2016年07月30日

狂ったように鳴り響くIT関連企業の進軍ラッパ

参院選挙だ都知事選だと、不必要にドタバタする中で、
気が付けば周囲ではITに絡んだ大きな動きが並列的に起きている。

7月18日、
ソフトバンクグループが、英半導体設計大手アーム・ホールディングスを
約240億ポンド(約3兆3000億円)で買収すると発表した。
日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)では過去最大。

スマートフォン(スマホ)用CPU(中央演算処理装置)に広く使われる
アームの半導体技術を取り込み、
あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」時代に対応した新事業の
布石にするのが狙いとしている。

買収資金の7割は、中国・ネット通販の最大手アリババ集団、
フィンランドのゲーム大手スーパーセル等の保有株を売却して得た
約2兆円が元手。
残りの1兆円はみずほ銀行からの借り入れ。

ソフトバンクグループは16年3月末時点で
自己資本の4.5倍に相当する12兆円弱の有利子負債を抱える。
日本のIT業界のガリバー・ソフトバンクの乾坤一擲の攻勢だが、
財務内容懸念が出るのは当たり前の話。そんな無茶して大丈夫か…

7月20日、
サッカーJリーグは、動画配信大手の英パフォームと、
2017年から10年間の放映権契約を結ぶと発表した。
契約総額は2100億円。年間ベースで現在の7倍に跳ね上がる。
日本のサッカーの放映権を、英国のIT企業が丸抱えで買い取る???

パフォームが配信するのはテレビではなく、スマホのユーザー。
場所と時間を選ばないため、
テレビと比べ視聴者や広告収入の増加が見込めるとしている。
1990年代に低迷した野球・米大リーグ(MLB)復活の原動力となった結果、
スポーツはスマホ時代のキラーコンテンツとなりつつあるが、
果たして日本のサッカーにそんな価値があるのか??…

また最近日本政府は、自動運転の開発加速に向け、
2018年度にも日本と欧州の衛星測位システムを相互乗り入れすることを
明らかにした。
軍事上の問題などから統合運用は遅れていたが、
2020年の東京五輪・パラリンピックに向け日欧は、
大きな成長が見込まれる自動運転分野の開発加速をテコに
共通化に乗り出す構えである。

そして時を同じくして、ヤマト運輸とDeNAが、
宅配便の配達に自動運転技術を活用する実験を2017年に開始すると発表した。
「ロボネコヤマト」の名称で、自動運転車を使って宅配便の荷物を届ける。
実験では安全確保のため当初は人が乗り込むが、将来は完全有人化を目指す。
スマホで時間と場所を特定することが前提となっている。

とどめは、世界的なブームになっている「ポケモンGO」。
スマホやパソコンのディスプレーにカメラで撮った現実世界を映し出し、
その中で人工キャラクターを表示したり動かしたりする「拡張現実=AR」技術が
ベースになっている。
「ポケモンGO」は、スマホに搭載された全地球測位システム(GPS)によって
利用者を把握する。
設定した場所に近づくとポケモンが表示されるという仕組み。

IT関連企業が起こす怒涛の大波が、これでもか、これでもか押し寄せる。
さて行き着く先は…


2016年07月23日

一気に色濃くなる「昭和の時代の終焉」模様

7月13日(水)、
19時のNHKニュースは冒頭で「陛下が生前退位の意向」と大々的に伝え、
「お気持ちの表明も検討」まで踏み込んだ。
間違いなく重大スクープだった。

陛下が天皇に即位されて以降の平成の時代は、
バブル経済崩壊後の景気低迷、リーマンショク、高齢化の進展など、
日本の繁栄に陰りが見えた時期だった。
また同時期は
阪神大震災、東日本大震災をはじめ、地震や火山活動などの自然災害も相次いだ。
その中で陛下は、美智子皇后と共に被災地を訪れ、
膝を折って、目線を同じにして被災地の方々を慰労された。

また
「戦争の惨禍を忘れず語り継ぎ、過去の教訓を生かして平和のために力を尽くす」
(99年11月)として、
日本全国の被爆地を巡回されたばかりか、
海外の第二次世界大戦・激戦地を訪問、戦没者を慰霊された。

