2015年07月25日

東芝の組織的利益操作に見る日本の企業風土

1990年代から本格的に始まるPC時代、
自分は一貫して東芝製ダイナブックを使用してきた。
正確に数えてはいないが、買い替えた台数は10台を超える。
ちなみに本文もダイナブックを使用している。
次々に発売される最新式(!?)を言われるがままに購入してきた。
値段は20万円前後だったと思う。
今思えば高い買い物を続けてきたことにはなる。

90年前後から始まるPC戦争は、
米国IBM、アップル、日本NEC、パナソニック、ソニー、富士通など
有数のメーカーが激しい競争を繰り返した。
一貫して東芝製を使用した理由は、キータッチがIBMとほぼ同じの東芝製が
一番都合がよかった。
メカに弱く、キータッチの変更に不慣れな自分には、
熟練には余計な時間がかかったからである。

東芝は140年の歴史を持つ。
家電製品、例えば洗濯機、冷蔵庫などの白物の国内第一号機は全て東芝だった。
21世紀に入り、PCやTV事業の不振で、ソニー、パナソニック、シャープなどが
軒並み赤字経営をしてきた中で唯一、東芝だけが黒字経営を続けてきた。

7月20日、その東芝に、組織的利益操作をしてきたことが明らかになった。
2008年度から14年度4月~12月期まで計1562億円に上る。
結局、ベースは赤字だった…

「上司の意向に逆らうこのできない企業風土が存在した」。
第三者委員会の報告書では上意下達が厳しい企業体質を指摘している。
「ルールに基づく会計処理よりも、上司の承認を得らなければ実行できないという
事実のルールが存在した」
「適切な会計処理に向けた意識が欠如していた」

企業統治指針(コーポレートカバナンス・コード)が策定され、
今年は「企業統治元年」と言われている。
トップが成長の目標を掲げ、社員にハッパをかけるのは自然な行為である。
だが行き過ぎれば組織の足元は揺らぐ。
経営者には舵取りが難しい時代である。

高度成長期の日本には、世界的な企業が次々と生まれる荒々しさや若さがあった。
製造業、輸出業が日本を引っ張った。
そして伝説的な経営者がいた時代だった。
当初は通産省(現経済産業省)が産業政策としてガバナンスをきかせ、
後半は金融機関が融資などを通してガバナンスをきかせた。

しかしそうした製造業の役割は中国にとって代わられた。
21世紀になって、
米マイクロソフトやグーグルのような知識集約型の企業が求められた。
だが残念ながら日本からは出ていない。
結局、画期的なイノベーションを起こすためには、ガバナンスと企業を伸ばす
本物の経営者が結びつかなければならない。

東芝はリーマン以前には7兆円超だった売上高が5兆円後半まで落ち込んだ。
もうひとつの柱して期待された原子力事業も
東日本大震災以降、国内外で原発新設計画が凍結され、先行き不透明になった。
「将来の成長事業より目先の利益」の風潮が広がる一方だった。

スマホが世の中を席巻し、もはやPCの時代ではないと言われる。
所詮ダイナブックも消え去る運命かもしれない。
アナログ型人間の多難な時代が続いていく…

ただダイナブックを通して製品を信じ、馴染み、使い続けてきた東芝フアンは、
生まれ変わるであろう新生・東芝に期待したい。


2015年07月20日

中国という“歪な(世界の)爆薬庫”

東京・銀座・中央通り。
銀座1丁目から8丁目まで約2㌔の日本最大のメインストリート。
その日本最大の繁華街を我が物顔に闊歩するのは、
5年前まであたりは着飾った日本の女性たちが中心だった。
バチバチに着飾ってソックリ返って闊歩する姿は日本の平和の象徴だった。
ところがここ数年、中国の(旅行カバンの)ガラガラ族に占拠されている。

“爆買い”もここ数年、日本の市場を賑わした。
(尋常でない)異常な買い方をする。
財力がある証拠であり、“躍進・中国の尖兵”のようにも見えた。
ところがここ2週間ばかり、ガラガラ族が一気に消えた。
寂しい感がしないでもない。だが何か変だ…

