界的な組織改革は必要だろう。

ただ念頭におかねばならないのは、ITの驚異的な進捗により、
「“清く、正しく、美しく”あるべきスポーツという地球最大のコンテンツ
(=筋書きのないドラマ)は、千億円単位のカネを動かす時代になっている」
ということである。


2015年06月14日

「スポーツのビジネスモデル」を転換できるか

ここ30年、スポーツウェアやシューズはアディダス製を使ってきた。
“3本の斜め線”のロゴをベースに、紺を主体にしたアディダスの製品は
とにかく丈夫だったし、飽きがこなかった。
15年~20年前に買ったウェアを今でも使用している。

アディダスの存在を知ったのは
皇帝と呼ばれたベッケンバウワー(西独=当時)の活躍したW杯サッカーだった。
サッカー熱が現在のように熱狂的でない30年以上前では、
サッカーのアディダス製品そのものが“時代の先端を行っている”ように映った。

民間コンサルティング会社の調査によると、
13年の世界のスポーツ全体の市場規模(チケット販売、メディア関係の権利料、
スポンサー契約料の合計)は800億㌦=約10兆円で、
うちサッカーは4割強の350億㌦=4兆2千億円と試算している。

そしてサッカーを仕切るのは国際サッカー連盟(FIFA)。
FIFAの「ビジネスモデル」は
4年に一度のワールドカップ(W杯)を中心に形成されてきた。
ちなみに2011年からブラジル大会が開かれた14年までのFIFAの収入は
約57億㌦=約7100億円。

現代社会で“世界最大規模のスポーツ”となったサッカーは、
グローバル展開をする企業にとっては格好の宣伝材料にもなってきた。
スポーツ用品に関しては、前述の独・アディダスが先頭を切ったが、
米ナイキも94年から本格参戦、猛追している。

スポーツ用品のアディダス、ナイキだけでなく、
FIFA公式イベントのロゴを使える格上のスポンサーシップ契約を締結した、
米ビザ、米コカコーラ、韓国・現代自動車を頂点に、
あらゆるジャンルの世界的な有名企業が参戦している。

こうした“膨大なカネが絡む”組織に対し米連邦捜査局(FBI)が、
18年のロシア大会、22年のカタール大会に関してFIFAの幹部に贈収賄が
あったとして、FIFA本部を家宅捜査、電子データや文書などを押収、
捜査を開始したことがとが明らかになった。

この捜査を受け、6月2日、FIFA・ブラッター会長が辞任を表明した。
同氏が初めて選任されたのが1998年。
また同氏は74年からFIFAのトップに立ち続けたアベランジェ前会長を事務総長と
して支え続けた身であり、その指示基盤を受け継いで会長に就いた。
結局FIFAは、40年以上にわたりアベランジェ・ブラッター体制に支配されてきた。

そして理事会が25人のメンバー構成であることも問題視されている。
招致する側にとっては買収工作がし易く、一部幹部に権力が集中する構造は
“不正の温床”と言われても致し方ない。
理事に定年制、再任制限がないことも前近代的で、
それが利権をむさぼる体質となっているのも否めない。

ITの驚異的な進捗は、“清く正しく美しく”あるべきスポーツを、
膨大なカネが絡む巨大なビジネスの場にしてしまった。
今後、どのように正常化・公平化していくか。
けだし難問である。
何故なら「“人間の(カネへの)欲望”に限界はない」からである。


2015年06月06日

待たれる日本の商品先物新時代

商品先物取引の勧誘規制がこの6月から一部緩和された。
FX(外国為替証拠金取引)などの金融先物取引経験者への電話・訪問勧誘が
できるようになる他、
「65歳未満」「年金生活者ではない」「年収800万以上か金融資産2000万以上」
の未経験者にも同様の勧誘ができるようになった。

2013年2月12日には工業品と農産物の商品先物を取引をする「東京商品取引所」
が発足した。
しかし個人投資家への営業規制などが逆風となり、取引高は急激に落ち込み、
先物会社(=商品取引員)の廃業が相次いだ。

2011年には72年振りとなるコメの上場を果たした。
しかし期待されたほどの起爆剤にならず、大きな効果は出せなかった。
00年には東京工業品取引所(東工取)の売買高は世界第三位であったが、
その後はジリ貧状態となっている。

また一連の改革論議の中で、証券マネーの呼び込みによる市場再生の切り札と
されてきた「総合取引所」への合流は、商品特有の現物受け渡しの問題があり、
実現に至っていない。
異種業種の合併は簡単ではなかった。

一方、世界を見渡せば、商品先物市場は活況で、00年以降、投資ブームや資源高を
背景に、売買高は10年で9倍以上に膨らんでいる。
投機マネーの流入は勿論、資源会社、航空会社、農家などの実需家も参入して、
産業インフラの機能を活用している。

では日本はどうかと言えば、
市場参加者名簿には住友金属鉱山、ブリジストン、横浜ゴムなど、錚々たる企業が
名を連ねているが、売買はほとんどない。
市場の厚みがないのが最大のネックとなっている。

資源価格の乱高下や食品需給の激変で、素材や食品企業を取り巻く経営環境は厳しい。
ヘッジ(保険つなぎ)取引のほか、資源価格の形成や資産運用の場としての
先物は重要な位置にはいる。

ではなぜ日本の土壌には商品先物市場が健全に定着しないのか。
それは戦後生まれた先物会社(=商品取引員)の強引な営業手法、
あるいは「赤いダイヤ」として一世を風靡した小豆を代表例とする
相場手法(仕手戦)の荒っぽい雰囲気が、投資家離れを起こしたのは
ご存じの通りである。

そして日本全体が、商品先物業界・経営者の“(日本独特の)先物屋スプリット”も
骨身に染みて嫌気さしている。
しかし、IT時代が進捗していく中で、従来の経営者は次第に姿を消し、
営業マンが介在する従来の営業スタイルも完全に消滅した。

商品先物市場は現代の先進国には必須である。
FX取引が予想以上に浸透している現在、たとえ日本主導型でなくても、
海外主導型の商品先物市場が根付くのも時間の問題だろう。
敢えて言えば、従来型の「円建て」に拘る必要もない。

とりあえず商品先物は“諸悪の根源”ではない。
2020年あたりまでには生まれ変わった商品市場が出来上がっているものと思われる。
これも時代の要請である。

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