団塊の世代が皇室を意識するのは、
昭和34年(1959年)の、陛下と美智子皇后とのご婚礼の日からだったと思う。
民間から初の皇后誕生だった。
美智子皇后が皇室に嫁がれるその日、
生母・故正田冨美(1981年からは富美子)さまの、
「お国のために頑張りなさい」との鮮烈なお言葉が、今でも脳裏を離れない。
激動・昭和の時代を代表する大きな出来事だった。

聡明で美しく、そして健康そのものだった美智子さまが、
ご婚礼の日から50余年を経て、
今は亡きご生母さまとそっくりになられた。
最初は顔つきが違うなと思ったものの、やはり母・娘であった。
過労の日々が続き、陛下と皇后が揃って総白髪になられ、
疲労困憊の後ろ姿を見せられながらも、
凛として公務につかれる姿は痛ましく思える。

皇室典範を中心に、難しい問題は残っている。
だが、時代は変わったのである。
欧州ではここ数年、高齢な国王らの退位が相次いでいる。
日本国の皇室に関しても、高齢や健康上の配慮があってしかるべきであり、
「公務の定年制」は自然の成り行きであろう。

7月に入って、昭和の時代の終焉を示す訃報が相次いでいる。
昭和34年にデビューした双子のデユオ、ザ・ピーナッツがこの世を去った。
7月11日、
妹の伊藤ユミ(本名・伊藤月子)さんが5月18日に逝去していたことが
明らかとなった(享年75)。
姉のエミ(本名・澤田日出代)さんは、
(離婚したGS時代の大スター・ジュリーこと)澤田研二の名字を変えないまま
4年間に他界している。
昭和36年から始まった日曜午後6時半からの「シャボン玉ホリデー」は
戦後の昭和の時代の代表的な番組だった。

そして7月7日、放送タレントで作家の永六輔氏が亡くなった(享年83)。
世界的な超大ヒット曲の「上を向いて歩こう」は、
永六輔作詞、中村八大作曲、坂本九・歌唱で「6・8・9の歌」として
今でも歌われている。

ついで7月12日、
タレントで元参院議員の大橋巨泉(本名克己)が亡くなった(享年82)。
高度成長時代に、組織に従属せず、ゴルフ・麻雀・釣りなど、
自分の趣味を商売道具に、逞しく生きる稀有な人物だった。

時として過剰と思えるくらいワセダ臭さを醸し出すご両人が、
手を携えるようにしてあの世へと旅経った。

2016年夏。
昭和の時代の終焉が色濃くなっている。


2016年07月16日

参議院は必要か -イベント化する国際都市・東京の選挙風景-

7月10日、第24回参議院選挙が実施された。
投票率は54.70%。
18歳以上20歳未満に選挙権を与えられた最初の選挙にしては
今一つ盛り上がりに欠けた選挙だった。
肝心の20歳未満の投票率は45.45%。
言ってしまえば気抜けするものだった。

今回の参院選の最大のテーマは「改憲勢力が3分の2を超すか否か」だった。
結果は、安倍晋三首相のしたり顔が目立ったように、与党の圧勝。
憲法改正の発議ができる3分の2超を獲得してしまった。
いいか悪いかは別にして、遅かれ早かれ憲法は改正される流れになった。

今回の選挙を横目で見ながら「参院は一体何を代表している院か?」
がますます分からなくなった。
中学や高校の授業を通して、
参院は「再考の府」や「良識の府」であると教えられてきた。
しかしその論理が当てはまったのは無所属議員で結成した院内会派「緑風会」が
多数派だった戦後も初期の頃だった。

政党化が進んで、多数派が衆院と同じである場合、
衆院の「カーボンコピー」となる。
一方、多数派が異なる“ねじれ”だと、政権を揺さぶる「政局の府」となる。
結果、衆院と同様に「数の勝負」が先行する。
かくして、有名人やら、元スポーツ選手やら、元タレントが跋扈する、
人気投票もどきの“(意味不明の)不思議な選挙”の世界が出来上がっている。

ザックリ言えば現在は「参院は衆院とほぼ同じ権能」を持ち始めている。
つまりは「同じものが二つ」存在することになり、
「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と銘記する
憲法43条の適否に行き着くことになる。