7月8日、
上海株式市場の代表的な株価指数である上海総合指数が一時8%の急落となった。

とりあえず「上海総合指数」について簡単に説明したい。
上海総合指数は1991年7月15日から正式発表が始まった。
上海株は中国人のみが投資できる人民元建てA株と、
外国人も投資できる米ドル建てのB株に分かれている。
上海総合指数はA株とB株双方の銘柄を対象としており、
上海株式市場全体の値動きを示している。

上海総合指数は90年12月19日の株価を100として計算する。
これまでの最高値は2007年10月16日につけた6124。
歴史的に急上昇と急落を繰り返しており、
最高値をつけた1年後08年10月16日には1909まで下落している。

世界取引所連盟(WFE)によると、
上海市場の時価総額は5月末時点で5兆9千億㌦(約720兆円)。
東京市場(5兆㌦)を上回り、米NY、米ナスダックに次ぐ世界第3位。

中国経済の減速にもかかわらず、
昨年夏から今年6月まで上海総合指数は2.5倍になった。
株価が急上昇した背景には、中国政府の「株高政策」があった。

習近平指導部が発した厳しい倹約令の影響で、
国内総生産(GDP)の35%を占める個人消費弱含んでいた。
政府は国営メディアなどを使って国民を煽り、株高を導いた。
消費を底上げする狙いだった。

個人が貯めこむ資金を株式市場に流し込み、
企業の資金調達を後押しするだけでなく、
反腐敗運動で振るわない個人消費を底上げする…
もはや完璧な、典型的な“官製相場”だった。

だが官製相場は突然崩壊し始めた。
あからさまのPKO(株価維持策)や銘柄の売買停止など、
市場としての秩序を崩す(戦略とは言えない)戦略で株価の下落は止まった。

「資本流出規制がある中国株式市場は世界から隔離された市場」
「従って世界への市場への影響は限定的」
との考え方があるにはある。
しかし世界第三位にまで大きくなった市場動向は、アジアは勿論、
世界市場にも大きな影響を与えると考えるのが自然だろう。

「アジア制覇&世界制覇」に向け、
アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の動きも注目された中国。
世界の大国・アメリカを意識した動きの目立つ中国ではある。

いかに取り繕うとも、
中国の“歪な(世界の)爆薬庫”の位置付けは不変と思う。
そうしてはならない国に、余計な力をつけてしまった…

2015年07月12日

整備費3000億円は是は非か

そもそも論から言えば、国立競技場を新築する必要があったのか。
1964年の東京五輪に向けて建設された国立競技場は50年を経過し、
老朽化から改修の必要が不可避だったのかもしれない。
だが、国立競技場・神宮球場・秩父宮ラグビー場の3点セットは“神宮の森”の
雰囲気に完全に馴染み、首都・東京の(日本的な)テーマパークだった。

7月7日、
2020年の東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の整備主体で
ある日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議は、
整備費2520億円の工事計画を了承した。
屋根に特殊な構造を採用したこと等で、昨年5月時点から約900億円増えた。
大会後に先送りした設備等も含めると総整備費は3000億円になる。

昨年5月の基本設計時点の整備費は1625億円。
ここから開閉式屋根と可動席分の約260億円を除いた1365億円と比較すると、
整備費は1100億円膨らんだ勘定となる。
要因はキールアーチなどの建設の特殊技術による負担増が765億円、
建築資材や人件費の高騰分が350億円、消費税分が40億円と試算されている。

新国立競技場を巡ってはJSCが12年にデザインの国際コンクールを実施した際、
整備費を1300億円と想定、
イラク出身建築家・ザハ・ハディド氏のデザインが採用された。
その後13年のJSCの試算で3000億円に達することが判明、
昨年5月時点で1625億円まで圧縮した。
その後ゼネコンを交えた精査したところ3000億円超になることが判明した。
もはや二転三転の“何が正しいのか分からない”世界である。

素人目には今回の(奇抜な)デザインの良否は分からない。
確かに今回の五輪招致の目玉となった点は否めないが、
果たして神宮の森にマッチするのか否か。
完成後の年間維持費も年間45億円。
その経費をカバーできるだけのイベントが開催できるか否か。

