2016年04月30日

「パナマ文書」が暴く“不都合な事実”

約20年振りに“タックスヘイブン(租税回避地)”という単語が
マスコミを賑わせている。
中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」で、
世界の首脳らによるタックスヘイブンの利用実体が暴露されたからである。

名指しされたのは英国のキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領、
中国の習近平・国家主席等々、錚々たるメンバーが名を連ねた。
強固な民主主義国家では政権そのものは揺るがないだろうが、
ロシアや中国といった独裁的国家におけるトップの“不祥事”は
後々影響を残しそうな気配となっている。

日本で“タックスヘイブン”がクローズアップされたのは、“原則自由”の時代、
日本の円が国際通貨として認知され始めた1980年~1990年代だった。
世界の金融市場はグローバルにつながる中、税制は国ごとに異なる。
ならば合法的に節税できるのにしないのは責任放棄である。
こうした(政府公認の)金融国際化のためとする“正当な”説明の下で、
猫も杓子も、取り残されてはならずと、イケイケムードとなった。

だがやがて、この“原則自由”の考え方が曲解され、
マネーロンダリング(資金洗浄)に使われるようになって、
話がややこしくなってくる。
複数のタックスヘイブンを組み合わせると、
捜査当局による犯罪の証拠集めや資産凍結が非常に難しくなるからである。

例えば、詐欺や麻薬売買で儲けた資金を日本の銀行口座にプールしたとすれば、
見つけるのは容易である。
だがタックスヘイブンに開設したペーパーカンパニーの口座に資金を移せば、
日本の司法当局は現地の警察に捜査依頼をしなければならない。

回答はすぐに来るはずもなく、大概が半年以上が必要である。
そして「そのペーパーカンパニーの持ち株会社は別のタックスヘイブンにある」
という回答があった場合、今度は別の警察に捜査依頼をする必要が出てくる。
かくしてあっという間に2年程度の時間がかかることになる。
そしてまた、犯罪者が捜査の動きに気付けば、
警察よりも常に一歩先の資金を動かせる。

国境を越えた司法の協力はハードルが高い。
各国での犯罪の定義や捜査の進め方が異なるからである。
そしてプライバシーの保護の観点からも情報の共有が難しくなっている。
最善策はオフショア企業の実質的なオーナーや利用者が分かる中央登録機関を
設置することだが、各国の国内法の整備の必要あり、実現は容易ではない。

かくして現在の日本では“原則自由”から“原則禁止”の時代に逆戻りしている。
モノの売買の裏付けのない海外への資金の移動は、ほぼ不可能になっている。
ロンダリングリスクがある以上、当たり前と言えば当たり前の措置ではある。

原理・原則論から言えば、
世界各国の税率がどこも同じなら租税回避の動きは起こらない。
税率の違いがあればこそ、国際的な資金の流れが歪むのである。

かくして、膨大な借金を抱え、国民の資産を当てにする日本政府が、
的確な方法がないまま、“(ガチガチの)守りに入る”のもまた致し方ない。
とは言え、真っ当な国民は右往左往するばかりである。

2016年04月23日

カリスマ経営者の退任に見る流通業界の転換期

自分の住まいする佃地区では、
大江戸線・有楽町線・月島駅から半径500メートル以内に
コンビニが6店舗、スーパー5店舗が乱立する。
そしてタクシーで5分、自転車で10分以内には、
イトーヨーカー堂、イオン、赤札堂の総合スーパーや、
ユニクロ、東急ハンズが店舗を構える豊洲ららぽーと、
そして東京ドーム1.5個分の面積を誇る日用品雑貨専門店もある。

コンビニに関してはどうしても“使い勝手”を中心に選択することに
なってしまうが、セブンイレブンは群を抜いていると思う。
店員の客扱いが丁寧で正確であり、公共料金の支払い等は
どうしてもセブンイレブンに行く結果になった。

だがセブンイレブン系列のイトーヨーカ堂はどうか。
この4月から始まったNHKの朝の連ドラ「とと姉ちゃん」の舞台に
なっている深川・木場の跡地を再開発した江東区・木場のイトーヨーカ堂は、
使い勝手はイマイチのような気がする。

