2018年06月30日

確立し始めた「日本サッカーの日本化」

6大会連続の出場を決めたオーストラリア戦から1カ月余。
6月14日に開幕したW杯サッカー。
直前のふがいない試合もあり、日本には往時の熱狂はなかった。
元々フィジカルの差は歴然で、
しかも久し振りの日本人監督が就任してからも1カ月余り。
準備不足だ、どうせだめだろ…
.
史上最強と言われた「ザックジャパン」が
2014年ブラジル大会で1次リーグ敗退で終わり、
日本からサッカー熱が冷め始めた。
本田圭佑、岡崎慎司らの主力がピークを過ぎる一方で、
新戦力の台頭は遅れ、世界ランキングも大きく下げた。
大会直前の突然の監督更迭もダメ押しとなった。
一体何を期待せよというのか….

前回のW杯から4年、
錦織圭(テニス)、松山英樹(ゴルフ)、大谷翔平(野球)など、
世界に通じるニュースターが続々と誕生した。
20年の東京五輪も近づき、世間の関心は他の競技に移り始めてはいた。
致し方ないことではあった。

日本が属するH組はコロンビア、セネガル、ポーランド。
国名を聞いただけでもガクッとくる組み合わせではあった。
初戦のコロンビア戦も、まぁとりあえず見とくか、といったところだった。
ところがところが、2対1の勝利。
試合開始直後のハンドの反則によるPKという幸運はあったものの、
とにかく勝ったのだ…

2戦目のセネガル戦。
新大関・栃ノ心を二回りほど細くした体格の集団と、
互角以上の戦いで、ドロー。
セネガルと互角以上の戦いをした直後からマスコミの手のひら返しが始まる。
“革命児”扱いで、新監督・西野朗賛歌の始まりである。
曰く、96年のアトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇蹟」の再来か…

今回のW杯で目立ったのは、
跳びぬけたスターを抱えるチームの苦戦振りである。
ロナウドのポルトガル、メッシーのアルゼンチン、
ネイマールのブラジルなど、
従来の有名国が予選通過に四苦八苦の状況となった。

ネイマールの泣き顔や、前回優勝のドイツ予選敗退が印象深い。
だが冷静になって考えてみれば、最近のサッカーは
超スーパーな「個」だけの力だけでは勝てなくなり、
磨き上げた集団の力が必要となり始めている。

これは陸上短距離・リレーの形態と似通っているともいえる。
9秒台が皆無の日本チームが、400米リレーで五輪・銀メダルを取った。
バトンの技術だけで、世界王者・ジャマイカ・ウサイン・ボルト等の
“モンスター”と対等に勝負した。
奇跡ではないのだ、集団の技術の勝利なのだ。

今の日本チームには乾、柴崎、長友、昌子(しょうじ)などの
“(疲れを知らない走りをする)小動物・リス集団”に加え、
欧州基準の酒井宏樹など、多士済々。
気が付けば「日本サッカーの日本化」に向け、
長年かけて堆積した豊饒の土壌が出来上がっていた。

「日本のサッカーはどこに向かうか」に関し、欧州、南米と彷徨を続け、
最後の最後に日本の監督になってようやく到達した日本のサッカー。
最終戦のポーランド戦での、
“ひたすら他力本願”戦法の是非が論議されているが、
とにかく激戦の予選突破したのだ、文句はあるまい。

早稲田伝説のモテ男・西野朗の持つ運にも期待したい。
日本のサッカーは変わった。
新しい風は吹いている、間違いなく…

「新生ニッポン」の歴史は、
「日本は16強中最弱」と喝破する、
(決勝T・初戦)赤い悪魔・ベルギーを粉砕することから始まる!