こうしたギクシャク計画の一方で、
「江戸城天守を再建する会」の活動も話題になっている。

江戸城天守は計3回建造された。
初代将軍家康、2代秀忠、3代家光まで代替わりごとに建て直された。
1657年の明暦の大火以降は再建されず、今日に至る。

現在、江戸城本丸は皇居となり、高さ11メートル、東西41メートル、
南北45メートルの天守台(石垣を積んだ天守の台座)は展望台として
公開されている。
今回の復元計画では天守台の上に45メートルの天守を載せる。
これは現在最大の姫路城の32メートル、大阪城の38メートルを上回る
日本最大のものとなる。建造費は350億円。

新国立競技場計画の超未来的建築に比べ、
江戸城天守は「世界史上でも最大規模の木造建築」であり、
「東京にこれ以上ふさわしいシンボルはない」ものと思われる。

「鳥の巣」と呼ばれた北京五輪の競技場(9万人収容)は約500億円、
ロンドン五輪の競技場(8万人収容)は900億円だったとされている。
今回の新国立競技場計画の“桁外れ”の費用を巡るドタバタを見るにつけ、
「ついでに江戸城天守もやってしまえば?」
と思うのはヤケッパチ過ぎるだろうか。

「どうせ公的な大規模建築にはゼネコンと政治家の癒着が日本の定番」。
「裏でまたドス黒いカネが動く…ならば…」
考え過ぎだろうか??

2015年07月04日

ギリシャ問題の最大争点は何か

ギリシャ問題が世界を騒がしている。
6月30日に期限を迎えた国際通貨基金(IMF)の債務を
返済できなくなったからである。
「ギリシャの債務不履行(デフォルト)が世界の金融市場を破綻に向かわせる
のではないか」
との懸念があるのは否めない。

確かに一連の報道は世界の株価の下落を招いた。
ただ6月30日以降、一応の平静を取り戻している。
ポイントがいくつかある。

3月末でのギリシャ政府の公的債務は3120億ユーロ(約40兆円)。
日本の1000兆円等に比較すれば問題にならない(!?)額である。
そしてこのうち公的部門向けの債務が全体の8割を占める。
42%のシェアで最大の債権者となっているのが、EUがユーロ圏の財政支援を目的と
して設立した・欧州金融安定基金(EFSF)で1310億ユーロ。

また欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債は
全体の9%にあたる270億ユーロ。
民間が抱える国債は12%にあたる390億㌦に留まる。

前回のギリシャ危機(10年以降)で築かれた「防火壁=公的部門への資金転換」が
キッチリ機能している。
要は「ギリシャ破綻が民間部門に端を発し、世界的に大きく波及する」リスクが
小さい点は特筆に値する。

第二にユーロ圏では「ギリシャでのユーロ使用禁止」など、
ギリシャの「ユーロ離脱」は前提にしていない。
仮にギリシャがデフォルト状態に陥った場合でも、
ユーロ圏に残したままで対応することを想定している。

そして第三に、世界の金融市場は、
国際通貨基金(IMF)は通常の債権者とは異なるものとして位置付けている。
つまり「IMFからの支援返済の遅れ」は国債のデフォルトとは区別される。

では何が大きな問題なのか。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるギリシャの混乱は
この地域の安全保障問題に直結する。
ウクライナ問題を巡り米欧への対抗姿勢を鮮明にするロシアの他、
中国もギリシャの急接近している。
ギリシャと欧州連合(EU)の亀裂が更に深まれば、
戦略バランスが崩れる可能性が出てくる。

オバマ米政権はこの数カ月、EUに対して、
ギリシャとの交渉促進を強く働きかけてきた。
ギリシャは、米国と旧ソ連を軸とする東西冷戦時代から戦略上の要衝と
して機能してきた経緯がある。
NATOはギリシャ・クレタ島に軍事基地を置いている。

結局、ロシアのギリシャ接近は地中海への進出を視野に入れた戦略の一環である。
また中国についても全く同じ発想。
中国とロシアは今年5月、地中海で初めて合同軍事演習を実施している。

「米欧VS中ロの力関係」の狭間の中で、
ギリシャの曖昧なずる賢いスタンスや、わきの甘い緩い国民性は許容はできない。
しかし全体像を俯瞰して考えれば、
公的債務40兆円程度で、人口1千万人程度の小国の破綻が、
化け物のように巨大化した世界の金融市場を混乱に陥れる可能性は極めて薄い。

大山鳴動して鼠一匹。
ギリシャの国家破綻問題など、“些少なもの”と捉えるしかないようである。

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