2016年02月27日

打つ手なし。彷徨する世界経済

マイナス金利??? 
クロダノミクス??? 
現世界は経済理論の実験場か???

何かおかしい。
経済が歪んで不安定だ。
そういった違和感は誰もが感じておられると思う。
それでは何が根幹の問題なのだろうか。
今更ながらとは思うが、まずこの20年の経済危機をなぞることから始めてみたい。

「世界経済の危機」という表現がされたのは、
1997年の「アジア通貨危機」がこの20年で最初だった。
ヘッジファンドを中心とした短期資金の流出で、
アジア新興国の通貨・株価が急落した。
このアジア通貨危機は、タイ・インドネシア・韓国がIMFの管理下に入り、
域内での資金融通の枠組みが整理されたことで収まった。

そして2008年のリーマン・ショック。
今更説明するまでもないが、米証券大手のリーマン・ブラザーズが破綻したこと
による世界的な混乱である。
FRBは量的緩和・ゼロ金利政策を導入し、金融機関に公的資金を資本注入する
枠組みが整備された。
以降は金融再編の動きが加速していくことになる。

2010年からは欧州債務危機が勃発する。
ギリシャの債務隠しをきっかけとしてユーロ相場が急落し、
南欧諸国を中心に財政危機が拡大した。
EUとIMFがギリシャ、アイルランドなどの財政支援し、
欧州中銀は量的緩和が拡大、マイナス金利が導入されるに至る。
だが欧州債務危機は収まったとは言えず、現在も継続している。

そして2016年初から始まった世界的な株式急落は、
新たな経済危機と表現するしかない状況になっている。
「市場との対話に不慣れな国家資本主義の中国が、
世界の近代金融に(複雑に)絡み合っている」
という点が、これまでと違う“新種の混乱”を巻き起こしている。

米国の約3分の2の経済規模という大きさと、
手荒い為替介入や朝令暮改の市場対応策が混乱を深めている。
金融市場の動きを力づくで抑え込もう、
あるいはできるとする中国が絡むことによって、
従来のような政策協調も困難を極めている。

そして、未曽有の原油安も世界経済に大きな影響を与えている。
資源安は資源輸入国の消費を刺激し、これまでは世界経済にプラスに働いてきた。
しかし資源収入に依存する新興国の存在が高まり、
その新興国の「資産売却=株式売却」の流れが明確になって世界は新たな局面に
入っている。

かって中国の雄・鄧小平は「可能なものから先に豊かになれ」とする、
経済成長を最優先する「先富論」を唱えた。
そしてこの先富論は「先に豊かになった者は途上の者を助けよ」と続いていく。
が、「途上の者を助けよ」という意味のはき違えが目立ち、
世界経済における中国のポジションが上がれば上がるほど
世界経済の混乱度が増大している。

リーマン・ショック直後に「米4兆㌦、中国4兆元」という
史上最大規模のカンフル剤が打たれた。
欧米の先進国が手詰まりの中、中国という異質な国が絡むことによって、
そのカンフル剤の後始末に立ちすくんでいる。

クラッシュ近しの感がしてならない。


2016年02月20日

目のつけどころがシャープでしょ?

学生時代の友人の話。
九州出身で柔道一直線。
中肉中背だが、九州男児はかくやの豪放磊落な性格。
そしてその性格とは真逆(!?)と思われるクラシックの熱狂的ファン。
中野にあるクラッシク専門喫茶に頻繁に出入りしていた。
(人のことをとやかく言えないが)要は変わったマニアックなヤツだった。

何故その話から始めたかと言えば、
情報が昔の話で断片的なので正確さに欠くが、
どうやらその友人の遠縁に、シャープの役員クラスの方がいたらしい。
なにかにつけてその遠縁の方の優秀さや、日本の弱電業界の企業としての強さを
披露してた(ような気がする)。
で、就職先が東芝。
結婚式にも呼ばれ出席したが前途洋々、輝いていた。
1970年代の日本の弱電業界の“黄金の日々”だった。

今月に入って、シャープが台湾の鴻海(以下ホンハイ)精密工業の買収提案を
受け入れる態勢に入ったとの報道が話題になっている。
最近の日本の弱電業界の惨憺たる状態を見るにつけ、
今は疎遠になったその友人のことを思い出す。