種々のファストフードが勢揃いし、和洋中華イタリアンのレストランや
映画館まであり、まずは一大テーマパークである。
ならばそこで食事をし、食料品を買い、衣料や日常雑貨まで全て賄うか?
と問われれば、顧客の90%以上は「No!」と言うだろう。

衣料品から住居関連品まで揃えた総合スーパーはこの10年で
急速に競争力を失った。
ユニクロがその尖兵であり、
ネット通販の台頭もそうした動きに拍車をかけている。
総合スーパーのテーマ(品揃え)が曖昧で、専門店にはかなわないからである。

4月7日、セブン&アイ・HDの鈴木敏文会長が会長を退任、
経営から退く意向を表明し、19日の取締役会で承認された。
83歳。
コンビニエンスストアを日本に根付かせた「セブンイレブンの天皇」と称された
時代の寵児の退任劇だった。
1963年、現在のイトーヨーカー堂に入社した同氏は、
74年にセブンイレブン1号店ををオープンさせ、
コンビニトップを独走する一大チェーンと育て上げた。
92年にヨーカ堂社長に就任すると百貨店やスーパーなどの多くの業種を
まとめ上げ、2005年にはセブン&アイ・HDを設立し、会長に就任した。
ここ最近、退任を巡って内部の抗争があったことが大々的に報じられている。

セブン&アイ・HDは、コンビニを軸に激変する消費環境に対応してきた。
それが高度成長期の成功モデルであった「総合スーパー(GMS)」に拘って
敗れ去っていった、ダイエー、マイカル、長崎屋、ヤオハンジャパンなどとの
違いだった。

小売業界は創業者の強烈なリーダーシップのもとで、
全社一丸となって事業を推進することが多かった。
重大な意思決定は創業者が下すため、経営という観点を持つ後継者が育ち難い。
意思決定の積み重ねで人材が育っていく。結局、その環境が作れなかった。

流通のガリバー・セブンイレブンもこれまでか、の感がする展開である。
流通業も、強いリーダーシップと経営の透明性を両立させるモデルを探る時期が
到来したようである。


2016年04月17日

「世界で通用する」ことと「世界で勝つ」ことの違い

この2週間、世界中で行われたスポーツ観戦に熱中した。
水泳、ゴルフ、野球(MLB)と矢継ぎ早に、
ほぼ24時間絶え間なく続く熱戦に魅入られた。
とことん堪能したが、神経をすり減らすような激戦に、
自分がプレーしたように疲労困憊状態になった。

4月4日から始まった競泳の第92回日本選手権兼リオ五輪代表選手選考会。
若手選手の台頭が目立ち、新生ニッポンの活躍を期待させるに十分な展開と
なったが、
主役は日本競泳史上初の五輪5大会出場をかけた平泳ぎ・北島康介だった。

高校3年で五輪に初挑戦した2000年シドニー大会では100メートルで4位。
04年アテネ、08年の北京の2大会連続100&200メトール2冠の偉業は
「超気持ちいい」「なにも言えねぇ」の名言と共に人々の心に刻まれた。
12年ロンドン大会で個人のメダル獲得はならなかったが、
仲間たちが「康介さんをてぶらで帰すわけにはいかない」と奮起、
メドレーリレーの銀メダルを獲得した。

今回の選考会では100メトール準決勝で派遣標準記録を0秒01上回ったが、
同決勝では準決勝より0秒31落とし、そして200メートルでは5位。
「レベル高ェ~、マジで」のセリフを残し、散った。
リオ五輪出場はならなかった。

だが五輪の度に国民を驚かせ、喜ばせ、泣かせた、
記録にも記憶にも残るスイマーの引退記者会見はまことに爽やかだった。
競技している時の表情とは違い、底抜けの明るさがあった。
“西日暮里の肉屋のあんちゃん(長男)”といった、
あっけらかんとした下町的で清新な雰囲気がとても魅力的だった。

