2016年11月26日

「グローバリズムとPC」への反乱

早いもので2016年もあと1カ月少々となった。
巷間では年末恒例の「今年の流行語大賞は何になるか?」でかまびすしい。
では世界の流行語大賞なるものがあるのかないのか、定かではないが、
仮にあるとすれば、2016年世界流行語大賞は
「グローバリズムとPCへの反乱」がダントツで選ばれそうだ。

まずグローバリズムとは「ヒトカネモノが自由に国境を越えること」。
そしてPCとは
(日本で汎用されているパーソナル・コンピュータのことではなく)
「ポリティカリー・コレクト=ありとあらゆる差別や偏見をなくすること」。

6月の英国のEU離脱決定、
そして11月の米大統領選挙でトランプ勝利という歴史的な“番狂わせ”は、
一見無関係に見えて本質的にはほとんど同一のものであった。
日本を含めて世界中の有識者やメディアは、
ほぼ一致して英国のEU残留と、米大統領選挙でのトランプ敗北を固く信じ、
またそうなることを強く望んでいた。

ところが予想外の展開になってメディアは、EU離脱について
「理性が感情に負けた」
「ポピュリズム(大衆迎合主義)の怖さ」
「今となって後悔する国民」などと表現し、挙句、
「扇動され踊らされた低学歴労働者による無責任な愚挙」
「民主主義の危機」と嘆息した。
トランプ勝利後もメディアは、ほとんど同じ論評を繰り返した。

考えてみればここ30年、アメリカが先導し、
世界が追随したグローバリズムによって、世界各国で所得格差が急拡大し、
中産階級がやせ細り、国民が持てる者と持たざる者とに二分された。
結局、アメリカ型金融資本主義により一蓮托生となった世界経済は、
ギリシャ程度の小国の経済状況にさえ一喜一憂するという脆弱な体質になった。

またPCという「清く、正しく、美しく」の理想論的な合言葉により、
誰もが本音でモノを言えなくなった。
PCに抵触したとメディアが判断すれば、即刻社会的な制裁を受けざるを
えなかったからである。

この閉塞感とグローバリズムのもたらした惨状に敢然と立ち向かったのが
移民排斥と自由貿易協定破棄を掲げたトランプであり、
移民とEUのグロバーリズムに反逆した英国民だった。
結局、今回の米大統領選挙でのトランプ勝利に対する「なぜだ??」
との疑問に対する答えが「グローバリズムとPCへの反乱」だったのである。

こうした一連の考え方は認めるとして、中産階級の怒りが一旦は収まった後、
具体的に現世とどう対応していくかは別問題である。
トランプ勝利後の「ドル1強マネー集中」は異常である。

きっかけとなったのは米議会選挙で共和党が多数派を維持し、
大統領と議会多数派が食い違う「ねじれ」が解けたからである。
トランプの大型減税やインフラ投資が現実味を帯びる。
移民拒否などの極端な政策は、与党・共和党が歯止めをかける。
ウォール街はそんな“いいとこ取り”のシナリオに乗ったのである。

「欲しいものがいつも手入るとは限らない。
けどやってみると、たまには見つかるかもしれない」。
トランプが利宣言の後、会場を立ち去る際に会場に流れた、
英ロックバンド、ローリング・ストーンズの曲の一節である。

世界は今、21世紀初頭の極めて難しい混沌とした局面にいる。

2016年11月19日

吹きすさぶトランプ旋風。行き着く先は…?

21世紀の金融はコンピューターファースト。
「人間を徹底排除する方式が短期的には結果が出る」との論理。
つまりは巨大な金額をマイクロセカンドで動かし、
“(わずかな)さや”を掠め取とろうとする薄利多売方式。
情け容赦とか情状酌量といった人間的な情緒は全くない。
いざやるとなったら、“はやぶさ”のように宇宙の果てまで飛んで行く。

ここ20年、金融市場には
「米大統領の交代時には株高・円安になる」とのジンクスがあった。
1990年以降の米大統領選挙の翌年の円相場を振り返ると、
ビル・クリントン氏2期目が始まった97年以降、
5回連続で円安・ドル高・株高だった。
就任当初は支持基盤を固めるため、
景気刺激策を打ち出されることへの期待が出るからである。

例えばブッシュ政権では2001年に大型減税を実施。
05年の2期目には米国企業が海外で得た利益を本国へ戻す際の
税金を軽減する「本国投資法」を導入した。
新大統領に切り替わることで期待感が膨らみやすい流れにはなっている。