望ましい二院制、
とりわけ参院のあり方を論じるのに参院選は得難い機会である。
だが与野党とも語ろうともしない。
言うまでもなく「数の論理」が先行するからである。
「理屈じゃない、数だ!!」。
故田中角栄元首相の喝破した有名な言葉ではある。

こんな状況の中、参院選挙の投票に行くのを躊躇った。
暑いこともあるし、誰に入れても結果は同じと思ったからである。
だがふと考えた。
おっと、あの人がいたっけと思い直した。
真ん丸な黒メガネ(どんちゃんメガネ)が特徴の荒井広幸代議士である。

いつも真摯で熱心で、カネには無縁の(ように見える)荒井さんが、
何とはなしに好きだった。
駅の立ち食いで昼食を摂るいつもの質素なスタイルでの奮戦だったが、
当選者が一人も出ないという、予想通りの惨敗。
自分で立ち上げた新党改革の解散と、自身の政界引退を発表した。

別に荒井さんを賛美するつもりはない。
だが、参院選を尻目に、
ごちゃごちゃの混戦となっている都知事選のドタバタも目立ったから尚更、
清新な(ように見える)荒井さんを懐かしく思い出すのである。

国際都市・東京の近年の都知事選は“恒例のイベント”化している
まずは“××の乱”だの“先出し”“後出し”等のゲーム用語が飛び交う。
有効投票500万票の分捕り合戦だから、知名度が必要なのは解る。
が、あまりにひどい。

今の東京には、三代連続の中途辞任に伴って溜まり切った懸案事項を
的確に、淡々と遂行できる方が必要だろう。
ビジョンも経験もない、高齢にして病み上がりの方、
劇場型選挙がお好きの方には無理のような気がするが…


2016年07月09日

英国・国民投票その後 -不死鳥・ソロスの独壇場-

2009年3月、翻訳書「新版ソロスの錬金術」を上梓した。
「世界の投資家、ジョージ・ソロスの絶筆」が“最大の売り”の
450ページを超える超大作は、時が経つにつれ“伝説の名著”と
言われるようになった。
もはや絶版状態で、本当かどうか、あくまで噂だが、定価2000円の同書に
プレミアムがつき、定価以上の値段で売買されていると聞く。

東京拘置所に長期滞在(!?)されている方から4回読んだと、
細かい字で便箋10枚に及ぶ感想と、「訂正箇所」の指摘を受けたこともあった。
集中して読み込まなければ理解不能な、極めて難解の書である。
翻訳者もあきれるくらい丁寧に読みこなしてあった。
「やはり拘置所は暇なんだろか?」と妙に感心したりもした。

1930年生まれのソロスは現在85歳を超えている(はずである)。
そのソロスがまたぞろ注目を集めている。
今回の英国民投票前「EU離脱ならポンドは15%以上下落する」
とソロスは予言した。

1992年、
英中銀の為替維持策で割高で推移していたポンドに大規模な空売りを仕掛け
通貨危機を起こし、英金融史に「ブラック・ウェンズデー」と銘記されるに
至った張本人がソロスだった。
金融界には「ポンド暴落=ソロス」の連想は依然健在である。

6月24日に付けたポンドの安値1ポンド=1.32㌦台。
開票開始の高値から12%近く下落し、1985年のプラザ合意以来、
実に31年振りの歴史的安値をつけた。
英国では以降、「暗黒の金曜日」と受け継がれだろうと囁かれている。

更にソロスは「ユーロとポンドが等価(パリティ)になる」と予言する。
1999年のユーロ投入以降、1ユーロ=1ポンドを超えたことは一度もない。
金融立国・英国は、ポンド危機の再来を防げるのか…
ソロスのニタリとした冷ややかな表情が目に浮かぶ。

それにしても「離脱派の顔役」で、カリスマ的人気を誇った
ボリス・ジョンソン前ロンドン市長の突如の
“(保守党の党首選からの)退場”はあまりに衝撃的だった。
米共和党大統領候補・ドナルド・トランプ氏と容貌が瓜二つで、
煽りに煽るやり方も同様に、英国民を離脱に導いた同氏の土壇場での退場は、
“敵前逃亡”or“やり逃げ”だった。