このホンハイは、スマートフォン(スマホ)や薄型テレビなどの電子機器を
受託生産する「EMS」と呼ばれる業態で世界最大手。
2014年の売上高は約15兆円。
最近は中国本土に建設した工場の人件費の拡大で収益が圧迫され、
下請けからの脱却を模索してきた。
シャープ買収は自社ブランドビジネスへの進出を意味することになる。

なぜ日本の有数の優良企業だったシャープが、外資に、
しかもアジア系振興企業に“身売り”されるところまで追いつめられたのか。
危機の直接の引き金は液晶投資の失敗だった。
加えて、経営危機発覚後の経営陣の「無作為」も大きかった。

同社が3760億円の最終赤字に転落した2012年3月期には、
ソニーも、パナソニックも巨額の赤字を計上している。
その後両社は経営改革を進め何とか業績を立ち直したが、
シャープはいつまでたっても危機モードを脱却できなかった。

業績が悪くなると希望退職や本社ビルの売却など、
“対症療法”的なリストラを打ち出すだけで、
生き残りに向けてどんな会社に変わるのか、
大きな方向感が示されることはなかった。
結局は抜本的な施策が練られることがなかったのである。

業績が悪くなれば悪しく言われるのは世の常。
シャープには「けったいな文化」があったとされる。
「社外の顧客と打ち合わせ中でも、上司に呼ばれると、顧客をほったらかして
飛んで行く」。
事実とすれば、それは“けったい”ではなく、異常である。

ここまでシャープの再建を指導してきた日本の産業革新機構の再生案は
「事業部ごとの切り売り・解体」を基本にしていた。
それに比べればホンハイの「一体再生」「ブランドも残す」という再生案は
余りに寛容である。
だが本当に実現するのか。

言い方に語弊あり、少々キツイかもしれないが、
「技術国・ニッポンを代表する有名企業がアジアの新興企業の軍門に下るのか?」。
至極残念である。
女優・吉永小百合のCMがいまだに鮮やかに思い浮かぶ。
「目のつけどころがシャープでしょ?」。


2016年02月13日

伝統的・古典的経済理論の限界

グーロバルな株安連鎖が続き、世界の株式時価総額が急減している。
直近での推計は約56兆㌦(約6400兆円)となり、
過去最大だった2015年5月末に比べて14兆㌦(1600兆円)減少した。
この9カ月で2割減少したことになる。

日経平均株価も急激な下落となり、今年の下落率は10日で17%に達した。
特筆すべきは2月10日の終値の15,713円は、
「アベノミクス相場」の平均買いコストを割り込んだ点であろう。
この「アベノミクス相場」の起点は、
野田佳彦首相(当時)が衆院解散した2014年11月24日。
そこから2016年2月10日まで3年3カ月の日経平均株価を平均すると
15,860円になる。

昨夏までの上昇は、円高や東日本大震災で割安に放置された日本株が
正常な評価をされた側面が強い。
日銀の異次元緩和による円安や、企業統治改革の導入も
海外勢の投資を呼び込んだ。
日銀の、乾坤一擲、マイナス金利政策発直後の大混乱だけに
皮肉と言えば皮肉である。

黒田日銀総裁の考え方は、
「マイナス金利を嫌って、銀行が融資を積極的に増やすようになる」
そして「ポートフォリオ・リバランス(運用資産の組み換え)が高まる」
しかしそうした効果は、
人々が景気や物価の先行きに期待感を抱いている時に限られている。

そしてまた、
日銀がマイナス金利を導入したにもかかわらず円高が急激に進行した。
先行き不安が高まる中での金利低下はかえって不安を煽り、
比較的安定している日本円に転換する動きが強まった。
日銀の金融緩和政策が限界に近いことを証明した格好となった。

リーマン・ショックから8年半。
先進各国は0.5%レベルの低金利政策を継続してきた。
「不況時には金融緩和」。
これが近代の資本主義経済社会の鉄則だった。
だがその金融緩和も、マイナス金利という異常事態にまで突入した結果、
次に打つ手がなくなり始めている。

リーマン・ショック後の世界経済の低迷時、際立ったのは中国だった。
4兆元という巨額な経済対策を実行して、見事な景気回復を遂げた。
誰もが感じた、
「民主的な手続きを重視していたらこれだけ大胆な手は打てない」と。

だがその4兆元の経済対策がバブルを生み、
そして国営企業の過剰設備や地方政府の過剰債務が後遺症と残るようになって、
国家資本主義への称賛は急速に色あせていった。
その主役はまたもや中国であり、今や中国が世界最大のリスクとなりつつある。