では「予想外」とされた今回の米大統領選挙のドナルド・トランプ氏の場合はどうか。
保護主義的政策を掲げるトランプ氏の勝利は円高要因との見方が多数派だった。
100円突破もあり得ると。
事実、開票日の日本時間午後2時頃には101円台前半まで円高が進み、
日経平均株価は1000円超の下落となった。

雰囲気が変わったのは同日日本時間午後5時頃のトランプ氏の勝利宣言からだった。
「米国の利益を一番に考えるが、海外諸国との公正な関係を築くことも
 世界に知らせたい」。
こんな調子で保護主義的な発言を封印。
「世界最強の経済を構築する」と強調した。

以降市場の関心は、トランプノミクス(トランプ氏の経済政策)の
“光の部分”へと一気に移っていった。
法人税率の引き下げなどの減税やインフラ投資、規制緩和といった政策が
クローズアップされたのである。

そして当日の米国市場の取引時間帯に入ると、ムードは完全に変わる。
米議会の上下両院で共和党が過半数を確保、
景気刺激的な政策が推進されるとの見方から米長期金利が上昇し、
日米の金利差が拡大した。

またトランプ氏が、企業が海外に所有する資金を米国に移す際の税率軽減を
計画しているとの報が伝わり、
インフラ投資の恩恵を受け易い建機のキャタピラー等の株価も上昇し、
益々ドル買いに拍車がかかり、今週末には110円に到達する動きとなっている。

日本でトランプと言えばブリッジやポーカーなどに使うカードのことだが、
英語では「切り札」の意味。
現状を打破するために米国の有権者が打ち出してきた切り札がトランプ氏だった。
少なくとも選挙戦では破壊力を期待できる人物像を演じ続けてきた。

27年前の11月9日が「ベルリンの壁が崩壊した日」。
そしてトランプ新大統領誕生した日が11月9日。怖いような符合である。
カードゲームではジョーカーが切り札になる。
そして最悪の札になることも。

最新精鋭のコンピュータが「トランプ×」のサインを出したどうなるか。
無機質の市場の数字は、それこそ宇宙の果てまで飛んで行く...

2016年11月12日

トランプショック -アメリカニズムに潜むリスク-

この半年、
NYダウ、日経平均、ドル円為替のチャートが顕著なサインを出していた。
短期ではNYダウ・日経平均は上昇、ドル円為替は円安。
一方長期では、NYダウも日経平均も下落、ドル円為替は円高。

簡単に言えば「短期的に盛り上がっても、長くは続かない」景気のパターン。
結局、諸般のチャートは、今回の米大統領選挙で
「不安定極まりない暴言王・ドナルド・トランプ(以下トランプ)勝利」の気配を
示していたのである。

日本時間11月9日午前から始まった米大統領選挙の開票報道。
MLBワルードシリーズの雰囲気に似たお祭り騒ぎ。
世界中のマスコミが米国に集中し、
日本のTV各局も、ワイドショー中心の興味半分の緩い報道が続く。
接戦になろうが、どうせ最後にはヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー候補)
の勝ちだろう…昼ごろには決着がつくだろう…
10人中8~9人がそう思っていた。

ところが、ヒラリー候補の勝利確定するはずのお昼頃から、
トランプ候補優勢が明確になっていく。
日経平均1000円の下落、ドル円は101円台に。
何かが違う、何かが…次第に騒然とし始める。
当初は泡沫候補扱いだったトランプ候補が勝つ??まさかな…
そして午後4時頃、ヒラリー候補の敗北が確定する。

今回の米大統領選挙の最大の特徴は、
両候補の好感度が過去30年の大統領候補の中で最低だったことである。
民主党・ヒラリー候補は
大統領夫人(=ファーストレディ)、上院議員、国務長官を歴任。
練られた政策をよどみなく語る。
ただ最終盤の失速となった国務長官時代の私用メール問題は
「灰色」の印象を与えてしまった。

一方、共和党・トランプ候補は、
国籍・性別を問わず差別的な暴言を繰り返した。
民主主義を軽んじ、選挙結果の受け入れを保証することも拒否した。
「大統領になる資格がない」とのヒラリー候補の指摘は、
多くの選挙民の共感を得るはずだった。

米国は2008年の金融危機から再生し、
一時は10%に達した失業率は5%前後にまで回復した。
とは言え、中低所得層の収入に変化がないままである。
結果的には景気回復の恩恵は、トップの富裕層に集中したことになる。
かくしてトランプ候補の暴言は、経済格差が顕著な米国社会の断層に
ジワジワと入り込んでいくことになった。

結局、今回のトランプ候補勝利の最大要因は
「様々な暴言で不満層の溜飲を下げた」ことにあった。
この雰囲気は英国のEU離脱と似通っている。
だがトランプが主張する根本にあるのは、
自由貿易の拡大や移民の流入を阻止する「アメリカニズム(米国第一主義)」
であり、一連の考え方に危うさは否めない。