そもそもオックスフォード大卒で富裕な家庭に育ったジョンソン氏が、
反エリート感情を原動力とする離脱運動の旗振り役となる構図には
無理があった。
そしてまた、英離脱派には経済の打撃を避けるため、離脱した後も関税撤廃など、
EUの単一市場の恩恵を受けたい、受けられるといった“至極安直で自分本位な”
考え方が蔓延していた。

「(EUの)単一市場へ参加するには、移動の自由を原則を受け入れる必要がある」。
ここを先途の欧州の女帝・メルケル独首相の(余裕綽々の)登場だった。
優柔不断・英国離脱派の描いた「いいとこ取り」「特別扱い」の思惑は
完全に外れたのだった。

誇り高き大英帝国どこに行く。
まさに「不死鳥・ソロスの独壇場」の展開である。

2016年07月02日

6.23英国・国民投票の意味

現地時間6月23日。
世界中が、僅差のまま刻々変わる投票結果に興奮し、TV画面に釘づけになった。
だがそのうち、今回の英国のEU離脱の是非を問う国民投票が
「なぜこのタイミングで実施されねばならなかったのか?」
という単純な疑問が浮かんだ。

英国政府は
「EUにうんざりしたり、移民問題が心配なら『離脱』に投票せよ」
と居直った。
英国民に第二次大戦以降、最も重要な選択を迫ったのである。
民主主義の素晴らしい点は、
「市民に考えを主張できる機会が与えられる」
「政治家が約束を破ったら次の選挙で落とせばいい」
ことだった。
だが今回の国民投票の結果がもたらす影響は
「英国という連合王国を解体に導く」ような“大きな選択”だった。

確かに現在のEUは理想的な状態にはない。
だが近年EUは、次々に襲う難問を曲がりなりにも乗り切ってきた。
つまり今回の国民投票は、EUの本質が問われたものではなかった。
基本は党運営の問題であり、
キャメロン首相は国民投票を乗り切れれば保守党をまとめておけると考えた。
結局は党利優先であり、論点がすれ違っていた。

論点を絞って「残留」「離脱」の主張を簡単に対比してみたい。
●経済
「残留:不確実性が増し、投資や貿易に打撃が広がる」
「離脱:EUの規制がなくなり、貿易が増えて、成長する」
●移民問題
「残留:EUから離脱しても問題は解決しない」
「離脱:移民や難民の流入を制限できる」
●通商問題
「残留:欧州の単一市場へのアクセスに制約が生まれる」
「離脱:独自に各国と貿易協定を結べる」
●外交安保
「残留:国際問題で発言力が低下し、孤立する」
「離脱:国益にかなった独自路線を強めることができる」。

欧州域内の関係は、傍目で見るよりもはるかに複雑である。
過去何世紀にもわたり軍事衝突を繰り返した国々の統合に問題がないはずがない。
経済面でも必ずしも全ての国が納得する形では進んでいない。
その中で英国は、元々独仏勢など大陸と一線を画しつつ、関係を強めてきた。

ある意味でしたたかな英国人は、今回の国民投票を通じて、
その存在を示したかった。
だが、「離脱決定」以降の英国内のドタバタを見れば、
「(事前予想のように)どうあがいても結局は残留派の勝利」を前提に
至極安易に「離脱」に投票したと思われる。

つまりは
「(言うことを聞いてくれない、独仏を中心とした)支配階級を攻撃せよ」との、
老い先短いプライド高き高齢者層の(半分冗談の)反乱だった。
だが歴史に刻まれる今回の選択は、
再度の国民投票を実施しようが、国民投票をなかったことにしようが、
どんな屁理屈をこねても、最後は英国民が責任を取らざるを得ないのである。

今年に入って金融市場では「ABCリスク」が取り沙汰されてきた。
A=America(米国) B=Brexit(英国のEU離脱)、C=China(中国)。
「B」の波紋は「A」や「C」にも波及する。

今回の国民投票を巡って、金融市場は荒れまくった。
時間が経つにつれ一応混乱は収まった。
だが当面は、手探りの状況が続いていく。
頼りない大英帝国を尻目に、独仏がどう対応するか…
問題は山積している…

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