今年初めからの世界市場の動揺も、
中国当局の拙劣な対応に起因する部分が少なくない。
国家資本主義は剛腕を振るうのは得意でも、
市場との繊細な対話は苦手なのは明白である。

ここにきて、
黒田日銀総裁の掲げる金融緩和を最大のテーマとする施策(=クロダノミクス)
を疑問視する風潮が広まっている。
しかし黒田総裁を責めても致し方ないのかもしれない。
20世紀を通して世界経済を席捲した、
まず“不変的なもの”を設定して論理を展開する、
伝統的で古典的な経済学の限界なのだろう。
考えるまでもなく、“はやぶさ”のような壮大な宇宙探検が普通になった現代に、
不変的なものなど存在しない。

かくして絶対的な解決策が見つからないまま、世界は不安の連鎖の中にいる。


2016年02月06日

アクセルとブレーキを同時に踏んだらどうなるか

1月29日、
日銀は、同日開催された金融政策決定会合で、
マイナス金利政策の導入を、5対4の僅差で決定したと発表した。
2013年4月に導入した量的・質的金融緩和(異次元緩和)政策は
大きな効果が出ないまま、最後の切り札を切った格好となった。

マイナス金利政策を定義すれば
「中央銀行が政策金利をゼロ%よりも低い水準にする政策」である。
民間銀行が中央銀行に預け入れる預金の金利をマイナスにするのが一般的。
民間銀行は日銀に資金を預けると金利を支払うことになるため、
民間企業への融資や有価証券の購入に資金を振り向ける効果を見込む。

今回の政策の背景にあるのは
2014年6月、欧州中央銀行(ECB)が導入したマイナス金利政策である。
対ユーロでの自国通貨高を抑え込もうと、スイスやデンマーク、スウーェデン
も同調した。

かくして欧州では、マイナス金利政策をベースに、
ポルトガルやスペイン、イタリアではマイナス金利の住宅ローンが
登場して話題になった。
ただ一方で、資産を減らしたくない個人や企業間で現金志向が拡大し始めている。
端的に言えば、マイナス金利が続けば“タンス預金が増える”状態になっている。

脱デフレのためなら打てる手は何でも打つ。
劇薬の投与もいとわない。なぜマイナス金利が劇薬なのか。
「借りたい人と貸したい人がいて、借りたい人が代価を払って借りる」約束を、
「借りる人が代価を受け取る」とする、資本の論理から外れる方式だからである。
結局黒田東彦日銀総裁は、アクセル(金融緩和)とブレーキ(マイナス金利)を
同時に踏んだことになる。

当然ながらマイナス金利は「もろ刃の剣」である。
金利低下で銀行の収益力が悪化するため、銀行が積極的にリスクを採れず
中小企業向け融資が減る可能性を含んでいる。
それ以上に企業自体が借りたがっていないのが現実である。

特に地方では、海外進出を志向する企業は少なく、人口減で売り上げ伸びない。
結局マイナス金利の実施でコストを確保するために預金金利を下げるしかない。
ところが預金流出が怖くてそれもできない。
つまるところ「口座管理料手数料」という名目で預金者に請求するしかない。

貸出先がなく、日銀の口座に溜まった金額は、昨年末で230兆円。
そして無理矢理貸し付けた不動産向け融資残高は昨年9月末で83兆円。
平成バブル時を上回った。

今回のマイナス金利政策の目的はデフレ脱却だけでなく、
「株安・円高」を止めようとする狙いがあったに違いない。
マイナス金利政策が発表された時点で、円は対ドルで121円台、
日経平均株価も乱高下した挙句、2日間で823円上昇した。
しかしその効果も、ほんの“三日天下”だった。
年金資金を大量に流入した安倍内閣の最大の焦点・株価の頭は
予想以上に重かった。
結果論から言えば、今回のマイナス金利政策は全く効果がなかったことになる。

今年に入っての国際金融不安は、中国経済の失速、原油安、
米利上げによる新興国からの資金引き揚げに根差している。
特に中国からの資本流出は、人民元の下落と株式の動揺を通じて、
世界経済を揺さぶる。
そして最近、
「無敗の帝王・ジョージ・ソロス、中国売り=元売りで出動」の噂も飛び交う。
ソロスの戦法は、ポジションを構築した上で、おもむろにマスコミに露出する。
中国が混乱すればどうなるか?…想像するまでもないだろう。

すべからく、リーマン・ショック以来のクラッシュの再来を予感させる展開である。


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