米国は世界の政治・経済の秩序づくりを主導する世界の超大国である。
軍事・経済で拡張主義を採る中国や、冷戦下の覇権主義に戻ったロシアに
どう対応していくか。
具体的な政策プランがないように見える新大統領にその認識があるのか否か。

大統領就任が決定したトランプ候補が、勝利が決定した瞬間から
いつもの暴言が鳴りを潜め、緊張し、青ざめているようにさえ見えた。
議員経験・軍隊経験もないトランプ新大統領は、
とりあえず就任までの3カ月間、猛勉強するしかあるまい。

今回の選挙の中で、トランプ候補のスキャンダルは出切ったとの見方はある。
本人はともかく、周囲さえ固めれば何とかなる…
とはいえ世界は今、
経済の縮小均衡と国際秩序の空白におびえながら、緊迫の4年間に突入する。


2016年11月05日

ガタつく世界情勢。松山”ぶっち切り”という清涼剤

ハロウィンが日本に定着したのはいつの頃だったか。
多分この10年、21世紀になってからだと思う。
江戸末期の「ええじゃないか」に雰囲気が似て
「参加しなきゃ現代人じゃない」のノリ。
TV中継で渋谷界隈の馬鹿騒ぎを見るにつけ鼻白む思いである。

金融市場は11月第2週の米大統領選挙に向け、沈黙したままである。
完全に泥仕合となり、
米国民は何を根拠に投票するのかさっぱり見えてこない。
まさかとは思うが、トランプ勝利となれば米国だけでなく、
世界全体がひっくり返るような大混乱が起きるのは必至だが…

隣国・韓国での朴大統領の友人による国政介入疑惑。
詳しいことは知ろうとも思わないが、
朴大統領の友人と言われる女性の周囲には膨大な利権が絡んだことは
間違いないようである。
支持率5%となっては朴政権も末期的。
このままでは米韓関係に歪みが入り、日本もその影響を避けられそうにない。

日本もガタついている。
黒田東彦総裁の事実上の「ギブアップ」宣言。
かき回すだけかき回した挙句、
「理論通りにはいかなかった」の経済学者お決まりの捨てゼリフ。
日本経済はどうなっていくのだろう。

小池百合子東京都知事の劇場型手法も、結論を出す時期にきてガタついている。
豊洲移転はどうするのか、東京五輪3会場は??
毎日の(主婦向け)ワイドショーにネタは尽きないが、
“おもしろうて、やがてかなしき、鵜飼かな(芭蕉)”の感である。

そうした中、
10月末はスポーツの秋にふさわしいTV中継のオンパレードだった。
日本ハムVS広島の日本シリーズは予想以上の熱戦だったし、
MLBワールドシリーズも最終戦までもつれ込んだ。
まさに死闘だったがシカゴ・カブス勝利。
108年振りに“羊の呪い”が払拭された。
(蛇足だが、怖いのは羊の呪いが消えたことで、米大統領選挙で
「トランプ勝利か」との説がまことしやかに流れていることである。)

ちなみに30日のBSのスポーツ番組を紹介してみたい。
8:35からMLBワールドシリーズ(NHK)、
15:00からは世界ゴルフHSBCチャンピオンズ(松山英樹=NHK)、
22:30からはATP500テニス・スイスインドア決勝(錦織圭=BS朝日)、
26:00からはサッカーAFCU-19(19歳以下)決勝、
日本VSサウジアラビア(NHK)。
集中して見たら疲れるだけなのでBGM代わりだったが、
松山英樹の優勝には初体験の快感を味わった。

1999年に始まった世界選手権シリーズは年に4試合。
世界ランク上位選手しか出られず「準メジャ-」として位置付けられている。
今回のHSBCチャンピオンズには10傑のうち
1位のJ.デー(豪)、4位のJ.スピース(米)を除く世界の強豪が終結した。
松山は過去に米ツア-で首位発進したのは2回だが、
10位、3位と逆転負けしている。3度目にして初の逃げ切り勝利。
3打差から7打差に広げての“ぶっち切り”だった。

過去、30年以上にわたって世界メジャーの試合をTV観戦してきたが、
日本選手が首位のまま“上から目線”で見られたのは初体験。
トータル72ホールで、バーディ29・ボギー6の通算23アンダー。
3日目と最終日はボギーなしのプレーは完璧。

ゴタゴタする世界情勢を忘れ一服の清涼剤。
ひたすら“(ヒデキ)カンゲキ”したのだった。


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