2018年06月22日

D.トランプ作・演出・主演の政治ショー

それにしても劇的勝利だった。
日本時間6月19日のW杯コロンビア戦。
試合開始直後の香川のPK一発。
ハンドを犯したC.サンチェスの一発退場。

中だるみはあったが、後半に大迫のヘッドで決勝点。
アジア勢が南米のチームに初めて勝利した歴史的な一戦だった。
なせばなる、やればできる。
どうせだめだろ、の予想に反し、日本中が大騒ぎになった。

冷静になってみて、はてと、ちょうど1週間前、
同じような大きいイベントがあったんじゃなかったっけか…
ちょうど1週間前の6月12日、米朝会談だった。
あれも歴史的な出来事には違いなかった。
日本国民どころか、世界中の人間がその顛末を見守った。

言ってみれば、
長時間のドナルドドランプ作・演出・主演の「ザ・政治ショー」。
世界中がそのショーを見守った。
少なからず緊張感があった。
だがそれにしても何らの記憶にも残らない、極めて曖昧な会談だった。
シンプルに言ってみれば、
「(それまで喧嘩ばかりだった)じいちゃんと孫の“じゃれあい”」
の様相だった。

いい機会なので「米朝首脳共同声明」の全文を原文(英語)で
読んでみた。
「いつまでに、何を、どうやる」ことは一切触れない。
「細部は今後開催予定の米朝高官級協議に委ねる」という。
ああだこうだやっているうちに、
時間切れでトランプ大統領が大統領でなくなってしまうかもしれない。

唯一間違いないのは、好ましい方向と悪い方向どちらにも
朝鮮半島情勢が大きく作用するということだ。
仮に北朝鮮が核武装すれば、
日米が防衛力強化→中国のいちゃもん→
韓国の革新政権の北朝鮮へのすり寄り→日米韓の分裂。

(可能性は極めて小さいが)反対に核問題が解決するなら、
とりあえずは日本の拉致問題の全面解決、在韓米軍の縮小、
日本の北朝鮮に対する戦前の補償開始、従来の日米韓の安保環境の激変等など…
.いずれにしても北朝鮮をめぐる核問題は、
日韓のみならず米国を中心にした政界秩序に挑む中国・ロシアを絡めた
パワーゲームになっていこう。

かくして、総合的に考えてみれば、
米有権者に成果を誇りたい超短期主義・トランプの“やりたい放題”だ。
8日から開催されたG7の首脳会議では「1対6」の構図。
西側同盟国の輸出を「安全保障上の脅威」として浴びせた
鉄鋼や自動車への制裁関税でダメ押しとなった。
返す刀で対中制裁関税の発令。
当然して欧州も中国も報復関税の発表だ。

世界最強の西側国家のリーダーが、長年の同盟国に背を向け、
独裁的な国家とのディール(取引)にいそしむ。
そんな倒錯した構図が世界をしらけさせた。
トランプ米大統領が暴走を続け西側の結束が崩れれば、
結局は民主主義と距離を置く中露の存在感を高める。
短期的とは言え、朝鮮半島の安定は実現された。
だが世界秩序は大きく揺らぎ始めている。

この2週間、ジャンルが違うとはいえ、
日本にとって歴史的なことが起きた。
「大迫はんぱない」が今年の流行語大賞になりそうだ。
そして「トランプ、中途半端だ」も有力候補だ。


2018年06月16日

日大アメフト事件の落としどころ

日本人の大半は、
国技・相撲の世界に「かわいがる」という隠語があるのは知っている。
本来の意味とは正反対の、
厳しい稽古に名を借りた制裁やいじめのことである。
日大アメフト部には同じような隠語があった。「はまる」という言い方だ。

関東学生連盟の調査により、以下が明らかになった。
「白いものを監督が黒と言えば黒」
「どんな理不尽でも実直に実行するのが掟」。
閉鎖社会では意味のない暴力が存在し、それを指す独特の隠語が生まれる。
日大アメフト部は、そうした閉鎖社会ではないかと薄々とは思われていた。
平成から新時代に移ろうとするこの時期にも、である。

現代の組織における欠かせないスキルは危機管理能力である。
それを高等教育にいち早く取り入れ、
危機管理学部を創設したのは日大だった。
「エキスパートの育成を目指す」が謳い文句だった。
余りにピッタリの、まさに笑えないギャグである。

第二次大戦で世界に怖れられた日本の特攻隊。
建前は志願制だが、実態はほど遠いものだったようだ。
生還する者は「次こそ死ね」と言われ続けたという。
「20歳そこそこの青年が絶対的権力を持つ上官の命令に背いて生きる」
のは想像を絶するものだったろう。