そして7日から始まったマスターズゴルフ。
日本からは松山英樹だけの単独出場だった。
世界ランク14位の松山は、優勝候補にも名前を連ね、
3日目までは出場全選手中ただひとりオーバパーを打たず、
最終日は首位と2打差3位発進だった。

結果的には7位タイで終わったが、
TV解説の中嶋常幸が番組中で何度も唸ったように
「ごくごく自然に優勝戦線にいる」
「グリーンジャケットを着れる位置にいる」雰囲気は、
マスターズゴルフ中継を見始めて40年ばかり、初めての経験で、新鮮だった。

2連覇を狙ったジョーダン・スピースの
後半の劇的な崩れ方(12番パー3の「7」)に、マスターズの怖さを見た。
伏兵の英ダニー・ウィレットの勝利となったが、それは無欲の勝利と思う。
オーガスタには“女神”が住んでいると真剣に思わせた。

「ジョーダン・スピース2連覇ならず」の報は、株式市場をも動かした。
契約先の米スポーツブランド大手アンダーアーマー株は
前週末比5%の下げとなり、S&P500種株価指数の採用銘柄で、
下落率の上位となったのである。

「世界に通用する」から「世界で勝利する」ことを目標とする時代になった。
敢然と世界と勝負した北島康介や松山英樹に、
今までと違う時代を見せてもらっている気がする。


2016年04月09日

賞味期限切れ!?アベノミクスの失速

4月。新会計年度に入って2週間。
諸般の専門誌に「アベノミクス相場失速」の文字が躍っている。
マイナス金利導入という“禁じ手”まで繰り出した挙句、
衆参同時選挙を控えて右往左往している。
アベノミクスの賞味期限切れの様相は否めない。

2012年12月の第二次安倍政権発足以来、
「金融緩和」「積極財政」「成長戦略」の三本の矢を掲げたアベノミクス。
株価は高騰し、ドル円は120円超の動きが続き、市場も日本経済も
沸き立っているかに見えた。

先鞭を切った施策は「黒田日銀総裁人事」だった。
13年3月に就任した黒田総裁は
「異次元緩和」と名付けた量的・質的緩和政策を打ち出す。
日銀がETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を大量に買い、
市場にカネを流通させる仕組みだった。
この「黒田バズーカー」と呼ばれる手法で株価は急騰、円安も進んだ。

さらに就任から1年半が過ぎた14年10月には
「黒田バズーカー2」と呼ばれる追加緩和策を発表する。
“弾薬”となったのは日本国債だった。
だが「黒田バズーカー2」は「消費税増税を的確にやってくれ」とする
黒田総裁からのメッセージーだった。

ところが安倍晋三首相は消費税増税の延期を発表する。
財政再建は二の次。増税を実行して成長を壊せば元の木阿弥との考えだった。
結果的に「財政赤字を日銀が(自動的に&半永久的に)埋める」パターンを
繰り返す格好になり始めた。

振り返ってみれば、アベノミクスの尖兵となったのは為替相場だった。
日銀の大胆な金融緩和を先取りする形で、円相場だけが下落する展開となった。
それから3年半、15年6月に1㌦=125.86円まで円安が進行する。
ところが2016年明け、世界経済の先行き不安が先行、110円台での動きとなり、
4月新会計年度に入って110円を割り込んでしまった。

考えてみれば、先進国の中において日本ほど「円安=景気回復」という
(間違った)考え方が定着している国はない。
日本の輸出は自動車や弱電という裾野の広い産業製品が中心だったからである。

ところが現在、「円安=輸出増加=景気回復」とはならない。
大きな要因は
まず、日本企業の海外生産比率の上昇である。
2番目の理由としては世界経済の成長鈍化による輸入需要の低迷。
3番目の理由としては、円安により(日本の)輸入価格の上昇で、
消費が抑えられるからである。
現在の日本は、
円安を日本経済回復の起爆剤にしたがるアベノミクスの思惑とは違い、
円安も困るということになる。

