日大アメフト事件の落としどころ

日本人の大半は、
国技・相撲の世界に「かわいがる」という隠語があるのは知っている。
本来の意味とは正反対の、
厳しい稽古に名を借りた制裁やいじめのことである。
日大アメフト部には同じような隠語があった。「はまる」という言い方だ。

関東学生連盟の調査により、以下が明らかになった。
「白いものを監督が黒と言えば黒」
「どんな理不尽でも実直に実行するのが掟」。
閉鎖社会では意味のない暴力が存在し、それを指す独特の隠語が生まれる。
日大アメフト部は、そうした閉鎖社会ではないかと薄々とは思われていた。
平成から新時代に移ろうとするこの時期にも、である。

現代の組織における欠かせないスキルは危機管理能力である。
それを高等教育にいち早く取り入れ、
危機管理学部を創設したのは日大だった。
「エキスパートの育成を目指す」が謳い文句だった。
余りにピッタリの、まさに笑えないギャグである。

第二次大戦で世界に怖れられた日本の特攻隊。
建前は志願制だが、実態はほど遠いものだったようだ。
生還する者は「次こそ死ね」と言われ続けたという。
「20歳そこそこの青年が絶対的権力を持つ上官の命令に背いて生きる」
のは想像を絶するものだったろう。

今回のタックル事件は「相手を潰せ」と命令されたとされる。
特攻隊の論理と同じである。
練習を干し、選手自らが反則するように追い込んだ。
繰り返すまでもないが、戦争から70年以上も経過した、
現代の大学での話である。

内田正人前監督は日大附属病院入院中に、常務理事の職を辞すと発表した。
ただ、相撲部の総監督でもある田中英寿理事長は
日本最大の学校法人・日本大学の頂点に君臨したままだ。
結局、一連の(暗黙の)権力・利権構造には何らの変化もないのだ。

自分が受験生だった頃、日本大学は、“ポン大”と呼ばれていた。
格段の受験勉強をすることなく“誰でも入れる(イージーな)大学”
との蔑称だった。
ただ芸術学部と理工系・航空学科は“別物”とされるに至り、
そうした蔑称はしなくなってはいった。
だが、
「大学の頂点にいるべき学長が理事長の下」という組織形態が露呈するに至り、
問題が大きくなった。

多分それはたまたまだとは思うが、今回のタックル事件以降、
諸般のマスコミが「日本の大学の質の低下」を特集し出した。
最近掲載されたテーマが「痩せる『知』」。
日本の大学の「論文の生産性」で、100位以内が
東大(94位)・京大(98位)・東北大(99位)・東京工大の(100位)4校に
なったと、嘆いてみせた。

何かにつけ面白おかしく論じるマスコミの論調は不変だ。
一部運動部の騒動で、日本の大学の質云々を論ずるのも早計だし、
筋違いだろう。
ただ今回のタックル事件は、日本全体の根本に抱える課題の象徴ではあった。

学生主導で、大学選手権9連覇中のラグビー・帝京大学、
箱根駅伝4連覇中の青山学院の例もある。
やればできる、任せればやるのだ、現代の日本の若者は!

日本版NCAA創設を含め、根本的な修正をするには絶好の時のように思う。


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