今回のタックル事件は「相手を潰せ」と命令されたとされる。
特攻隊の論理と同じである。
練習を干し、選手自らが反則するように追い込んだ。
繰り返すまでもないが、戦争から70年以上も経過した、
現代の大学での話である。

内田正人前監督は日大附属病院入院中に、常務理事の職を辞すと発表した。
ただ、相撲部の総監督でもある田中英寿理事長は
日本最大の学校法人・日本大学の頂点に君臨したままだ。
結局、一連の(暗黙の)権力・利権構造には何らの変化もないのだ。

自分が受験生だった頃、日本大学は、“ポン大”と呼ばれていた。
格段の受験勉強をすることなく“誰でも入れる(イージーな)大学”
との蔑称だった。
ただ芸術学部と理工系・航空学科は“別物”とされるに至り、
そうした蔑称はしなくなってはいった。
だが、
「大学の頂点にいるべき学長が理事長の下」という組織形態が露呈するに至り、
問題が大きくなった。

多分それはたまたまだとは思うが、今回のタックル事件以降、
諸般のマスコミが「日本の大学の質の低下」を特集し出した。
最近掲載されたテーマが「痩せる『知』」。
日本の大学の「論文の生産性」で、100位以内が
東大(94位)・京大(98位)・東北大(99位)・東京工大の(100位)4校に
なったと、嘆いてみせた。

何かにつけ面白おかしく論じるマスコミの論調は不変だ。
一部運動部の騒動で、日本の大学の質云々を論ずるのも早計だし、
筋違いだろう。
ただ今回のタックル事件は、日本全体の根本に抱える課題の象徴ではあった。

学生主導で、大学選手権9連覇中のラグビー・帝京大学、
箱根駅伝4連覇中の青山学院の例もある。
やればできる、任せればやるのだ、現代の日本の若者は!

日本版NCAA創設を含め、根本的な修正をするには絶好の時のように思う。


2018年06月09日

銀行員はどう生きるか

紙媒体の本の売れ行きがはかばかしくない、と言われて久しい。
とは言え、何かヒントがないかと、
暇ができれば有名書店に立ち寄ることにしている。
最近、ビジネス書(新書部門)で面白い(!?)本がヒットしている。
題して「銀行員はどう生きるか」(講談社現代新書)

現天皇の30年4月の退位が正式に決定し、
平成29年は「平成の30年」を回顧する内容の記事が増えている。
新年号が何になるのか知る由もないが、
ミレニアムを含む平成の時代は、まさに激動の30年だった。

「稼げる者だけが生き残る」。
ビジネスの基本原理が銀行経営にも持ち込まれ、
「護送船団方式」と呼ばれる銀行不沈神話が完全に崩壊した。
平成30年間という激動の時代の中で
「銀行の使命が終わった」のは、大きな変化のひとつだった。

今から20年前の1997年11月17日、北海道拓殖銀行が破綻した。
「銀行が倒産する」という、それまでの絵空事の出来事が実際に起きた。
以降、大再編の2000年代へと続いていくが、
日本の金融界は依然として構造調整にもがいている。

現在進行中の金融改革は『フィンテック』と呼ばれる異種のものだ。
フィンテックの語源は
Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。
インターネット、スマホ、クラウド、ビッグデータ分析、人工知能の発達が、
金融そのものを、既存の常識が通じない全く異種の物(=業種)とすべく、
日々刻々変化している。

モバイル市場が急拡大し続ける中の「フィンテックの時代」。
電子商取引のアリババやテンセント等の新興企業が次々に現れる。
モノやサービスと結んだ自動決済や、デビット決済等など…
上げたらキリがないが、顧客データを使った新ビジネスを切り拓くための
人材・能力・資本力を潤沢に持つ企業ばかりだ。

一方、既存の常識論(特に貸出に拘る基本論理)をかざし、
依然として全国に乱立する地銀・第二地銀は断末魔の様相だ。
2000年以降の推移をみると、2005年前後は経営の体力がある銀行が、
不良債権に苦しむ銀行と合併・統合する“救済型”が一般的だった。
しかし近年は、中堅行が人口減などによる経営環境の厳しさに危機感を
募らせて結集する流れになっている。