ならば「ドル円相場、株式相場の適正な着地点」はどこにあるのか。
1973年の変動相場制移行41年の歴史的事実(結果)から言えば、
ドル円相場は日米両国の企業物価・輸出物価から計算された『購買力平価』
の動きに沿っている点は再認識すべきであろう。

諸般の結論は「ドル円は1㌦=100円に回帰」。
そして株価は
「13,500円が抵抗ライン、20,000円の半値の10,000円の可能性あり」
ということになりそうである。


2016年04月02日

「スポーツ賭博」の線引き

春はセンバツから。
センバツ高校野球が始まり、プロ野球が開幕し、
そしてMLB(米大リーグ)が始まれば“三役揃い踏み”。

CMがやたら多いお笑い番組が乱打される“暗黒の時”から、
サクラの開花と同時に(朝から)野球漬けの“黄金の日々”が復活する。
全部をシッカリ見るわけではないが、
BGMとして流しておくだけで何気に気持ちが華やいでくる。

昨年から今年にかけ、
盟主・読売巨人軍の選手による野球賭博問題が大きく取り上げられた。
昨年11月、巨人軍の3選手が無期失格処分となり、“後出し”でもう一人、
巨人軍の若手投手が3月になって1年間の失格処分となるなど、
球界全体を揺るがす展開となっている。

挙句、「声出し」と呼ばれる発声役に対して1人5000円を払っていたという、
「仕事場に金銭が出回っていた」という感覚が批判を浴び、
臨時理事会が開催される事態にまで発展した。
そしてプロ野球界は「賭博の温床か?」との言い方をされるに至っている。

ごく身近の賭博と言うなら、
思いつくのは賭け麻雀、賭けゴルフ、パチンコあたり。
“オトコの真剣勝負(!?)”には多少の金銭が絡んだ方が真剣度が増し、
ゲーム自体に迫力が出る(と思い込んでいる)。
それが罪になるなら、自分もこれまで幾多の犯罪を犯してきたことにはなる。

もう時効だから明かしてしまうが、
東京外為市場が電話だけの“ボイス・トレーディング”の時代には、
幾多の“賭博”が恒常化していた。
いくつかを紹介してみたい。

まずは現場担当者間の友好ゴルフ大会での賭けゴルフと、
大会優勝者を当てる“くじ”。
ご丁寧にも大会出場者に馬名までつけて、参加者を募った。
(口数自由で)一口500円程度だったと思う。

次に“一気通貫”ゲーム。
市場が全く閑散で10銭レンジだった場合に行われたゲーム。
例えば113円10銭から20銭のレンジを右往左往していた場合、
113.10円から113.20円まで1銭刻みの取引を完成させるという
暇だからできる単純ゲーム。
最後の“穴埋め”を誰が完成するかで賭けていた。
たしか一口5000円。
邦銀・外銀が入り混じって参加していた。
勝利者は受け取った掛け金で、
毎月一回の定例会合後の飲み代を出すことになっていた。

最近の“夢みたいな”賭けについて少々。
アメリカンフットボールと大リーグの狭間にあたる3月。
米国民は全米各地を勝ち抜いた68大学が参加する
大学バスケットボール・決勝トーナメントに熱狂する。
言ってみれば、日本のセンバツ高校野球と同じノリ。

「トーナメント全試合の勝敗を的中させたら10億㌦(約1130億円)」。
スポンサーはかの有名な世界的投資家ウォーレン・バフェット。
最初は全米国民を対象にしていたが、問題ありとされ、今年から条件を改め、
自身が率いる複合企業バークシャ・ハザウェイとその傘下企業の従業員30万人が
対象となった。
ついでに「トーナメントの「16強」を正確に当てれば、
生涯にわたって毎年100万㌦(1億1300万円)を支給する」としている。

組織ぐるみの、そして八百長がらみの賭博は最初から問題外。
世界中のあるとあらゆる場所に存在する「賭博」or「賭博もどき」。
さてどこで線引きをするか。

杓子定規の決め決めの“清く、正しく、美しく”の世界はあり得えないと思うが...


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