本テーマに関して、
15年超前から「現代社会において銀行の使命は終わった」と
いい続けてきた。
止めようもないITの進捗と金融手法の激変の中で、
金融庁主導による地銀の最終着地点は、
「3大メガバンクによる全地銀の系列化」だ。

「3大メガバンクによる日本の金融機関の整備・統合」は、
「マイナンバー制度の完成」および「国民の一人一銀行口座」にもつながる。
税収に悩む日本国は、日本国民の資産をガラス張りにしたいのは明白である。
金融庁の本音は「地銀の生き残りは不可能に近い」だろう。

金融新時代とは「銀行を必要としない時代」を意味する。
後追いの参加型・追随型手法の導入は時間と費用の無駄だ。
リスクがあるから皆で、というこれまでの護送船団型方式はもう通じない。

銀行員はどう生きるか??
考えるまでもなく、答は簡単だろう。
「新たな活躍の場を求める」しかあるまい、時代が変わったのだから。

2018年06月02日

Let’s Make a Deal

「鉄・アルミ輸入制限」「エルサレムに米大使館移転」
「イラン核合意離脱」「パリ協定離脱」「TPP離脱」「大型減税」。
トランプ米大統領が行った最近の施策をランダムに上げてみたが、
全て異端のリーダー1人の人為的な決定である。

トランプ米大統領の行動には3つの法則がある。
第1に「相手に二者間の派手なディール(取引)を仕掛けて注目を集める」
第2に「過去の政権を徹底的に否定する」
第3に「迅速な結論を求める」。
こうした一連の流儀は、中国・習国家主席や北朝鮮・金委員長のような
絶対的な決定権を握るリーダーのそれである。

こうしたトランプ流手法が目立つ一方で、浮かび上がったのが
「面倒なルールや過去の経緯に縛られ、政治的な決定に時間がかかる」
(オバマ政権までの米国が加わってきた)西側の民主主義の手法である。
西側諸国が戸惑う(あきれる(!?))のも至極当然だ。

目先の雇用増となる鉄鋼輸入制限のように、
後にいかなる弊害が生じようとも、
「(米国民のためにと)闇雲に仕事をするトランプ」への共感が
米国内で出始めている。
確かに大型減税がなされた米経済は、表面的とはいえ好調に見える。
後にいかなる弊害が生じるかを考えないトランプ式に、
眉をしかめる者もいれば、賛同者もいるのが実情だ。

その実、トランプ政権への支持率は40%そこそこ。
格段、上がりも下がりもしない。
絶対的・安定的な数字ではない。
ただ米朝会談で「成功」を収め、中国から貿易面で譲歩を引き出したと
印象つけられれば、支持率上積みの可能性は否定できない。

大統領に就任以来この4月まで、
ランダムに発信してきた“情報=ツイート”は3千件を超えた。
驚くべきことは、ランダムに発信される大統領のツイートを、
直接・間接に見聞きする米国民は74%に及ぶとする世論調査もある。
正しいか、正しくないかは別にして、
大統領の発信を“楽しみ”にしている米国民は多いのだ。

こうした米大統領の下で大きなリスクが二つある。
まず、米国が自ら築いた世界秩序をないがしろにすればするほど、
その修復は困難になる。
二つ目は世界の至る所での武力衝突発生リスクである。
トランプ自身、過去の発言に縛られる傾向があるからだ。

ただこのリスクは、トランプ政権が1期で終わればリスクは軽減される。
一方で、仮に「歴史的な成果」の追い風を受け、
2020年に再選されることになれば、世界は民主主義の崩壊リスクと、
中露のような第三勢力の脅威に晒されることになる。

「自国優先」を掲げるトランプ大統領が誕生してから、
米国が営々と築き上げてきた戦後の秩序が崩れ始めている。
政治の世界に「make a deal」というやり方があっていいのか?
従来のように米国を頼り、そして信じていいのか?

世界も、そして西側や、中露のような新興勢力も、勿論日本も、
政権トップの動向で揺れ動いている。
現在の世界は、トランプ式やっつけ主義に右往左往する、
(世紀初め特有の)不安定な時期にいる。

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